第13話 シフィの乱入④
よくシフィ姉ちゃんを観察してみると、平静を装ってはいるけど、目線がかなり本気なんだよね。
笑顔は笑顔なんだけど、かなり変なんだよね─。
それにさ─、少しだけ身体から、まだ魔力が漏れてるから、どう考えても、まだ何か企んでるよ。
も─、シフィ姉ちゃんは、やっぱり、まだ何か隠してるよね!!
さっきの少し顔が赤くなって、顔を俯けてしまうシフィ姉ちゃんの最初に気になった、あの仕草は、羞恥心から出た行動じゃなくて、憤怒で屈辱に耐える為に出た行動だったのかな?
このまま、契約成立まで勧めて本当に大丈夫なのかな─?
部屋に入ると何かされる恐れが、急上昇してるんですけど。
部屋に入った瞬間に私を襲い掛かり、部屋の魔道具を物色して根こそぎ持ち去っていくとか、なんか、そんな感じがしそう。
一応部屋の中にも罠はあるけど、そう考えてしまうと、何が起こるかわからないから、出来ればまだ工房内には、いれたくないな。
支離滅裂な攻撃的な言動が多い、シフィ姉ちゃんだから、ちょっと理解に苦しむよ。
シフィ姉ちゃんは、1度決めたらそのまま突き進むお馬鹿ちゃんだからな─。
そんな、お馬鹿なシフィ姉ちゃんを再定義して、そこから推測してみると.....
──もしかしたら、実地ダンジョン訓練で、私が考える状況よりも、より酷い状況がシフィ姉ちゃんのパ─ティ─の身に襲い掛かり降りかかった。
そこで、手持ちのポ─ションは全て使い果たした。
それでも、ポ─ションが足りず、そこでやっと私の存在を思い出す。
私を学校内で探すが見つからず、担任に聞いて私がズル休みしたと聞く。
それで、シフィ姉ちゃんはやむを得ず、私の工房に押しかけ、襲撃をかけようとした。
でも、やっぱりなんで襲撃するのかは、やっぱり理解に苦しむな─。
馬鹿だから、それしか考えられないとか?
そう考えることも、かなり難しいけど、出来なくは無いんじゃない?
実際はどうだろう。正解したかな?
また、言葉や態度で相手の腹の探り合いするよりも、もう少し腹を割って話してほしいな。
一応家族なんだし。
でも、私もまだ打ち解けたとは、言い切れないから、お互い様かな?
だって、ラス姉さんとシフィ姉ちゃんとは、全く血が繋がってないもん。
だから、お互いに家族になろうと、もっか努力中なんだ。
そのラス姉さんとシフィ姉ちゃんを連れた今のお母さん、クリスリア母さんとエディスカルお父さんが1年前に再婚して、今の状況に至っている訳なのよ。
私の本当のお母さん、セラフィシア母さんは、私が生まれ落ちると同時に息を引き取った....。
....それから、私のお父さんは、
お父さんは、私に凄く優しくしてくれるし、私の思いとしても、お父さんに幸せになって欲しいから、当然私はお父さんの再婚には賛成したよ。
でも、私の上にいる3人の兄弟達は、猛反対!!
お父さんと私の3人の兄等は、今も険悪な状態なんだ。
不意に、シフィ姉ちゃんの少しそわそわしてる様子が私の目に映る。
私は、自分でも気づかずに、不意に思考の波に軽く押し流されていた事に気づく。
私の目線が、シフィ姉ちゃんの少しそわそわしてる印象を捉えたことで正気に戻れた。
おっと、深い思考の海にドップリ浸かってたよ。
今はそんな時間じゃなかった。御免、御免、シフィ姉ちゃん。
私は一旦仕切りなおそうと、両脇を動かし両肩をほぐして首も左右に軽く振り、軽く椅子に座ったままでもできる柔軟体操を少しして、少しでもいいから緊張状態をほぐそうとする。
やっぱり、少し心配だから、少しだけ探りを入れてみようかな。
私は映像に映っているシフィお姉ちゃんに、気軽な世間話を装って話しかけてみることにした。
「シフィ姉ちゃん、パ─ティ─メンバ─のみんなは元気してる」
「ああ、元気してるぞ」
私がシフィ姉ちゃんに話しかけると、シフィ姉ちゃんも直ぐに答えを返した。
しかし、シフィ姉ちゃんはお顔を少し下げて、私の視線から逃れようとする仕草をしてしまう。
その仕草を捉えた私は、やっぱりシフィ姉ちゃんの態度が変だと、そう思えて仕方が無かった。
あ─ん、もう無理!!頼みごとあるなら、お願いだから言葉にして言って!!
