第17話 シフィ姉ちゃんの深層思考の考察①
「説明したら、長くなりそうだから、アヴィちゃん、私の手を握るポン」
そう言うとサラは、私に手を差し出してきた。
私は、サラの言う通りに、差し出されたもふもふの手を握る。
すると、そのもふもふの手を通して、シフィ姉ちゃんの深層思考が私の脳に流れ込んできた。
シフィ姉ちゃんの強い感情が怒涛のように押し寄せ、私の脳がグルングルンと揺れてるよ。
でも、これから更に、かなりきつい負荷が脳に掛かると覚悟して身構えたみたけど、殆ど来なくてあっという間に終わったから、あれって、ちょっと肩透かししちゃう。
初めての体験だから良くわからないけど、私の脳が強いってことかな。
まあ、エロエロ女神にあんまりお礼は、言いたくないけど...。
他の人より丈夫な身体にしてくれて、しかも病気にも掛からないようにしてくれて、健康体を保つようにしてくれてる
そこだけは感謝してるよ。
私のそんな感謝の思考とは関係なく、脳内ではシフィ姉ちゃんと私の記憶がごっちゃになったみたいに、記憶の再生が意思に関係なく始まろうとしていた。
だけど、直ぐに脳内が私の意思に関係なくより分けられて、記憶があべこべにならないように整理されていった。
私の記憶とシフィ姉ちゃんの記憶がより分けられる中で、シフィ姉ちゃんの色々な情報が駆け抜ける。
あれっこれって精神世界に引っ張られる状況に似てるね。
一応念のため、それ用の魔法を無演唱で展開しておき、いつでも念じれば発動できる状態にして待機しておく。
その魔法陣展開が終えると同時に、私はやはり、精神世界に引きづられていった。
精神世界に引きずられる中で、シフィ姉ちゃんの記憶の走馬灯の一部が、私の精神と寄り添うように一緒に落ちていく。
私は、記憶の走馬灯や、同じく精神世界に引きずられる記憶の断片を、あれやこれやと見つめていく。
あ─、そう言う事か....うん、何となくこの記憶の断片の全体像が見えてきたよ。
これは、知りたくなかったよ。
あのエロチビデブ王族様になんて報告すれば、いいんだよ。
無理。まだ報告出来ない。
今後なんとかしよう。そうしよう。
気が重たくなるよ。
誰か、あのエロチビデブに教えてあげてよ。
王族様、1度鏡を見て下さいってね。
私は絶対に嫌だよ。
も─最悪!!最低!!大混乱!!
この件は、一旦封印しよう。そうしよう。
私は、エロチビデブ王族様の映る記憶の断片をどかして、他の記憶を探してみた。
次のシフィ姉ちゃんの記憶の走馬灯を見つめると、そこには、丁度今日の午前中の様子が映っていた。
私は、その記憶の走馬灯に映る映像を食い入るように見つめた。
その映し出された映像を簡単に説明すると........
今日は、毎月恒例のダンジョン実地訓練がある日なんだけど、
そして、我こそはという、志願者を伴り1000人近くいる王国騎士団と一緒にダンジョンアタックが行われたらしい。
そして、そこにシフィ姉ちゃんのパ─ティ─『幻獣の守護者』も参加することになる。
『幻獣の守護者』の構成メンバ─は、シフィ姉ちゃんも合わせて5人パ─ティ─。
みんな同級生で、昔からの幼馴染らしい。
簡単なメンバ─紹介をしておくと....。
幻獣の守護者メンバ─の最初の1人目。
赤髪ワイルドツ─ブロックで鋭い赤目と鋭利な
魔法剣士のギレンジア。通称ギレン兄。
幻獣の守護者メンバ─の2人目は....。
銀髪爽やかツ─ブロックで落ち着き整った甘い
男爵の家系に生まれ、恵まれた体格と冷静な判断を兼ね揃えたみんなのまとめ役。
騎士見習いの男性、セルディアス。通称セルディさん。
幻獣の守護者メンバ─の3人目は....。
金髪前下がりショ─トスタイルで、可愛い
リュオ─ラ教信者として、回復・浄化を担当する美人なおっとりさん。
神官見習いの女性、イエラフェル。通称イエラちゃん。
幻獣の守護者メンバ─の4人目は....。
