第二章 妖精狩り

第15話 「イモさん、一体何が起きたのです?」

 久しぶりにクリスマスまでの間はゆっくりした時間を過ごそうと思い、依頼の量も減らしつつもプリアさんへのプレゼントを考えていた。

 確かに一生遊んで暮せるだけの金は貰っているが、プリアさんへのプレゼントは私が稼いだお金で買いたかったからだ。


 それだけではない。 家に居る四人のクリスマスプレゼントも考えている。


 イモさんには動きやすい胴着のような装備を送りたいし、アンゼさんには資料を纏めやすくする実用性の高い物をと考えている。 キッドさんには使い古した計算機ではなく、新品の計算機をプレゼントする予定だ。 アニスさんへのプレゼントは悩むものの、今も尚顔に痛々しく残る傷を気にしている為、綺麗に治す為の最高級品の薬を渡そうと思っている。

 そしてプリアさんは……。



「サンタさんへのお願い? 皆が幸せに暮らせますようにって言うお願いだけだよ!」



 ……と、物では無い物を欲しがっていらっしゃる様で、私としても溜息が毀れてしまう。

 しかしそこはアンゼさんと祖父の力を借り、プリアさんが本当に欲しいものをリサーチして貰った。

 本人が知ればいい気はしないかも知れないが、やはり欲しいと思うプレゼントを渡したいと思ってしまうのは――私がプリアさんに特別な想いを持っているからだろうが?


 プリアさんが妖精インフルエンザに掛かった時、初めて自分の中の 【恋心】 と言う物に気づいてしまった。 


――それは私にとって初恋だった。


 十八年生きてきて初めての初恋、正直プリアさんを見ているだけでドキドキするのは仕方の無い事だろうが、そこは敢えて表に出さない様に心がけている。


 ともあれ、祖父とアンゼさんの協力の下プリアさんの欲しいものを調べて貰った結果、両者共に口にしたのは 「鳳亭のキノコの串焼き」 と言われたのだから、私の心の内も察して欲しい……。

 いや、無類のキノコ好きなプリアさんらしい回答だが、もっと形に残るものをプレゼントしたかったのだ。

 髪飾り……は、大量にプレゼントしてしまった。 それなら指輪? いやいやそれは私としても恥ずかしい……それではネックレス? そうやって悶々と過ごす日々をプリアさんに察知されないように過ごしていると、ある日一緒に買出しに言っていた時、プリアさんは一つのアクセサリーに目を留めたのを見過ごさなかった。


 淡い紫翡翠のネックレス……プリアさんは 「綺麗だね」 とその場から暫く離れようとはしなかった。

 クリスマスシーズンと言う事もあり、お値段は高めだったが、買えない値段では無い――がしかし、それは既に売却済みと言う札が貼ってあったのだ。

 それならば自分で用意すればいいと考えた私は、その後二人で家に帰ると自作できる紫翡翠を調べ上げた。

 今ある鉱石の中にたった一つだけ紫翡翠があったが、これを綺麗に磨き上げればプリアさんが欲しいと言ったネックレスよりもっと輝きを増したネックレスが作れるだろう。



「ふむ、翡翠としても最高品質……色合いもあの色と近い」



 しかしただの紫翡翠のネックレスを手渡すのは私の中ではいい気がせず、日々頑張っているプリアさんの助ける魔法を込めたネックレスにしようと決めた。

 クリスマスまでまだ日数はあるし、丁寧に作ったとしても三日も掛からないだろう。

 それらのアイテムを貴重品用の箱に詰め、プリアさんが居ない時にコツコツ作ろうと決めて玄関を出ると、祖父は玄関を大きな音を立てて開けて駆け込んで来た。



「お爺様、もう少し穏やかに家に帰って――」



 そう注意をしようとしたその時、泣きじゃくるアニスさんの声と共に血だらけのイモさんが何とか家の中に入ってきた。



「ビリー傷薬だ!」

「直ぐにお持ちします」



 お爺様に支えられる様にしてやっと立っているようなイモさんに何が起きたと言うのか……兎に角急ぎ傷薬を用意してイモさんの部屋に駆け込むと、家に居る妖精皆が集まりショックを受けている様だ。

 傷口を見ると急所は全て外している……だが如何見ても矢で射抜かれたのではなく、クロスボウで射抜かれたような場所が複数見つかった。


 出血の量は多いがイモさんは気丈に振る舞い、泣きじゃくるアニスさんに 「俺は大丈夫だ」 と何度も口にしている。


 幸い品質が良い傷薬が残っていて助かった……血は直ぐに止まったがイモさんは暫く安静にせねばならないだろう。 

出血の量も酷い為、頭痛がしているようだ。 

その様子を見たプリアさんは工房に駆け込むと、頭痛を和らげる薬湯を作って持ってきてくれた。

 少しずつ口にして呼吸を整えようとするイモさん……一体彼に何があったと言うのだろうか?

 落ち着きを取り戻すのに一時間以上は掛かったが、アニスさんのショックは強いもので祖父が抱き上げあやして下さっている。



「イモさん、一体何が起きたのです?」



 そう問い掛けると、イモさんは大きく深呼吸して此れまでの経緯を語ってくれた。







=====

今から二章に変わっていきます。

そして、安定の予約投稿です(;'∀')


ここから、物語が大きく動いたりも繰り返しつつ進んでいきます。

テンポは速いと思うので、是非お楽しみに!


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