第12話 素人とプロの違い

前書き


 いつも読んで下さり、ありがとうございます。

 今日は過去最高の一日で1600PVを超えました。

 とても嬉しいです。

 ランキング入り、……とても嬉しいです。 昨日から物語は書籍小説で言う第一章に入りました。


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 俺はようやく座れると思い自分の席へと向かう。

 すると視界にある物が入って来た。一見ただの落書きにしか見えないそれは小説『妹との恋はありですか?』の原稿である事は見てすぐにわかった。『妹との恋はありですか?』は一か月程前に作家白雪七海が二つ目の作品として世の中に送り出した大ヒット作品である。二人の仲が良い女子高生が同じ人を好きになると言う恋愛小説である。

 そして今その原稿が隣にあるのだと思うと、どうしても視線がそっちにいってしまいそうになる。昨日あれだけ偉そうな事を言っておきながら、白雪を前にしたらすぐにこれだ。


 白雪はよく才能だけで新人賞を取り、天才だからこそ成績も優秀だと言われているが実は違う。今も何回も書いては消して、書いては消してを何度も何度も繰り返している。プロットだけでも考えて書くのは案外とても大変。それでも白雪は一切手を抜かずいつも一人頑張っている。そこまでの努力をして白雪が結果を出している事を俺は知っている。また勉強に関しても本業が忙しく学校を休んだ次の日には放課後職員室で完全下校時間まで担当教科の先生に質問をして勉強をしているのだ。何度もそんな光景を見て来た。図書委員の都合で鍵を返しに行ったり書籍の購入を打診しに行く度に一人悩みながらも頑張る白雪がそこにはいた。だから俺から見た白雪は決して天才ではない。そう白雪はあくまで秀才で努力家なのを俺だけは知っている。

 そしてそれを誰にも言わず自分だけの問題だと受け止めていつも結果を出している白雪に俺はずっと憧れていた。そしてファンとして好きだと思っていたこの想いは徐々に自分ですら気付かないうちに異性に対する気持ちへと変わっていったわけである。

 そんな白雪はとても美しかった。

 そう見る者を魅了する美しさを兼ね備えていた。

 だから――俺は……白雪に恋をした。



「あの……私の彼氏っいえ、空哲先輩はいらっしゃいますか?」


 後から知ったことだが、ボソボソと恥ずかしそうに近くにいる人間に辛うじて聞こえるか聞こえないかの声で育枝が聞いたらしい。

 俺が騒ぎに気付いて廊下を見た時にはもう人だかりが出来ており、それが原因で誰か来て何て言っていっているのかが全く聞こえなかった。


 どうやら二年一組の前に可愛い一年生が来たらしい。俺には無縁のイベントだなと思いながら、机の中にある教科書とプリントをカバンの中に詰め込んでいく。


 すると急に廊下側に集まってその可愛い一年生とやらを見ていたクラスの連中の目がいきなり俺に向けられた。てかよく見ると、男子の眉間には血管が浮き出ていたり、骨をポキポキと鳴らしイライラしている者もチラホラといた。よく見ると一人シャドーボクシングを始めている。だからお前がすると妙にリアルだから止めてくれ。次期ボクシング部長よ。


 そして今俺の隣では一人の男子生徒が白雪に話しかけていた。


「もし良かったらこの後お話ししない?」

「今原稿に忙しいんだけど、急ぎかしら?」

「できればこの後、ちょっとだけでも……」

「ごめんなさい。急ぎじゃないなら無理」


 だがその男子生徒には見向きもせずに原稿だけを見つめながら返事をする白雪。


 きっと男子生徒としてはクラスの多くの視線が廊下にいる新一年生に向いている間に仲良くなろうと考えたのだろうが、どうやら惨敗のようだ。


 そうなのだ。白雪は興味がない人間に対してはいつもなにかと理由を付けてすぐに会話を終わらせようとしてくるのだ。


 だからこそ俺も声を掛けにくいわけで。


 そうプロには締切と言う物が存在する。これが素人とプロの明確な差の一つでもあり世間から注目を浴びる代償――責任と呼ぶべきものだろう。まぁ気持ちは何となくわからなくもない。


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