第23話 「プリア! 直ぐに医者をっ」
**祖父視点**
新年を向かえ、ヴァルキルト王国では新女王の誕生に沸きあがっている。
前王が国の法の下処刑され、その他二十名の加担者も処刑と言う大きなニュースは他国にも届き、ヴァルキルト王国の新王女へ挨拶に訪れる国の重鎮達は多い。
聡明な王女がこれからの未来このヴァルキルト王国を支えていく事と、この国から出た英雄ビリーがいるのだから暫くの間はこの国は安泰だろうと思うと我が家に居る妖精達を見て安堵できる瞬間だ。
先日、ビリーから二つの写本を見せて貰った。
【奇跡の妖精の作り方】 そして 【世界樹の実】 には驚くべき内容ではあったが、この国の前王がどれほど腐敗していたのか解る瞬間でもあり、また新女王が前王を処刑するには充分すぎる内容だった。
これらの本を読む限り、プリアの命はそう残ってはいないのだろう……。
早く世界樹の実を見つけなくてはならないのを理解した私は、昔のツテも頼って日々世界樹の実の情報を捜していた。
アンゼも協力し世界樹の実を捜す日々だが、早々見つかる筈もない……その間にプリアの顔色は次第に悪くなっていった。
本人は気づかれないようにしているのだろうが、日に日に青白くなっていく顔色に不安は募っていく。 それでも明るく振舞うプリアは体に鞭を打っている様にも見えた。
心配したビリーが薬を作っては毎日飲ませているようだが、プリアはそれでも日々の生活を変えようとはしなかった。
無理をしないようにと口酸っぱく言っても聞きはしない。
まるで蝋燭の炎が消えかかりそうな……そんな不安を屋敷の妖精たちも感じ取っているようで、皆プリアの事を心配したが――。
「動けるうちは動かないとだし、働けるうちは働かないと!」
そう言ってプリアは笑った。
気丈に振舞う姿のようにも見えたが、本人の意思を今は無視する訳にもいかず、ワシとアンゼは顔を見合わせては溜息を吐いた。
そんなある日――。
外の納屋に行ったプリアが中々帰ってこなかった。 ワシは不安に思い様子を見に行くとプリアが雪の積もる地面に座り込んで咳き込んでいるではないか。
「プリア!」
「!」
口を押さえ咳き込むプリアに駆け寄るとワシは目を見開いた。
――地面に落ちる赤い血。
咄嗟に口元を押えているプリアの手を掴むと、小さな手のひらには真っ赤な血が……。
「プリア! 直ぐに医者をっ」
「やめて!」
大きな声で叫ばれ一瞬驚いたが、プリアは涙目で震えながらワシの腕を掴んでいた。
「ビリちゃんが心配しちゃうから呼ばないで!」
「何を言う! こんな状態になってしまって……この事実をビリーが知ればどれだけ心配するか解っているのか!?」
「だから内緒にして!!」
「プリア!」
叱り付けるワシの声すらプリアには届いていないようで何度も首を横に振ってビリーには内緒にして欲しいと頼み込むプリア……ワシは頭を抱えて溜息を吐いた。
その間も何度も咳き込むプリアの背中を撫でながら、ワシはこの事をどうビリーに報告すべきか悩んでいた。 ビリーが知ればショックの余り動けなくなる可能性も大きいからだ。
しかしプリアはビリーには内緒にしていて欲しいと何度も頼み込んでくる……その気持ちを無下には出来ない自分が居るのだ。
「――お爺ちゃん」
「……解った、だが一つだけ約束してくれ。 今後身体を優先して休むこと……此れが最低条件だ」
「……ありがとう」
ワシの言葉にプリアは何処か諦めた様子ではあったが、それでも身体を優先して休むようにすれば少しは寿命が伸びてくれるかもしれない。 確証は無いが、これ以上無理に働けばプリアの寿命は縮んでしまう気がした。
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安定の予約投稿。
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