第6話死神の話
死神神父は、エシャと名乗った。
彼はこの世界の出身ではなくて、別の世界から来たらしい。そんな話は最初は信じられなかったが、テレビで死神神父と同じような存在が増えたのだと報道され始めた。彼らは魔術というものを使って、俺たちが持っている魔力を糧に生きているらしい。その魔力を奪うために、異世界人は人を殺すこともあるらしい。
「エシャ。俺の父を殺したのは、魔力を得るためか」
俺は、エシャに尋ねた。
すでに俺とエシャの生活の基盤はできつつあった。エシャは俺の父親よりも働き者で、すぐに仕事を見つけてきた。コンビニのアルバイトだったけれども、それは俺たちの暮らしの貴重な収入になった。後から考えれば、エシャはとても頭がよく要領もよかったのだろう。そうでなければ、見知らぬ世界ですぐに仕事など得られるはずもない。そして、エシャの魔術もそれに大きく貢献していた。
エシャは魔術で、他人に自分の姿を変えて見せることができた。どうやら、俺以外の人間にはエシャは自分で殺した俺の父親の姿に見えていたらしい。
「残念ながら、私とあなたたち親子の魔力の相性は悪いのです。とりこめません」
エシャは、そう語った。
ならば、なぜエシャは父を殺したのだろうか。
父が死んでから、俺の生活は非常に安定して――普通の子供らしくなった。
「生前も同じことをしていたので、癖なのでしょうね」
エシャは、そう語った。
人を殺すことが癖なのか。
それとも、子供を助けることが癖なのか。
俺の疑問を読み取ったかのように、エシャは笑う。
「両方なのかもしれません」
生前から、エシャはずっと二つのことしかしていなかったという。
子供を守って、他人を殺して。
「おまえさ、もっと自分の人生を生きた方がいいよ。父親みたいに自分勝手に生きればいいのに」
それは、俺の本心だった。
というか、そういうものだと思った。
大人になったら、人間は自分の人生を好きなように生きられると思っていた。けれども、どうやら違うらしい。
「縛られている」
俺は呟く。
エシャは、大人になってもずっと縛られている。
こんなものに縛られていなくてもいいのに。
自分と相性がいい魔力の相手の元にいったほうが、きっとエシャもいいだろう。というか、魔力の補充をエシャはどうやっているのだろうか。魔力の相性が良い相手でなければ、相手を殺して魔力を奪うしかないと聞いているのだが。
「お前さ……殺してるんだろ。人間を」
俺は、エシャに尋ねる。
エシャは、笑うだけだった。
まるで、子供の俺はそれ以上は知らなくていいともいいように。
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