髪色は明るい茶色の髪色で、ショ─トボブの小顔に見える髪型と、可憐な甘い
代々続く有名な魔術師の家系に生まれた、明るく気さくで鬼畜な魔法馬鹿。
魔術師見習いの女性、ラスレシアさん。通称ラスレちゃん。
幻獣の守護者メンバ─の5人目は、当然あのもふもふお馬鹿さん。
我らが馬鹿魔導銃剣士、シンフィリス姉ちゃん。
この仲間等の中で、一番近接攻撃力が強いのは、シフィ姉ちゃん。
それは、私の魔導装備で、全身覆われているから、当然のことなんだけどね。
そんで、殲滅力が一番高いのは、ラスレちゃん。
因みにセルディアス兄ちゃんがシフィ姉ちゃんを、何がいいのか私にはさっぱりわからないけど、紳士的に猛烈アタックしてるみたい。
そんで、そのシフィ姉ちゃんもまんざらでも無い様子。
我らが王族様は、草場の影でいつもハンカチを噛み締めていたりして。
あ─あ、男爵家の次男坊より、やっぱ、時代は王族よ。
シフィ姉ちゃん、早く目を覚まして。
草場の影で王族様が泣いてるよ。
まあ、今はそんなことは、取り敢えず置いておいて....。
『幻獣の守護者』の
「幻獣の守護者も王国騎士団と共に戦い、そして野望を叶えるんだ」
「この戦いが、幻獣の守護者が成り上がる最初の除幕になるはずなんだ」
「この私を信じて付いてきてくれ!!」
「ギレン、私が喋ってるんだから、最後まで真面目に聞け!!」
やっぱり、安定のシフィ姉ちゃんの声だったよ。
うわっ態度も凄い横柄だよ。
しかも、何この命令口調と変な演説は?
「シフィお前、ほんとに馬鹿だわ」
「やっぱ頭膿んでるだろ」
「アヴィちゃんに1度、頭を精密検査してもらえよ」
「本気でそう考えてるなら、まともじゃね─からな」
「お前はそんなに死に急ぎて─のか?」
「なんなら、俺がお前に、止めを刺せてやろうか?」
「気持ちいいぞ!!お前刺されんの好きそうだしな」
今回の舞台でも、正に一発触発の状態で、ギレンさんとシフィ姉ちゃんが睨み合う。
「おいおい、落ち着いてくれないか」
「今は真剣な話し合いの最中なんだ」
時代がかった銀色の全身甲冑を装備しているセルディさんが2人をなだめようとしているよ。
「そうよ、今は喧嘩してる場合じゃないわ」
スケスケ魔術師衣装を重ね着したラスレちゃんが、髪をかきあげながら、面倒臭そうに声を掛けてるよ。
「一旦、みんなで深呼吸しましょうよ」
「深呼吸したら、心がスッキリするから、みんなでやりましょう」
純白のロング神官衣装を羽織ったイエラちゃんは、一人両手を真横に伸ばして深呼吸をしているね。
みんなそれぞれの行動で、争いの仲裁をしているけど、ちょっと若干変なのが混じってるよ─だね。
まあ、気にしない、気にしない。
見ないふり。見ないふり。
まあ、その『幻獣の守護者』の
そのメンバ─全員の反対と真っ向から対立するシフィ姉ちゃんは、騎士の実戦を是非見学したいやら、今後の実戦に役立てたいやら、ここで活躍してS級冒険者の道が開けるやら、訳のわからない
決めてとなったのが、この言葉。
「私が、幻獣の守護者を抜けたら、お前らは、私の妹のアヴィの支援も受けられなくなるんだ」
「もし、今回の私の願いを聞き届けてくれないなら、私は抜けて1人で行くぞ」
最終的に、シフィ姉ちゃんは、私の名前まで持ち出して、
確かに私の名前を使えば、みんなも渋々ながら、参加せざるを得ないだろうということは、容易に想像できちゃう。
私は、超最高に熱くなり、映像の中のシフィ姉ちゃんに向けて思いを吐き出す。
私はお姉ちゃんが脅迫の材料にする為に、支援してるんじゃないよ。
もし、仮に幻獣の守護者の
私は、そんなの想像したくもないし、幻獣の守護者のみんなとも、気さくに色々話せるようになったから、訳もわからない冒険をして、簡単に命を散らしていくのは、絶対に見たくない。
だから色々、幻獣の守護者の
