新しい日々の始まり
今日は十二月三十一日、一年の終わり。
仕事の処理も一通り終わって私はみんなと広間でテレビを見ながらダラダラと一年の終わりを待っていた。
紫苑から年が明けたらすぐに初詣に行こうと誘われたから珍しく遅くまで起きているわけだが、やっぱり少し眠い。
「あら?アキル眠いの?」
ケイトが私の顔を覗き込んでくる。
「まぁ、ね。ここ最近ろくに寝ていなかったから少し眠いわ」
「あぁ、確かに忙しそうだったもんね。少し寝れば?時間になったら起こすわよ?」
「いや、ここまできたら起きてる。うん、頑張る」
「アンタ、変なところでいじっぱりよねぇ」
クスクスと笑いながらケイトはそう呟く。
正直、後2時間程度で年が明けるのだ。
なら、今更眠ってもあまり変わらない。
それなら起きていた方がまだ良い。
「それにしても、今年はいろいろありましたね」
お茶の準備をしながらクリスが呟く。
「そうね、ホント色々あったわね……」
そう応える。
実際、今年は色々とあったものだ。
大体面倒ごとだが……
「チンピラの事務所を潰したりもしましたねぇ」
お茶をすすりながら雪奈が呟く。
「私がこの屋敷に移り住んだりもしたわねえ」
雪奈に続くようにシェリーが呟く。
「あったわねえ、そんな事も。私としてはやっぱり世界が滅びかけたことかしらねぇ……ホント今年は面倒ごとしかないわね……」
自分で言っておいて何だが本当にろくな事がなかったな?
「ありましたねぇ、その後お嬢様が行方不明になった時はもう大変でしたよ」
「主にクリスがね」
ケイトが付け足すように言う。
「まぁ、お嬢様も無事に帰ってきましたし、なんだかんだ誰1人かける事なく新年を迎えられるのは良い事です」
「それもそうね、あんな事があって誰も死ななかったのは本当に奇跡的よ」
そんなことを話していたら、テレビの方では年越しのカウントダウンが終わっていた。
「あら?もう年越し?」
「みたいですね」
「そう、じゃあ行きましょうか」
そう言ってみんなで予玖土神社に向かう。
外は時期相応というべきか凍えるように寒いがたまにはこういうのも悪くない。
予玖土神社に近づくにつれ、人気が増えていく。
ここら辺で初詣ができそうなのは予玖土神社くらいしかないから当然なのだが、こんな夜中に人気が多いというギャップが新鮮だ。
神社の前に着くと不意に声をかけられる。
「よう!久しぶりだな!」
快活な声の主は
「久しぶりね紫苑、それと……」
紫苑の手を握って横にちょこんと立っている少女に視線を向ける。
「お久しぶり、ナズナちゃん」
「お久しぶりです!アキルさん!」
ナズナちゃんは元気にそう応える。
見ないうちにだいぶ紫苑に似たかしら?
「それにしてもそっちは大所帯だな、まぁ、こういうのは賑やかな方がいい」
「ふふふ、それもそうね」
そう言ってみんなで本殿の方へと向かう。
やはり、最初は参拝からだろう。
しばらくして本殿へと到着し今年一年の安全を祈願する。
「さて、お参りも終わったし、この後どうするかしらね?」
「ん?それならうちに来るか?親父もアキルたちに会いたいだろうし」
「いいわね、それ。それじゃあ向かいましょうか」
そう言って『
「そういや、アキルは何お願いしたんだ?」
紫苑が聞いてくる。
「秘密よ、こういうのは言わない方が叶うでしょう?」
「そういうもんか?」
「そういうものよ」
そうやって静かで暖かな時間は過ぎていく。
まだ今年は始まったばかりだけれど、願わくば今年一年が静かで平和でありますよう
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます