24.アキラ、諭される。
流れる川の水は、清く止め処なく流れ往く。
その流れに一つの線を描きいれる。
「チャポンッ。」
水のはねる音が辺りに響き渡り、その音が静まれば、意識は竿の微かな揺れに僕の意識は集中し始め、糸の僅かな揺れから水中の様子を想像する。
流れていく水の中で、感覚を研ぎ澄ませながら、その時をただただ待つ。
「ツンツン・・・ツンツン・・・」
何かが餌を突っつく感触が来る。焦るな・・・焦るな・・・、そう自分を抑えるかのように諭す。
「グッ!! 」
竿が勢いよくしなる。この時を待っていた。
「精霊さん、お願いします。」
そう言うと同時に、釣り竿に電流が
「はぁ? (憤怒)」
もう容赦はしないぞ、徹底的に獲り尽くしてやる・・・。
そう意気込み、僕は川魚の群れを見つける。弓を構えて、矢に電力を注入して解き放った。これで大漁待ったなし、そう確信する。
唐突に、背中を刺すような気配を感じると同時に凄まじい風が横を掠める。
あまりにもすごい勢い風圧に、僕の身体は宙に浮いてしまう。
「ヒュッ」
浮いたと思った、刹那。川へと向かって放ったはずの矢が眼前を横切る。
「ダダダダッ、ダーーーン」
激しく何かが破裂する音が発せられたと同時に、僕は地面に叩きつけられる。
何が起きているのかわからない。焦点が定まらぬ視界で何かが動いていく。
この状況に脳が追いつかず、反射的にそれに向かって弓矢を構え、撃とうとする。だが、その直後、両手を叩かれた様な激痛が走り、弓矢を手放してしまう。
「イタッ。」
痛みを感じた時には、僕の弓は老人が握っている。
「え? 」
目の前の光景に、出た言葉は疑問符。
「お兄さんや、お兄さんや。急に叩いて、すまんかったのぅ・・・。」
その老人は、ペコリと頭を下げて僕に弓を返す。そして、その場にちょこんと正座する。
「・・・え、なにこれ。」
状況に脳が追いつかない。
え、今の何? え、さっきの気配は何処行った? 何だ、こいつ!
遅れて、やっと出てきた正常な判断対は一気に噴出し、感情の交通渋滞が起きてしまう。そうして混乱している内に、
見るからにボロボロの服を身なりの老人は、
「お兄さん、無闇に精霊の力を使って、魚を取るのはやめにしてくれんかの・・・。」
そう僕に愛想笑いをしながら呟く。
それに僕は思わず、
「はい、以後気をつけます。」
素直に非を認める。素早い返答に僕もビックリ。
老人は笑い始め、
「ハハハッ・・・お兄さん潔いが、訳は述べれらるのか? 」
「わかりません! 」
うん、なんだろうね、わっかんない。
「ハハハッ、あい、わかった。それでは理由を話そうか・・・。」
老人は、朗らかな様子で話し始める。
「のう・・・お兄さんや。わしはお兄さんが食べる魚などにとやかく言っているつもりはない。じゃが、無闇にその力を川に流せば、小魚まで死んでしまう・・・。
人の子が死ぬと思えば、酷いことじゃろうが。酷いことはやめなされ、やめなされ・・・! 」
確かに、言われてみれば確かにそうだ。自分は小魚のことまで考えず、力を行使してしまった。それは反省しよう。
仕方ない、普通に釣るか。
その気持ちを切り替えて、再び竿を持つが、唐突に老人が
「じゃがの・・・、お兄さんは釣りがど素人じゃから、いつまで経っても釣れそうにない。」
言ってはならないどえげつない正論を、ドストレートに言い放ってしまう。
僕は、釣り心が折れそうになるのであった。
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