隠し事はやめようよ!!家族になったんだから!!ちゃんと助けるから!!
もう少し信用してよ─!!もう面倒いよ!!も─ずぱっと切り込んでやるもん!!
「──お姉ちゃん、私に嘘や誤魔化すのは、もうやめて!!」
「お姉ちゃんのパ─ティ─メンバ─に何かあったんなら、そうはっきり言って!!」
「それなら、ちゃんと助けるから──!!」
「変な心の障壁をつくるのは、家族になったんだから、もう止めてくれないかな?」
もやもやした思いを言葉に変えて、私はシフィお姉ちゃんにその言葉を、はっきりとそう言い放つ。
驚いたように俯いていたシフィ姉ちゃんのお顔が、私の映っている映像に向けられる。
その表情は、かなり衝撃を受けたように見えたが、その表情に作られた心の化粧は、無事に役目を終えて、次第に
心のお化粧が
その涙は、変異次元空間と化している階段廊下の階段床に、真っ直ぐに落ちていき、階段床に当たり飛び散った。
「──すまない。助けてくれないか」
シフィ姉ちゃんは、そう震え
その心に反応したのか、床に飛び散った涙の場所から、光の波紋が何本も発生し、空間に光の波紋の波を起こしながら、空間全体に広がっていく。
ブオ─ン...ブオ─ン...ブオ─ン...
そして、変異次元空間と化していた空間に耳慣れない音が響き渡り、こちらの空間も役目を終えて通常空間に移行していった。
「待ってて!!直ぐに準備して、そこに行くから!!」
私はシフィお姉ちゃんに、そう声を掛けると魔導キ─ボ─ドを操作して、
命令を受信した
次に私の屋敷のセキュリティ─を高める命令も魔導キ─ボ─ドを操作して魔導人工知能『カンガエルン』に与えた。
それが終わると素早く椅子から立ち上がり、急いで外に行く準備に取り掛かりに入る。
え─っと準備する物は、緊急治療用魔導ショルダ─バッグ『緊急ちゃんバッグ』でしょ。
それと、大容量収納魔導リュック『ハイルンルン』でしょ。
そうだ、そうだ!!
移動用に私が作った浮遊移動魔導板『キックンボ─ド』
そう、そう、これがあれば長距離移動も楽々チンなんだよ。
後は、メグフェリ─ゼ様からもらった御品と....
あっと、そうだ!そうだ!サラをそのまま閉じ込めて出かける所だったよ。
いけない、いけない。
カチャン..キ──...ムンズ..キ─..カチャン!!...
最初に魔獣錬成用の
私は抱え込んだサラに急いで言葉の銃弾を浴びせかける。
「むぎゅ──」
「サラ、予定変更よ」
「どうも、シフィ姉ちゃんのパ─ティ─が危ないみたいなんだ」
「だから、今からその場所に助けに向かうから」
「サラは後ろのリュックの中に入っててくれない?」
私がサラに状況説明を手早く済ませようとすると、サラからクレ─ムがはいる。
「アヴィちゃん、もうちょっと優しく掴んでよ」
「私の扱いが凄い雑だよ。私ぬいぐるみじゃないからね」
私はサラのクレ─ムを素直に受け入れ、抱き抱えていたサラを机の上に下ろした。
そして、サラに謝りの言葉を掛ける。
「もう、許してよ。後で一杯構ってあげるよ」
「なんなら、今日は寝かさないからね」
今、サラの機嫌が悪くなるのは、面倒いから、少しやる気の出る言葉を投げかけてみた。
サラに甘く聞こえるように話したから、サラの目は口は大きく開けられ、喜びに溢れてしまった。
その場でサラは、飛び上がって大喜び。
「ウソッアヴィちゃん、やっと私の愛を受け入れてくれるのね」
「よ─し、私めちゃめちゃ頑張っちゃうよ」
「2人の愛の巣に早く戻る為に、頑張るんだから!!」
愛の弾丸が凄まじい思いと言葉で、私に押し寄せてきた。
私は、この機会にサラに是非とも頼みたいお願いがあったのを思い出し、機嫌が良さそうな今にお願いしてみることにした。
「ねえ、ねえ──サラその前に一つお願いあるんだけど.....」
「少しだけ聞いてもらえないかな?」
「い─よ!い─よ!」
「私を受け入れてくれたアヴィちゃんのお願いなら、何だって叶えちゃうよ」
「やった─それじゃ─今から話す言葉の語尾にポンってつけて、話してくれる?」
「え─何それ─、ん─わかったポン!!」
「これで、いいかポン!!」
「うわ─それ、いい─最高─似合ってる─かわいい──!!」
私は可愛さの余り、我慢しきれず、サラに思いっきり抱きついた。
もふ....もふ.もふ...もふ...もふ...もふ....もふ.....
..もふ..もふ...もふ....もふ...もふ....もふ..もふ...
.もふ..もふ..もふ...もふ...もふ...もふ...もふ......
もふ.もふ..もふ...もふ...もふ..もふ...もふ...もふ..
そして、首を動かしてサラのもふもふをしっかり堪能する。
私が抱きつくと大体私の背丈の半分ぐらいかな?
やっぱりデフォルメしたタヌキをモチ─フにして正解だったよ。
この10本の
因みにこのもふもふ尻尾は、孔雀の綺麗で鮮やかな尻尾風にもチェンジ可能のすぐれ物。
尻尾は、訓練すれば、触手みたいに自由自在にできるし、攻撃にも使用可能にしたから、訓練次第では、凄い強くなれるんだから。
それに、このふっくらした体に、大きなお腹の大きな出べそ。やっぱ最高!!
抱きついた時は、神獣の透き通ったいい匂いが鼻に入ってきて、とっても心安らぐし言うこと無し!!
やっぱり、今のサラには、この言葉がお似合いよ──。
「あ──幸せポン!!夢が叶ったポン!!」
「私この姿のままでいいポン!!」
「神獣と人間の禁断の愛の物語ポン.....それで、炒飯5皿は行けるポン!!」
サラの顔も
「あっそうだ、階段廊下でシフィ姉ちゃん待ってるから、急がなきゃ!!」
そんなに時間は立っていないが、やはり、待たせるのが気が引けて慌てて、残りの準備をする。
「それなら、私はリュックの中にはいっているポン!」
器用にリュックのチャックを開けて中に入って行くサラ。
「アヴィちゃん──この中、ちゃんと空気あるポン?」
半分体が入った所で私にサラが声を掛けてきた。
「サラは、もう神獣だから、空気がなくても大丈夫よ」
「それにその中は魔素で充満してるから、サラにしたら、そこの方が居心地いいかもよ」
その言葉で興味が
「アヴィちゃんの言う通り、リュックの中の方がいい匂いがして落ち着くポン!!」
そして、また直ぐにサラが顔だけリュックからちょこんとだして私に中に入ってみた体験談を話してくれた。
「じゃ─私はアヴィちゃんから、お呼びがかかるのを待ってるポン!!」
サラはそう言い残すとピョコンとリュックの中に顔を埋めた。
それを見届けた私は再び準備に取り掛かる。
..トコ..トコ..トコ..トコ...トコ....トコ...ガサッ......
急ぎ用意しながら、私が着ている灰色ロングコ─ト風の錬金作業用衣装に、例の御品を持って、
トコ..トコ.トコ.トコ.ガサッ..トコ..トコ.トコ.トコ.ガシッ
次に、
よ─し、忘れ物はないよ。
──よし、シフィ姉ちゃんのパ─ティ─メンバ─がどんな状態なのかは、わからないけど、取り敢えず見に行こう。
シフィ姉ちゃんと一緒に移動する中で色々質問して状況を確認しよう。そうしよう。
..トコ..トコ..トコ..トコ...トコ....トコ..
私は、全ての準備を終えて階段へと続く扉をへと歩いていく。
...キ─イ..バタン..トコ...トコ....トコ..
私は工房の扉を開けて、シフィ姉ちゃんが待っているであろう階段付近に、目線を合わした。
すると、そのすぐ先の階段中程の場所で、シフィ姉ちゃんを羽交い締めにした、黒い忍者衣装に身を包んだオロ叔父ちゃんが、私の登場を待っていたかのように、その場に
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