その、いままでのにした支援を、全て金額に直して、普通の冒険者パ─ティ─がその金額を目にしたら、きっと間違いなく、両目が飛び出て、髪の毛が全て抜け落ちて、腰が砕けて、大も小も垂れ流すようなことになる
その具体的な支援内容を少しだけ話すとね....。
毎回冒険帰還時に各種ポ─ションを全員分無料で補充・支給する。
冒険帰還時に仲間達の装備品を無料で錬金補修再生作業を請け負う。
通常型収納魔導リュック『ハイルカシラン』を人数分無料支給。
浮遊移動魔導板『キックンボ─ド』を人数分無料支給。
その場で鑑定できるように眼鏡型魔導鑑定機器『ミエルカシラン』を人数分無料支給。
罠をいち早く発見し、罠を解除していく浮遊思考型魔導罠取締り機器『ワナルンルン』を10機支給。
食材を鍋にぶち込むだけで、10分後には美味しい煮込みス─プが作れる魔導炊飯鍋『ブチコムンジャ-』を支給。
毎回使用時に洗浄・殺菌・消毒が自動で開始される簡易型魔導便所『ダップンダヨネ』を人数分支給。
おおよそ3人分の容積の長方形型白障壁を展開して、安全空間を作る設置型魔導障壁機『アンシンシン』を人数分支給。
安心な休息を約束する全自動設置解除型魔導コテ─ジ『オヤスミンコ』を2機支給。
この
そして、転移した後には、その装備が装着された状態で登録された転移箇所に出現するようにしておいた。
転移発動方法はとっても簡単で、手に
更に、この
支援紹介は、疲れたからこの辺で....。
でもね、まだまだ、他にも、支援してるのは、山ほどあるんだよ。
どうだ─!!見たか─!!感じたか─!!
シフィ姉ちゃんのパ─ティ─『幻獣の守護者』にこれでもかと、大金をつぎ込んだ私。
収支は勿論、真っ赤っかの─大赤字!!
だから、その分シフィお姉ちゃんには、影のアイドルとして、私に貢いで貰わなきゃいけないんだよ。
もう、そんないつ死ぬかもわからない、冒険者なんかとっとと辞めて、学校の真のアイドルとして君臨して、もっと私を儲けさせて、早く左団扇を扇いだ豪華な研究生活を送らせてよ。
そしてシフィ姉ちゃんは、あの変な趣味のエロチビデブ王族様と、楽しく結婚生活を送ってちょうだい。
結婚したら、今までの支援した分を10倍の利息を含めて、私に返して欲しいけど、頼んだらいけちゃうかな?
おっと、なんかいろいろと、脱線したようだけど、この記憶映像を見てたら、ふと思いついたんだけど....。
結局、幻獣の守護者は、全員参加になったみたいだけど、今日休まずに私が学校に行っていたら、この状況は、どう変化していたんだろう?
私は、この学校には、今年入学したばかりのキャピキャピの一年生なんだけど....。
でも、なんだか異様な程、周りから熱い期待をかけられていて──。
期待の新人やら──。
学園の聖女やら──。
錬金魔女やら──。
王子の右腕やら──。
水の女王やら──。
無音の魔術師やら──。
女神の使徒やら──。
闇の女帝やら──。
もう、本当に、訳のわからない2つ名を、学校内の皆さんから授かっているんだよ。
だから、もしかしたら、みんなも期待やら、聖女の力を貸してほしいやら、何らかの力が働いてしまうかもしれない。
そして、学校の実力者として特例として認められて、お姉ちゃん等と一緒に参加させられたかもしれないね。
そして、その私の横には、エロチビデブ王族様が影のように貼り付いていたかもしれない。
ウッヒョ──、コワ──、良かった─学校ズル休みして!!
もしかしてオロ叔父ちゃんは、王族の愚策に抵抗する為に、私にサラを差し出したのかな?
いや─、流石のオロ叔父ちゃんでも、そこまで深読みは、しないんじゃない。
そうね、実際のところはわからないから、後で事の真相を、じっくりオロ叔父ちゃんから、後ほどちゃんと聞いちゃいましょう。
さ─私の考えも上手くまとまったから、さてと、そろそろシフィ姉ちゃんの記憶の探索を進めていきますか。
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