形あるものすべて壊れる
第一話 決めた心
「じゃあ母さん、今日も行ってきまーす!」
俺は木剣を持ち家を出る。
「レット、ちょっと待ちなさ…あー行っちゃった…。全くあの子はどうしましょう。まだ十歳なのに……リコ、悪いけどレットにお弁当届けてきてくれます?」
「おにーちゃんが忘れ物するなんていつもの事じゃじゃないですか。じゃあ行ってきまーす」
ここは、七大国の一つマヤド国。
核を所持し、開発している国の一つだ。
うちの父さんは、毎日核を廃止するための仕事にこの国の城に行っている。
「はっ!とりゃ!」
俺は毎日国から一キロくらい離れた森で四年間剣の稽古をしている。
何でそんな場所でやるのかと言えば………ここが落ち着くからだ。
目を閉じるだけで自分だけの世界にいるように思える。
風の流れ、川のせせらぎ、鳥の鳴き声、芝生の
そして何故だか…………懐かしく感じる。
「…ん?」
遠くから誰か来る。
「おにーちゃんお弁当の忘れ物ですよー」
「あ!ありがとうリコ…っていうか八歳の女の子にお弁当持たせて一キロ歩かせる母さんも対外だな」
「そもそも忘れるおにーちゃんが悪いんです!」
「ていうか、兄ちゃんにまで敬語で話すの止めろよ。母さんじゃないんだから…」
リコの言葉を無視して言う。
「嫌でーす。私もいつかお母さんみたいな綺麗な大人になって、街一番のお医者さんになるの」
それはいい目標だ。
俺もいつまでこの稽古ができるんだろうか、俺も将来は父さんみたいに国から…世界から核をなくしたい。
「見たまえルド君、我が国の開発もここまで進んだ。この核は放射能を出さず小型でな、半径五キロの範囲で爆発するんだよ。この国よりほんの少し大きいくらいかな」
この国の王自ら城の核開発所にて男に核の素晴らしさを説明している。
「王よ、核は危険です!この前もエルデ国の実験のミスで国の半分ほどがやられたと聞きました!もしこの核が爆発したらこの国は消滅しますよ‼」
「うるさいうるさい、君と君の息子の言うこともわかるが勝つためには仕方のない事だ。いつまでもそんな
リコの持ってきてくれた弁当を食べながら。
「この国はいつまで核の呪縛に囚われたままでいるつもりだよ…」
「そんなこと街で言ったら前みたいに王様にやられちゃいますよ?」
「そんなことってなんだよ?一から十まで国が悪い」
この前王様の前で核の無用さとこの国の王の無能さについて叫んだら王が怒って俺の事を五発殴った。
くっそ…あのヒゲオヤジめ、覚えてろよ。
そんな事を考えていると………いきなりとても大きな爆音がした。
「何だ⁉」
父さんが言ってた。近くで爆音がしたら何か動かない物に
「リコ、兄ちゃんの服に摑まれ!絶対に離すな‼」
「う、うん!」
俺も急いで近くの木に摑まる。
「うあああっ!」
その瞬間物凄い勢いの風が吹き、俺たちの足を宙に浮かした。
風が止んできて目を開けると…………!
頼む頼む頼む頼む頼む頼む‼やめてくれ!嘘だろ……⁉
俺とリコはその光景を目にした瞬間に街に向かって走り出す。
その光景は核を開発している国なら六歳でも知っているもの。
────街の方の上空には、ちょっと小さいが誰が見てもわかるほどのキノコが生えていた。
この森を抜ければ、門が見えてくるはずだ!森を抜ければ………!
「っ⁉」
森を抜ければ…?
森を抜けたのに何もなく、にぎわう国あるべき場所は
最初意味が分からなかった……いや、本当は俺もリコもキノコ雲を見た時点で気づいていたのだろう。だが知らないふりをしていた。
「父……さん?母さん?みんな…?」
まるで国がまるごとどっかへ行っちゃったみたいに何もなかった。
今日は平日だ、ほとんどの人が街にいたに違いない。
俺は叫びたいのを我慢して自分の家があったであろう場所に行く。
「…?何かある」
自分の家があったであろう場所に何かが埋まっていた。
掘り起こすと箱があり、中にはナップザック。その中には手紙と剣と謎の小さく丸い方位磁針にそっくりな機械があった。
手紙はところどころに水滴の痕がついていた。
レットへ
この手紙は俺と母さんの二人で書いてる。
これを見つけたってことは街がまるごと吹き飛ばされた後だろう。じゃないとこの手紙は見つけられないからな。
残念ながら俺は王に核の開発を止めさせることができなかったみたいだな。
きっと、今日も弁当を忘れたおかげでリコも無事だろ?
剣はこの世界を生き抜くために俺がレットが産まれてから毎日といだ剣だ。
ちっちゃい機械は核を止めるための道具だ。これを核爆弾につけて起動させると、その国の核に関係する全てが消えるようになっている。
数に限りがあるから気をつけろよ。
何でこんな物をお前に託したのかは簡単だ、俺の後を継いでくれ。
もうお前たちみたいな思いをする人は存在しないでほしい。
悲しみに打ちのめされているのにこんなことを頼んで申し訳なく思う。
何でこの機械を自分でこの国に使わなかったのっていう理由はな、正直に言うと警備が厚くて大人の俺じゃ無理だったんだ。
この機械が完成したのはレットが十歳をむかえた年の五月十日だ。この機械をすぐに使うことが無いよう願う。
ごめん、じゃあな。
追伸 ちゃんと寝てご飯食べて協力して頑張るのよ。一緒にいてられなくてごめんね
「…何だよ父さん……。これが……完成…したのって…今日じゃねえかよ!…この…クソ王!だから言っただろ‼」
父さんが全て正しかった。
俺は父さんの遺志を継ぐ。
リコと共に。
だからせめて今日だけは…悲しみに浸らせてくれ…父さん。
「ぐっ……うっ……うっ…父さん!母さん!…うああああああああああああああ‼」
もう二度と泣かないから。俺、リコと頑張るから。見ててくれ…父さん、母さん。
…………さようなら。
ニューコンブレイク Ryuu65 @saikounasekai
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