第四章:山人

23.アキラ、竿を作る。

 刃鹿の肉を頬張った後、僕はテラのための食事を作る。


慣れない手つきで、なんとかおかゆっぽい料理を作る。


テラもちょうどおかゆが出来上がる頃に、眠りから目覚める。


「アキラしゃん、おはゆう。にゃんだか、いいにゅおいがすませね。」


昨日の元気のなかった彼女とはうって変わって、少し元気を取り戻した様子である。


元気を取り戻しつつあるテラに、特製おかゆもどきを食べてもらう。


「へい、お待ち。おかゆだよ。」


「お、おかにゅ…。い、いただけましゅ。」


フゥーフゥーと息を吹き掛ける姿を愛おしく思いながら、、彼女のパクリと一口食べる。


「・・・びみゅうでつ。」


ん? 今、なんて美味のような感じに聞こえたような、あれ違うか・・・。


もう一度、テラが食べるからの


「・・・びみゅうでつ。」


表情と手の動きからして、美味しい感じではない。多分、味は微妙なんだと察する。


「なんかごめんね。」


そうすまなそうな顔でテラを見ていると、彼女は


「じゃもじゃも、これさたぶれんこよはなかよ、なかよ。」


そう言って、おかゆを完食してくれる。


ああ、次はもっと美味しい料理を作れるようになろう・・・。そう思うのであった。


 それから、食器を片付けいると、イリスがこちらに歩み寄ってきて、


「アキラ、いなからテラのきずめるから、ちょこっとへとさいでてけれ。」


うーん、なるほど。つまり、傷口を診察するから男の子の僕は外で待機していてというわけか。


多分、昨日ほど切迫した状況でもないし、着替えや清拭とかもついでに行うんだろうなと考え、外へ出る。



∴ ∴ ∴ ∴ ∴



 さて、せっかく外へ出たのだし、今日の食材でも取りに行こうか。


しかし、左脚はまだ完全に回復したとは言えず、走ることに難を示す。


今日はまだ猟は出来そうにないな。うーーーん、それじゃあ、釣りでもするか。


釣りなら、動かなくていいし脚への負担も少ないはずだ。省エネ省エネ、これなら、精霊さんの力も使わずに、食べ物にありつける。


まず、手始めに細長いしっかりとした枝を切り出す。次に、木の幹に巻き付いている蔓の繊維を糸代わりにするため採っていく。


最後に、今朝食べた刃鹿のあばら骨の一部を針に使い、釣り竿を完成させる。


その即席釣り竿を使って、さっそく川魚を釣っていこう。餌は足元の地面を掘って、出てきたミミズっぽい何かで。


川の澄んだ水が、綺麗な音を立てて流れていく。嗚呼、癒されるなぁ・・・と思いながら、糸を垂らし川魚がかかるのを待つ。


釣り竿から、伝わる感覚を研ぎ澄ませて、その時を待ってみる。


しばらく何の当たりもなく、ただただ時間だけが過ぎていく。


チョンチョン。何かが突く感覚が竿から伝わってくる。


せっかちな僕は、勢いよく餌を上げてみると、あーーー、食べられてるよ。まぁ、見事にミミズの胴体が、ごっそり食べられている。


その光景に思わず、


「はぁ? (殺意)・・・、作戦変更。精霊さんちょっとお力、お貸してください。」


「えぇ・・・。宿主、省エネでいくんじゃなかったんですか・・・、えぇ・・・、まぁ、いいですけど。」


「へへへへへへへ・・・、次は容赦しないからなぁ・・・。」


この時を以って、乱獲作戦が開始されるのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る