32.アキラ、謙虚である。

 無意識に両手から放った電流は、地面にまで届く。それにより、僕の身体は上昇していく。原理がよくわからないが、先ほどの飛行機の浮遊感さはない。


そうして、ツリーハウスが目前までに近づくと、フゥーーーっと優しい風がアシストしてくれるかのように吹き、玄関前の床に着陸する。


「宿主、フライトお疲れ様です。」


「ふぅ・・・。ありがとう、やっぱり、ほどよい重力ってのは・・・最高やな。」


と、僕は久方ぶりに感じた重力の安定感に懐かしみとありがたさを実感しながら、死にかけたカエルのような眼で、おじいさんを見る。


 その目におじいさんも申し訳なさそうになりながらも、僕と同じように浮遊しはじめるが、僕よりかなり早いスピードで玄関前に着地。


「お兄さん、ほんにおっかなことしてしまったべ。許してけれ、許してけれ。」


と、おじいさんは頭を下げ、許しを請う。


僕は少し考え、


「ヒヤっとしましたけど、なんか良い経験になりましたんで、大丈夫ですよ。」


そう言って、僕はおじいさんにニッコリ友好スマイルをする。これには、おじいさんもつられて、にっこりと笑い、


「おう、そっか。お兄さんがいいんでなら、よかったよかった。いやぁ~~、お兄さんを軽く風の精霊で上げようかと思ったんだばって、段々顔色が悪くなってきて、終いには雷の精霊で、自分で上がろうとしだすだ。」


あ、僕そんなに顔色悪くなってたんだ・・・。


おじいさんは再度申し訳なかったと頭を下げ、


「おらさ、余計なことしたっぺな。お兄さんも自分で上がる手段持ってたんだな、いやぁ、ほんにほんに悪い事しただ。」


そのおじいさんの話を聞きながら、僕は無意識のうちに手から電流出して、空を飛んでいたかと実感する。


「宿主、上がる手段持っていませんでしたよね。」


「はい、そうですね。おじいさん、いや、僕、自分で上る手段なんか持ってませんでしたので、おじいさんの助けなしでは上がれませんでしたよ。」


と、正直に白状する。


すると、おじいさんは、


「またまた、ほんにお兄さんは謙虚で優しか人だ。でもあの精霊の力じゃ、確かにお兄さんさの身体は持ち上げれんだな、そこでわしが特訓してやるで、安心せい。まぁ、そげいことは後に飯作るっぺよ。」


と、言っておじいさんは、ツリーハウスの家の戸を開けて入っていく。


ツリーハウスの内装は、日本の田舎を思い浮かばすような質素な作りで、僕はそれに懐かしみを感じる。


石の囲炉裏があって、それにおじいさんは何かを唱える。


すると、小さな火がちょろちょろっと燃え始めるのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る