第33話 シフィ姉ちゃんの深層思考の考察⑰
「はい、よろしくおねがいします」
「それでは、まずは最後の提案の説明をする前の前置きから始めます」
「私はこれまで、コスタドル様に2つの提案まで、説明を終えました」
「まず最初に1つ目の提案は、私達の家に力を合わせて、働きかける提案」
「2つ目の提案は、私達幻獣の守護者が仲介者として、お互いの仲を取り持つ提案」
「今まで説明した2つの提案だけでも、おそらく上手く機能すれば、十分にコスタドル様の要望に叶うようになるのではと、私の心の奥底ではそのように分析しています」
「しかしながら、その多くの時間を掛けて説明した2つの提案も、今から説明する3つ目の提案の為に考え出した付属品の役割に過ぎないのです」
貴族令嬢の嗜みの挨拶で、緑色のスケスケ魔術師衣装を重ね着したスカートの裾の部分を、両手で軽くつまんで浅いお辞儀をしてから、話を切り出したラスレちゃん。
ラスレちゃんの恋の勝負を掛けた運命の演説が再び再開させたみたい。
本当に凄い執念を感じちゃう。
これで失敗したら、ラスレちゃんどうするんだろう?
まあ、多分、失敗することなんて全く考えてなさそうだけど....。
「なにっ??どういう意味だ??」
コスタおじちゃんの疑問の声が上がった。
脳筋筋肉んのコスタおじちゃんには、まだラスレちゃんが何を欲しているのか、わからないみたい。
ラスレちゃんは、その声が上がるのを待っていたかのように、更に続けて話を切り出していく。
「はい、その意味合いを分かりやすくお話しますと、この3つ目の提案こそが、3つの提案の核であり中心に位置していると言えるからです」
「3つ目の提案が2つの提案の土台のような位置づけになることで、3つの歯車が上手く噛み合い機能します」
「この3つの提案を全て聞き届けて頂けましたら、全ての歯車の本領が発揮されまして、更なる進化を遂げることができるでしょう」
グランさんの後ろ姿をたまに見つめ、グランさん成分を補給して、幸福絶頂の幸せ波動を体内から徐々に発散し始めたラスレちゃんは、熱く語り説明していた。
その幸せ波動からは、次々に新たな
純粋な乙女の私は、その光景をうっとりと見つつ、物思いに
まぁ、ダンジョン内でこういう行為をする人がいるのは、私は聞いたことがない。
もしそんな行為をする人がいたら、当然怒られる行為だけど、コスタおじちゃんがどんな風になるのか、少しずつ興味が出てきたぞ。
でも、私には、コスタおじちゃんがどう反応するのか、全く読めないや。
「ほー!!何処ぞの軍師が考えそうな、なかなか凝った計画のようではないか」
ラスレちゃんの説明に関心してるコスタおじちゃんは、すっかり話の主導権がラスレちゃんにあることに、全く気づく様子がみられない。
「ありがとうございます」
「少ない限られた時間内でこの立案作業をするのは、色々予想し得ない問題点を解決しながらの、突貫の立案作業でしたので、時間が足りなく大変だったのですが、私自身も会心の出来栄えの計画なのではと、少し自負したい気持ちもあります」
「その私が自信を持って推し進めたい計画ですが、その3つの歯車が最大限発揮されれば、ダルタロイア男爵家はきっと
更に興味をもつような言い回しで、コスタおじちゃんに煙にまくラスレちゃんは、どんどん強気で押していく。
「それ程の案なら、尚の事、しっかり耳を澄ませて聞かねばならんな」
すっかりラスレちゃんの術中に嵌ったコスタおじちゃんは、関心したような声音で興味をそそる発言をして、うきうきしたような表情を浮かべてた。
「ええ、そうです」
「しっかりお聞きください」
「この全ての提案がコスタドル様に受け入れてもらえれば、全員が幸せになれる」
「そんな、
ラスレちゃんの説明する話の中で私の気になる言葉が出てきたよ。
あーあ、この言葉で確信したよ。
『新たな道』って私に新たな道を作れってことでしょ。多分....。
ラスレちゃんは、私をとことん巻き込む気、満載、満点、
これは、ダルタロイア男爵領の日帰り旅行計画も真剣に考えなきゃいけないね。
「全員が幸せになるだと??本当かね??」
コスタおじちゃんは、驚き、豆の木、山椒の木のような「オラ、ビックラしたぞ」って感じの
コスタおじちゃんは、絶対に神官達がよくやる霊感商法に、直ぐに引っかかりそう。
あれに引っかかると、全てのお金を差し出すまで、神官さん達は止まらないからね。
特に私の住んでる街にある神殿の神官さんは、超悪徳神官さんだから、気をつけよう。
それに、全員が幸せになるなんて、絶対に眉唾物だし、勿論ラスレちゃんの言うことも眉唾物だし....。
それにね、今回の発言は、明確に違うよ。絶対に間違いだよ。だって私は、全然幸せにならないもん。
ラスレちゃんはきっと私に、馬車馬のごとく目の前に人参をぶら下げて、死ぬまでタダ働きさせる気満点だよ。
仲よし子よしだから、断りにくいし....この状況を一帯全体どう解決したらいいのかな?
誰か、こんな私に救いの手を、差し出してほしいっCHU♡!!
──あれっラスレちゃんは、髪をかきあげる仕草をしてから、軽く息を吐いたけど....。
どうもこれから、遂にラスレちゃんにとっては本当の戦い──恋の大特攻作戦の幕が上がりそう。
頑張るよう応援するから、あんまり私を巻き込まないようにしてほしいな。
ラスレちゃん、お願いしまっCHU♡!!
私の声を当然のごとく無視したラスレちゃんは、鼻息をふんすとならすように気合をいれて、コスタおじちゃんに究極の一手を指す。
「ええ、そうです。その為にも、コスタドル様」
「いいえ、これからは親しみを込めて、こう呼ばせてもらいます」
「──お父様」
その最後の言葉『お父様』に反応して、隠れて見えない
その見えない神威の波動によって、天井の薄暗かった壁面全体に、桃色と赤色の淡い光が灯り、その淡い光が次々に円状に満ちていき、水の波紋の波のように重なり合い、より奥深い色彩に染め上げる。
そして、大広間内の天井部一帯は、一瞬にして桃色と赤色の夜空に輝く星空のような、幻想的な風景に生まれ変わった。
星空のように灯った恋の光は、徐々に結びつくように光が折り重なりあい、次第に
この光の帯も恋の糸が結びつくように複雑に重なり合い、次第に地面に向けて
その甘くて切ない恋の匂いは、コスタおじちゃんの加齢臭の超臭そうな匂いも綺麗さっぱり脱臭して、コスタおじちゃんも、恋の
「──お父様??」
超臭そうな加齢臭の治療が済んだことにも、全く気づく様子が見られない、阿呆な表情を浮かべたコスタおじちゃんは、短い言葉を小さな声で呟くと、純粋な脳筋筋肉の脳では受け止められなかったようで、脳筋の脳が
ラスレちゃんの、貴族令嬢の立ち振る舞う姿だけを視界に収め、口から溢れた言葉が、すぐに空間に溶けてしまう。
もう、今までの怖い面構えもどこえやら、お貴族様とは思えない、阿呆な間抜けづらを晒したコスタおじちゃんは、放心したように動かないけど、ラスレちゃんはどうするんだろう。
「そうです、お父様、お願いします」
「私の話を聞き届けてください」
コスタおじちゃんの放心前に発した小声で呟いた短い単語も、
その最後の言葉『お父様』に反応して、隠れて見えない
その効果で、たちまち空間に更なる変化が巻き起こる。
今度は、洞窟内床面の小石や岩や地面や生えている光苔も全て淡い桃色に染められた。
その桃色に染められた大地の地面から、桃色の草や花の芽が少しずつ姿を現していく。
ミ
そして、天井部から次々に垂れ下がる、桃色と赤色の光の垂れ幕を通過した
みんなに見えるようになった星の数ほどいる
ミ
周りで警戒態勢に意向した騎士小隊の面々も、皆唖然として周りをキョロキョロと見渡していた。
ミ
一人の女性騎士が指で軽く隣の女性騎士の腕を触り、こちらを向くように指し示す。
「──ねえ、ここって超危険な洞窟ダンジョンの筈だよね?」
そして、隣の女性騎士に向けて問いかけた。
ミ
隣の女性騎士は、恋の甘い匂いに
「そうだけど、うっかり罠にかかって妖精界にでも、迷い込んだかもね──」
隣の女性騎士の問いかけに女性騎士は、うっとりした声で話を返した。
ミ
幻獣の守護者の面々も思い思いにそれぞれ幻想的な風景を見つめている。
「はー、これ、上手く収拾できるのか?」
セルディさんは、手で額を支えつつ頭を振り、やりすぎだと主張したいように見えた。
「相変わらず、ラスレもぶっ飛んでるぜ」
ギレン兄も、セルディさんとほぼ同じ動作をしてるから、同じくやりすぎだと主張したいようだ。
ミ
「凄い♪凄い♪綺麗♪綺麗♪あはは♬うふふ♫♬」
イエラちゃんは、両手を広げて着てる純白の神官見習い衣装の型が崩れ、スカートの裾が広がり
シフィ姉ちゃんだけは、何も変わらず、もふもふ山の中に埋もれたままで、中から奇妙な
ミ
おっと、コスタおじちゃんが、放心状態から抜け出して正気に戻ったようだね。
まだ、大分混乱してるみたい。
でも、良かったっCHU♡!!目が覚めて安心したっCHU♡!!
