第4話 「お帰りなさいませ、おじい様」
その数日後――屋敷の玄関は大きな音を立てて開いた。
工房は玄関の隣にある大きな部屋を使っている。 余りにも大きな音だった為、プリアさんは作ったばかりの薬品を落としそうに為る程だった。
「ビリ――!!」
聴こえてきた声に私は作業していた手を止めて頭を抱えた……招かれざる……いや、ある意味待っていた客と言うべきか。 私は作業を止めて工房から出ると、玄関の前で泥だらけの筋肉質な老人を見つめた。
「お帰りなさいませ、お爺様」
そう、声の主は私のたった一人の肉親……祖父であり妖精研究家 【アルベルト・エレゼン】 だった。
私に錬金術を教え、魔法を教え、体術や剣技等を叩き込んだ鬼の祖父だ。
だがそれも今ではあり難いと思っている。
そのお陰でプリアさんとの生活が出来ているのだから昔の苦労は良い思い出として心に収めよう。
「帰ったと言う噂を聞いてね! 無事で何よりだ!」
「ご心配ありがとう御座います」
「時に面白い噂を聞いてね。 真珠色の妖精をお前が持っていると」
その言葉に眉を寄せると、私は腰に掛けていた剣を取り出し祖父に向けた。
「持っている等と言う言い方は止めて頂きたいです。 彼女は私の大切な方です」
「おお……それは悪い言い方をしたな。 済まなかった」
「ビリちゃんどうしたの?」
私達のやり取りは殆ど聞いていなかったのだろう。 プリアさんはエプロン姿で工房から出ると、私が剣を抜いている姿に驚き目を見開いたようだ。
「お……お客様に剣を向けちゃダメだよ!!」
「お客ではありません。 私の祖父です」
そう言って剣を仕舞うと、私に駆け寄ってきたプリアさんを見た祖父は目を見開き興味津々の様だ。
「これが噂に聞く真珠色の妖精……」
「お爺様、プリアさんには余り近寄らないで下さい」
「何を言う! 真珠色の妖精が如何に貴重かお前は知らないのだ!!」
嗚呼、妖精の事になると手が付けられない祖父の事だ……プリアさんを守らねばともう一度剣に手を伸ばしたのだが――。
「お爺ちゃんはビリちゃんのお爺ちゃんなの? 初めまして! プリアです!!」
その言葉にプリアさんに手を伸ばしかけた祖父がピタリと止まった。
まるで時魔法でも受けたかの様にピタリと動かなくなったのだ。
「ビリちゃんお茶を用意しないと!」
「ああ、そうですね」
「客間に案内します!」
そう言って祖父に頭を下げるプリアさんに、祖父はやっと時が動き出したようだが……私をジッと見つめた後ニヤリと微笑んでいる。
「何です?」
「いや? お前も人の子だったのだなと思って」
「当たり前でしょう? 私は人間ですよ」
その言葉を最後に私は台所でお茶を入れている間、プリアさんには祖父を客間に案内して貰った。 そしてお茶とお茶菓子を持って客間に入ると――プリアさんを膝の上に乗せている祖父を見てしまった。
途端湧き上がる感情を抑えきれず魔法を唱えてしまい、私の頭上には炎の塊が出来てしまったけれど、そこはプリアさん……流石と言うべきか否か。
「ビリちゃん、人肉はこんがり焼いても美味しくないと思うよ?」
「……そうですね」
――その言葉で冷静になれた。
======
二話投稿となっておりますが、こちらも予約投稿となっております。
ビリーの家族であるアルベルトさんが出てきました(笑)
お爺ちゃん枠って良いですよね、個人的に大好物です(キリ!)
読者様の心に何かしら残る小説だと良いなと思いつつ更新しております。
これからも応援よろしくお願いします/)`;ω;´)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます