ディーンはエッチな本を見つけた 後編
「触手族と!? それは…それは…その可能性もあるのか?」
ディーンは驚きで顎が取れそうなくらい大きく口を開いた。
「だって僕らに何も言ってくれないんだよ。きっとそうに決まってる」
「けど、触手ってこれだろ。付き合ったとしてどんな風に…するんだ?」
「僕に聞かないでよ。ハニーなら知ってるんじゃない?」
パトリックとディーンはハニーに顔を向けた。
「知ってるのか?」
「うん、知ってるよ」
ハニーは人差し指を口に当て、目を閉じながら語り始めた。
「確か三ヶ月くらい前だったかな? 町の女の子と…あ、二人とも、このことウィーダムに言わないでよね?」
「言わない言わない」
「心配だなぁ。二人ともまだシたことないんでしょ? 驚いちゃって誰かに言ったりしない?」
ハニーにからかわれたディーンは、ぼっと顔を赤くして噛みつくように言った。
「言わないって! 別に俺は初心じゃねぇし」
「僕も言わないよ…でも、聞いちゃうと余計なこと考えちゃうかもしれないしやっぱり言わないで」
「余計なことって?」
ハニーはニヤニヤとした笑みを浮かべてパトリックの顔を覗き込んだ。
「なんでもない!」
パトリックは立ち上がると出口のドアに向かって歩き出した。このままここにいてもおかしな知識ばかり覚えてしまいそうだから、中庭に行ってウィーダム達と合流するつもりだった。
「どこ行くの?」
「お父さん達のとこ。続きは二人だけで話してて」
「え~もっと色々喋ろうよ~。さっきのはウソだから心配しなくて大丈夫だし」
ハニーはあっけらかんとして言った。
「え、町の女の子とってウソだったのか?」
「うん。さすがにボクでもそんな経験あるわけないじゃん」
パトリックはホッとして息を吐いた。
「なんだ。ウソだったんだ」
「うん。でも、パトリックの言った通りライアンなら経験あるかもしれないよ。王都には色んな人がいるだろうし。もしそうだったらどうする?」
「どうもこうもできないだろ。好みは人それぞれだし、俺達がとやかく言ったって仕方ねぇよ」
「そうだね」
パトリックが頷いた。
「僕らが口を出すべきことじゃない…だけど本当に触手族と付き合ってるのかどうか気になるな」
「聞いてみる?」
「聞いていいと思う?」
「いいんじゃない」
「適当に言うなぁ」
ディーンが腕を組んで言った。
「じゃあ、ライアンが帰ってきたらハニーが彼女について聞くってことで」
「えっボクは嫌だよ。一緒に王都に行くのにライアンと嫌な雰囲気になったら嫌だし。ディーンが聞いてよ」
「俺だって嫌だよ。どんな風に切り出せばいいんだ」
「なら、パトリック?」
パトリックは頭をぶんぶんと横に振った。
「僕だって嫌だよ! 家に帰ってきたライアンにいきなり、『もしかして触手と付き合ってる?』なんて聞けない」
「でも、誰かが聞かないとだよ」
「誰が聞くにしても、どう聞くかが問題だよな…」
三人はしばらくああでもないこうでもないと言い合いながら頭を悩ませた。そして、一つの結論に達した。直接聞くのが難しいなら、間接的に聞けばいいのだ。
三人はそれぞれライアンに向けた手紙を書いて、それを帰ってきた彼の荷物に紛れ込ませることにした。
「よし、書けた。これなら直接聞かなくてもいいから気まずくならないな!」
「うん、ライアンがどんな返事するのか楽しみだなぁ!」
「ちょっと今から緊張してきたな…」
後日、走る馬車の中でライアンが素っ頓狂な声を上げることになったのは言うまでもない。
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