第15話 オロ叔父ちゃんも乱入②

「オロ叔父ちゃん、止めてください」

「自分が何をしているか、わかってるんですか?」

「早くその手を離して、シフィ姉ちゃんを解放してください」


 私がそう叫ぶように説得しようとしても、オロ叔父ちゃんは、シフィお姉ちゃんを全く離そうとしない。


 其の代わり、オロ叔父ちゃんは、柔らかい声で子供をあやすように私に話しかけてきた。


「アヴィちゃん、こんにちは、今日も落ち着いていて、可愛いね」

「今はね、叔父ちゃんとシフィとで、少し大人の話し合いをしているんだよ」

「アヴィちゃんはしばらく、離れていてくれないかな」

「できればアヴィちゃんのお部屋で、もう少しだけ、待っててほしいんだけど...」

「ここは、叔父ちゃんを信じて、お部屋で少し待っててくれないかな」


 あっそうなんだ。


 私子供扱いされてるよ。


 実は、そうなんです。


 私は実際子供なんですよ。


 しかも、キャピキャピなんだよ。


 しかも、猫被りマスタ─資格を取る為に、必死に勉強して頑張る可憐な女の子だよ。


 キラ☆彡キラ☆彡キラ☆彡リン☆彡


 キラ☆彡リン☆彡リン☆彡(瞳の光)


 どう☆彡私の純粋でけがれの無いキラキラ煌めいた2つの綺麗な瞳。


 良いでしょう☆彡!!


 欲しいでしょう☆彡!!


 羨ましいでしょう☆彡!!


 だから、そんな子供に、こんなえぐい場面を見せないで!!


 オエ─☆.。.:*・ゴホッ☆.。.:*オエ─☆.。.:*・ゲホッ☆.。.:*


 良く見ると、シフィ姉ちゃんの首筋に短刀が添えられているが見えた。


 は─、も─、事情はわからないけど、こういう脅すやり方余り好きじゃないんだよ。


 ホント、私の目の前でわざと見せつけるように脅すのは、正直、もう止めて欲しいんですけど。


 いつもは、笑いを交えて教えてくれるけど、こんな真剣な授業受けたくないよ。


 そんでもって、なんでいつも私ばかり、除け者みたいに扱われるかな─。


 将来の王族候補に恩を売って、上手く立ち回って、責任は全てオロ叔父ちゃんに押し付けてやる。


 は─取り敢えずは、脳筋言語も駆使して、話し合いを始めるとしましょうかね─。


 も─。オロ叔父ちゃんめ─!!絶対にオロオロさしてやるんだから見てなさい!!


「嫌です。無理です。オロ叔父ちゃん!!」

「私に沢山たくさん隠し事してたから、信じられないよ」

「どうせ、私達の話を隠れて聞いていたんでしょう」

「それなら、今が私達にとって、超重大な緊急事態なのは、知ってるよね!!」

「私達、これから凄く忙しくなるからさ─」

「私達の邪魔しないで、大人しく、引っ込んでてよ」

「今出てこられるのは、とっても迷惑なんだから!!」

「今更、横から出てきて、口出しするのは、止めて!!」

「後、シフィ姉ちゃんを、簡単に処分したら、絶対に!絶対に!許さないからね!!」


 最後の言葉を発し終わると、オロ叔父ちゃんと対決姿勢を示しても辞さない私は、直ぐに実力行使できる魔法を脳内検索していく。


 その中から、ちょっと強めの脅しにも利用できそうな魔法を、更に脳内で瞬時に検索して、検索にヒットした中から選んだ魔法『次元氷ディメイション槍散弾アイス・ブラッド』を無演唱で展開した。


 すると、瞬時に私の周囲の空中に、小さな魔法陣が50程展開され、そこから小型の氷槍ひょうそうが同数装填そうてんした。


 その全ての氷槍ひょうそうは攻撃目標を標準に捉えて、空中で超高速回転したまま制止している。


 攻撃対象は勿論オロ叔父ちゃんにした。


 この魔法の怖いところは、普通に空中に飛ぶんじゃなくて、空間を歪めて氷槍ひょうそうが次元空間に飛び立ち、次元空間から攻撃対象に直接突き刺すから、事実上回避不可能な凶悪な魔法なんだ。


 さらに、この魔法は敵の弱点部分に、直接次元空間から狙いを定めて、氷槍ひょうそうを突き刺すこともできるから、敵からしたら、何処から飛んでくるかもわからない、最悪の凶悪魔法。


 攻撃対象が氷槍ひょうそうより硬い対象なら、防御することは可能だけど、私の強い魔力を込めてあるから、そう簡単には防御できないよ。


 この魔法は、私が自分で開発した、取って置きの自己開発魔法オリジナルマジック


 この自己開発魔法オリジナルマジックが展開できる魔法呪文マジックスペルを私は誰にも教えていない。教える気も無い!頼まれても絶対に教えない!!


 こんな凶悪な魔法呪文マジックスペルを一般に開放したら、大変な事になるから公開はしないよ。


 この魔法は、耐エロエロ女神用に考案して、実際にエロエロ女神と対決した際に使用した魔法なんだけど、他の使い道に関しては、一切考えてなかったのよね。


 だけど、オロ叔父ちゃんには、1度実際に、この魔法を展開して見せて、魔法実験に立会たちあってもらった事があるんだよ。


 だから、この魔法の威力は、オロ叔父ちゃん自身が一番良くわかっていて、叔父ちゃんの脳裏には、深く焼き付いているはず。


 そういう訳で、この魔法はオロ叔父ちゃんへの脅しには、効果覿面こうかてきめんだと思うんだ。


 おっと、さっそくオロ叔父ちゃんが、私の目論見通りに、動いてくれたよ。


 全身黒尽くめで、ほとんど表情がわからないけど、唯一判断できる青い瞳が一瞬、微かに揺らいだように見えたんだ。


 それに、私から少しでも離れられるように、シフィ姉ちゃんをを羽交い締めにしたまま階段を登って、私から距離をとろうとしてる。


 よ─し!!ビビってる!!ビビってる!!


 オロ叔父ちゃんの名前らしくオロオロしてなさい!!


「叔父ちゃん困ったな─」

「もう仕様が無いな─」


 オロ叔父ちゃんは、困ったような口調で話しかけてきた。


「今回は、仕方が無いから、アヴィちゃんに負けておくよ」


 そう、話し終えると、オロ叔父ちゃんは、シフィ姉ちゃんにだけ聞こえるように、シフィ姉ちゃんの耳元で小さく呟いていく。


(シフィ、我らの至宝に傷一つでも付けてみろ)

(お前の大切な者を1人残らず消してやる)

(さあ、いけ!!)

「うわ─!!」


 その呟きが終わると同時に、オロ叔父ちゃんは、シフィ姉ちゃんの背中を強く押して、階段から突き落とした。


 シフィ姉ちゃんは、正に今直ぐにでも、階段から転がり落ちようとしていて、その瞬間に私は、時間が狂ったかのようにコマ落とし感覚で時間が流れていくように感じてた。


 うっそ─、私の家族に何するのよ─!!


 オロ叔父ちゃん!!


 でも、それどころじゃない──ここは、サラの出番よ。


「サラ、シフィ姉ちゃんと助けて!!」


 私は瞬時に状況判断して、サラに緊急救助要請をした。


「了解ポン!!」

「ポポンがポン!!」

「新生サラちゃんの出番だポン!!」

「早く終わらして、2人の愛の巣に直行するポン!!」


 出番が来るのを、今か今かと待ちわびていたサラは、私が背負っている魔導リュックハイルンルンから、勢いよく飛び出してきた。


 空中に飛び出した、タヌキ神獣サラの縞模様しまもようにキラキラ煌くもふもふな10本の尻尾が、シフィ姉ちゃんに狙いを定めて、勢いよく自由自在に伸びていく。


「うわ─最強もふもふだ─もふりた─い!!」

「すご─い、なんてキラキラした綺麗なもふもふ!!」

「もふもふハンタ─の私も、見たことが無いもふ具合!!」

「あ─も─死んでもいいから、早くもふらせて─」


 自分が今まで散々苦しめられていたことも、全部忘れてもふもふ1色に頭が染まったシフィ姉ちゃん。


うなれ─モフモフ魂─うおぉ──ぉ──」


 シフィお姉ちゃんの2つのまなこに炎が宿る。目が超マジマジだ。


 そして、絶叫するかのように、シフィ姉ちゃんの熱き思いを、声に載せて張り上げた。


「「身体限界解除リミットブレイク!!」」


 シフィお姉ちゃんは、自分の最終手段に使う時間制限付きのスキルを、後先考えずに、なんとこの場で使ってしまった。


 この、身体限界解除リミットブレイクは、1日に用法用量を守って正しく使わないと、後でとんでもない超激痛の筋肉痛で苦しめられることになる。


「お願い、早く私を包み込んで─」


 シフィ姉ちゃんは、雄叫びをあげて、身体限界解除リミットブレイクを執念で行い、もふもふ尻尾に標準に定めて、気合で高速5回転をして、根性で転げ落ちるのを踏ん張り、妄執もうしゅうで方向転換をして、妄想を爆発させて、両手を広げてダイブした。


 その長く伸びた10ぽんのもふもふ尻尾は、シフィ姉ちゃんに衝撃を与えないように、ふわりと包み込むようにキャッチした。


「す─ごい」

「柔らかい!」

「史上最高のもふ天国!!」

「神様ありがとう!!」


 シフィ姉ちゃんは感動のコメントを語ってくれた。


 ストラ─イク!!流石はベロリのサラちゃん。


「捕獲完了ポン」


 ベロリのサラちゃんは、無事に救助できたと大きな声で報告する。


(今からシフィお姉ちゃんを、じっくり美味しく召し上がるポン)

(リュックの中で練習した技をシフィお姉ちゃんで試してみるポン)

(シフィお姉ちゃんを未知の世界にご案内するポン!ポン!ポン!!)


 その報告が終わると、サラは本当に誰にも聞こえないほどの小さな声で、独り言を呟く。


 当然、その呟き声は私には聞こえなかった。


 私はこれから、この神獣がやらかす事態を全く気づかず、心の中で陽気に解説してる。


 ベロリンチョとシフィ姉ちゃんを巧くキャッチしたよ。


 優しく包み込む方法は、ベロリのサラちゃんだから、当然マスタ─クラスよ。


 そして、これでシフィ姉ちゃんもサラの魔性に捕まったよ。


 ちゃんと帰ってきてよ、シフィ姉ちゃん!!


「あぁ─もふ..もふ..もふ..もふ..もふ..もふ」

「いぃ─もふ..もふ..もふ..もふ..もふ..もふ」

「うぅん、もふ..もふ..もふ..もふ..もふもふ」

「えぇ─もふ..もふ..もふ..もふ..もふ..もふ」

「おぉ─もふ..もふ..もふ..もふ..もふ..もふ」

「ん─ん最高─。もう死んでもいいかも」


 シフィ姉ちゃんからも大満足の感想をもらえたよ!!


 良かった!良かった!


 そのまま、もふらせておいたほうが、後で機嫌がいいから、そのまま暫く放置しよう。そうしよう。


 そして、この、ほんのわずかな時間で起こった出来事に、青い瞳をしばたかせながら見ていたオロ叔父ちゃんは、サラの今の姿に強烈な衝撃を受けてしまっていた。


 オロ叔父ちゃんは、軽く時間停止したかのように、全ての動作を止めてあんぐりしている。


 パク..パク..パク..パク..パク..パク..パク..パク..パク..パク..


 嫌、違うよ。


 よくオロ叔父ちゃんの布に覆われたお顔を見てみたよ。


 そしたら、黒い布地で口元も覆われているからわかりずらいけど、口元だけ微かに動いているように映る。


 パクパクしてるよ。


 どうせなら、オロオロしてほしかったのに。


 う─ん。残念!!


 でも、見たか─!!これが、私達が精魂込めて作り上げた、みんなのなごみ神獣。


 ポポンがポンのベロリンサラちゃんよ─。


 オロ叔父ちゃん、どうかな─、ビビッたかな─??


 ビビったなら、素直に私達を通しなさい!!

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