31.アキラ、フライアウェイ。
なんで空に舞い上がっているのだろう。そう考えた時には、身体は浮上してさらなる高みへと目指す。
「と、飛んでる・・・。」
すぐにおじいさんの方を見ると、彼はにっこりと笑みを浮かべたまま佇む。
アイ・キャン・フライ(白目)
こ、こういう時は、慌てててもショウガナス精神で、なんとか空中でバランスを取ろうとする。
「宿主、すごく慌ててますけど大丈夫ですか? 」
と、精霊さんは心配そうに声をかける。
「だだだだ、大ジョブじゃなさす。ひひひひ、飛行機みたいでもう限界みたいです。」
「駄目みたいですね。」
これには、精霊さんもお手上げのようだ。僕自身、最初は遠心力がかかって大丈夫だったんですけど、段々と重力かかって・・・。
嗚呼、蘇る小五の夏。
∴ ∴ ∴ ∴ ∴
あれは、小五の夏休みのことである。
その時、僕はおばあちゃんの家に行くため飛行機に乗っていた。空の旅は前半、快適で上空から見える景色に僕は少しはしゃいでいた。
たが、これから訪れる恐怖にこの時の僕は微塵も知らないでいた。
そうして、飛行機は目的地の空港へと着陸態勢を取ろうとしていた。
機内にシートベルトを締めるよう機内アナウンスが流れる。
「皆様、ただいまシートベルト着用のサインが点灯いたしました。シートベルトをしっかりとお締めください。これからしばらくのあいだ、揺れることが予想されます。
機長の指示により、客室乗務員も着席いたします。お客様ご自身でシートベルトをお確かめください。」
僕は飛行機には何回かは乗ったことがあったので、言われた通りシートベルトをしっかりと締める。その時の窓の景色は、上には青空、下には一面真っ白な雲で、とても綺麗だったことを今でも覚えている。
そして、外の景色が段々と白く染まっていくのであった。
それは突然であった。突如、僕の身体を包んでいた重力がなくなって、落下のような浮遊感を覚える。そして、機体は大きく揺れる。
小五の僕にとって、それは今までのフライトでは感じたことのなかった恐怖であった。瞬間的に何かにしがみ付かなければと、本能的に両方の肘かけを両手でぎゅっと握る締める。
手に汗握るとはこのことで、めちゃくめちゃ握ったことにより、両手は次第に湿りだす。それでも、何かに掴まっていなくては怖すぎて、泣きそうになるくらい怖かった。
通路を挟んだ隣の席の少女が、
「わーーー、ジェットコースターみたいで楽しい。」
と、隣にいた母親らしき人物に話しかけていた。
この時の僕は、その少女の事を信じられないというの目で見つめていたと思う。そして、ふわっと浮遊感が、こんにちはする。
すぐに僕は正面を向いて、そのフワット感に恐怖しながら、座席の肘かけにしがみ付く。
しかし、一席挟んだ隣のおじさんは慣れた様子で席に座っている。肘かけにしがみ付きもせず、なんなら少しリラックスしているじゃないかというほどである。
チラりと外の窓を見るが、一面の真っ白。今、自分はどこの辺りを飛んでいるか、まったくわからず、さらにパニックに似た恐怖が込み上げてくる。
その時、機内アナウンスが流れる。
「ただいま気流の悪いところを通過中です。揺れましても飛行には影響ございません。シートベルトをしっかりお締め下さい」
その意味はわかる。だが、僕の心臓の脈拍は緊張状態を維持する。怖くて声も出ないが、自然と窓の外の下をすがるような思いで見つめ続ける。
真っ白な世界の出口を血眼になって待つ。
そうしている内に、厚い雲の中だった景色に薄い雲が混じり始めた頃、白以外の景色が見え始める。
それを僕は少しずつ大地の一部だと理解し始めた所で、恐怖感が少しなくなり、小五の僕は平静を若干取り戻したのであった。
∴ ∴ ∴ ∴ ∴
そして、現在なんてないただの強風で少し揺れたフライトの思い出が、僕の脳内をフラッシュバックして鮮明に思い出させる。
それにより、咄嗟に両手を下に向けて、少しでもバランスを取ろうとする。次の瞬間、手から電流がジェットのように噴射される。
当然、身体はさらなる高みを目指し、上昇するのであった。
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