ミ
オエッ!☆・*:.゜∵。ゲホッ!☆・*:.゜∵。
「──はぁ??うおーなんだ、この不揃いの歪な形は....」
「私の周囲に山ほど現れたぞ!!」
「他の場所にも大量に出現したようだが!!」
「──これは、一帯全体どういう訳だ!!」
「ラスレ嬢、まさか私を
「グランド、貴様も早く分かるように説明しろ!!」
一瞬放心していたコスタおじちゃんだけど、
「父上、落ち着いてください」
「この物体達に敵意は感じられません」
「よく見てください」
「あれは、ただ空に掛けているように見えているだけです」
「これは、私も予想外の光景ですが、これがラスレシア様の言われた新たな趣向なのでしょう」
慌てたコスタおじちゃんが、また余計な事をやらかさない内に、グランさんは一端落ち着くように呼びかけ素早く状況説明を行いつつ、平常心を保ち対処するように促していた。
そんなグランさんの目線も、チラチラと
ミ
そんな2人の慌てぶりを、目にしてるラスレちゃんだけど、恋の超特急の矢の勢いは、まだまだ止まりそうになさそう。
その恋の超特急の矢を何本を装備し、いつでも放つ態勢に入ったラスレちゃんは、更なる恋の矢を放つ。
「お父様、お願いです」
「──私にグランドエルト様をください」
天使のおめ目をHEART♡HEART♡に付け替えた、恋の特攻隊と化したラスレちゃんは、コスタおじちゃんが混乱している状況につけ込んで、自分の心から願う本当の望みを、コスタおじちゃんに向けて告白した。
ミ
その短い言葉を意味を受け止められなかったコスタおじちゃんは、またまた阿呆は間抜けづらを晒す。
「──はぁ??ラスレ嬢、君はこの場で何を言っているのだ」
「おい、グランド、貴様もこの状況を、しっかり説明しろ!!」
今の状況が理解できない間抜けづらを晒してるコスタおじちゃんは、自分より先に交渉していたグランさんに説明するように命令した。
グランさんは、落ち着いた様子を見せているが、グランさんに声を掛けてくる
「はぁ、父上、気を確かにしてください」
「ラスレシア嬢は勇気を振り絞り、父上にお願いしているのです」
「全てラスレシア嬢の話された言葉の通りですよ」
「アルスレグス伯爵令嬢の言葉をしっかり聞いてあげて下さい──」
グランさんは、軽くため息を吐いた後で、真剣な表情に変えて、コスタおじちゃんにしっかりラスレちゃんの話を聞くように再度促していた。
「──あ...あー....おう、わかった」
「ラスレシア嬢、もう一度聞かせてくれないか?」
頭がメチャクチャ混乱状態のコスタおじちゃんだけど、何とか姿勢を騎士の佇まいになるように態勢を整えて、ラスレちゃんにもう一度、同じ言葉を聞かせてくれるように頼み込む。
その言葉を素直に受け取った恋の女狩人ラスレちゃんは、全ての自分を包み隠さずさらけ出すかのように、HEART♡HEART♡に染まった両目をグランさんとコスタおじちゃんを視界に収め、天使の笑顔で次の言葉を語る。
「はい、お父様」
「──グランドエルト様を私にください」
「私の
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