第9話 甘いお誘い
「ほら、何回してもすぐに顔を赤くして大袈裟な反応するじゃん。私の事普段は異性として見ていないようでチラチラと胸とか見ている癖にこうゆうラッキースケベ展開には一向に上手くならないそらにぃ。つまり平凡もっと言えば凡人更に言うと初心(うぶ)そしてもっと言うと」
容赦なく現実を突きつけてくる育枝。
女の子の胸を触る機会なんてそうそうないのだ。そう簡単に慣れるわけがない。しかもそれがよりによって可愛い妹の胸を強引に触らされているとは言えドキドキしないわけがない。というかそのせいで多くの異性に対する興味の目が失せていたわけであって。
「ストーップ! わかったからもう言わないでくれ。俺の心が白雪ではなくお前に壊されてしまいそうだ」
「そう? 後私の事をお前と言う時は心に余裕がない事とかまだまだ色々と気付いている事あるけど言わなくていいの?」
「言わなくて大丈夫です」
満足したのか俺の手を自慢の胸から離す育枝。
「私はね、そらにぃに幸せになってもらいたいんだよ。家族として一人の女として。だから協力してあげる」
「でも俺達兄妹だし」
「血は繋がっていないんだし、別に何も不思議じゃないと思うよ? それに苗字が同じ人は世界中にいる。だから周りには私達が兄妹だって別に言わなかったらいいんじゃないかな?」
育枝の言っている事は一理ある。
だけどそれは一見俺にしか利益がない。そこに育枝の幸せはない。兄として妹の人生までを使ってまで幸せになろうとは正直思わない。
「悪いけどそれはパスだ。俺とじゃなくて育枝には本当に好きになった人と付き合って幸せになって欲しいって俺は兄として思っている。だからそれはできない」
すると、育枝がフグのように頬っぺたを膨らませる。
それを試しに指で突いてみると「きゃぁ!?」と言う可愛らしい声が聞こえてきた。
「ばかぁ、何するのよ!」
「だって可愛いから」
みるみる赤くなっていく育枝。
それを見てクスクスと笑っていると、育枝が笑みを向けてくれる。
「やっと笑ったね。よかった」
「あぁ、ありがとう」
「いいよ、まずは偽物の恋人からでも。だからとりあえず私と付き合ってよ、そらにぃ」
俺の正面に来て、その可愛らしい上目遣いで言ってくる育枝。
シャンプーの甘い香りが俺の鼻を刺激して、二人の身体が触れ合っている事から確かに伝わる感触と温もり。そして俺の手に重ねるようにして自分の手を置いてくる育枝。さっき育枝が言っていたように恋愛に関して初心な男子高校生にはこれはかなり刺激が強く、心臓の鼓動が速くなる。そんな俺に追い打ちをかけるようにして、育枝の甘い吐息が俺の身体を支配していく。
「よせ、お前は……俺と……」
「私が偽物の彼女が不満?」
ゴクリ
偽物って簡単に言うけど、俺にとってもだが育枝にとっても仮にも初めての恋人が兄と妹ってそんなベタな展開この世にあるわけないだろ。どこぞの純血種のヴァンパイア一族でもないんだぞ。
「ならこのままキスしよっか? そしたら私を女として見てくれるよね?」
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