オタサーの姫が囲わせてくれない

九條恭

第1話 「今日も可愛い小雪ちゃん!」「えぇ…」

私の名前は小波小雪。

単刀直入に言うと、私は美少女。相当の美少女。天が起こした奇跡を擬人化したのが私。


「あ〜小雪、喉乾いちゃったなぁ…」

私が一言こう言えば、周りの囲い達は「ポカリ、炭酸、コーヒー、おしるこ」等の様々な飲み物をプレゼントしてくれる。正直そんないらない。

そして私はアニメがとっても大好き。日本人だけどジャパニーズカルチャーの虜なの。

だから所謂『オタクサークル』なるものに入って毎日私と同じオタクくんたちとキャッキャキャッキャしてる。彼らは私に優しくしてくれるから大好き。

「小雪、このアイテム持ってないよぅ…」とソシャゲ中に呟けば、「た、たまたま買っただけだから」とiTunesカードをぶっきらぼうに渡してくれる。

すごく優しいでしょ。

だけど最近、そんな私を悩ます出来事が起きて困っている。

それは…。

「おはよう小雪さん、今日も可愛いね。シャンプー変えた?前の香りも好きだったけど今回のも良いと思うよ。あ、ボディミルクもしてるんだね。私も同じの使いたいなぁ。ね、デー…放課後買い物しない?」


あんたのことだよ、豊島小雨。

豊島小雨、彼女は女子バスケ部長兼運動部長という超絶ハイスペック陽キャ女子だ。

いくら私が美少女だからとは言え、アンタ、絶対オタク趣味に理解ないでしょ?

それなのに、彼女は毎日毎日朝昼夕方ずっと私のところにやってくる。

「豊島さん、ごめんね。放課後は用事があって難しいかな。」

「じゃあ大丈夫な日あれば教えて?部活の休み調整するから。」

調整すんな。やんわりと断っているにも関わらず、彼女はグイグイやってくる。

放課後はサークル仲間とアニメイトに行く予定だからなるべく邪魔されたくない。し、陽キャにそんなこと言ったら引かれるに決まっている。


「ご、ごめんね?そろそろサークル行かないとだから、またね?」

ピクピクと引きつった笑顔を彼女に向ける。

大丈夫?私の可愛い表情筋、仕事してる?

すると彼女は嬉しそうな声色で笑った。

「うん、また明日ね!」


ぱたぱたと足音を立てて体育館へと行った。

一体何がそんなに嬉しいのか分からないけど、悔しくも、彼女の笑った顔は綺麗だった。

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オタサーの姫が囲わせてくれない 九條恭 @sodapop0059

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