第63話

「それじゃあ、今日は話した通りの先方で行くからね」


 私が話した戦法は、話し合いの結果少し改良された後、試してみることになった。

 早速今日の攻城戦でやってみる予定だ。


「あの……サラさん。私、頑張りますから」

「うん! 期待してるよ。ティファ。今回の作戦であなたは重要だからね」


 そんなやりとりをしていると、攻城戦が開始される。

 今回はみんなコアがある拠点の広間からのスタートだ。


「それじゃあ、同期するから。みんな下がってね」


 念のための声をかけをしたものの、すでにメンバーは全員コアから十分に離れた所に移動している。

 私はコアに手を触れるといつも通りに同期を選択した。


「さてと、みんなよろしくね」

「任せておくれよ! わたしゃまたサラちゃんの近くで戦えるのが嬉しいよ!!」


 メンバー全員に薬を使った後、いつも通りに広場へと向かう。

 この時の移動も全員が同じ道を通るこれまで通りの作戦だ。


 途中、すでに拠点に向かってきていた一団と出会し、危なげなくこれを排除する。

 他のルートにも潜り込んでいるようだ。


 相手のポイントの付き方から、他のルートを通っているのは一つに間違いなさそうだ。

 事前に振り分けたチームの一つを、その撃退へと向かわせる。


 コアは私と同期しているから、拠点の広間へ進められても直接負けにはならない。

 だけど、その間の罠破壊やオブジェクト破壊などでポイントを稼がれると、接戦になった時に不利になる。


「それじゃあ、ギルバートたち。頼んだわね」

「ああ。任せろ。攻城戦でやるのは初めてだが、いつも組んでる仲間だ。安心してくれ」


 そう言うと、ギルバートたちは拠点に潜った相手を探しに向かう。

 今回のメンバーは、元々パーティとして組んでいた人たちにしている。


「さて。私たちは拠点を出るわよ。出る時が一番狙われやすいから。気を付けてね」

「よし! みんな! よろしく頼むぞ!!」


 私とセシルの声を合図に、私たちは拠点から広場へと出る。

 相手は自分の拠点へと続く入り口を守るように立っていた。


 予想通り、私たちの姿を確認した相手は、遠距離攻撃を仕掛けてくる。

 遠距離攻撃の弱点は、狙った位置を後から変更できない点だ。


 出た瞬間大きく移動をすぐに始めていた私たちは、相手の放った遠距離攻撃の範囲からはすでに外れていた。


「サラ。行くよ! 遅れないでね!」

「カインさん。一人先走ってはいけませんよ。今回はチームとしてどう動くかが重要なのですから」


 遠距離攻撃が全て避けられたのを確認した相手は、私たちを迎え撃つため、近接職が前に出てきた。

 そこにぶつかるように、トール率いる元【蒼天】のメンバーたちが前へと進む。


「サラさん! 準備オーケーです。少し移動速度は落ちますが、いつでもいけます」

「了解。ティファ早速展開させて」


 私の言葉で、ティファは詠唱を終えた魔法を使う。

 ティファを中心に淡い光の魔法陣が頭上に現れ、そこから下に向かって光に包まれる。


 これは【サンクチュアリ】と言うスキルで、術者を中心としてその光の中に居る仲間のダメージを大きく軽減し、逆に敵の行動を大きく低下させる。

 MPを大量に消費する魔法で、継続中は常にMPが減少する。


 長い間使用するのは本来むずかしい魔法だけれど、私のサポートがあればそれも可能だった。


「タイミングはだいたい掴んでるけど、危なくなったら言ってね」

「はい! 分かりました!!」


 サンクチュアリに包まれたティファに寄り添うように、私たちは移動する。

 目的は相手の拠点の奥にあるコアだ。


 今私の周りにいるメンバーは、セシル、ハドラー、アンナ、カインの初期メンバーだ。

 そこにティファを混ぜた六人で相手の隙間を縫って、コア破壊を目指す。


 今回の作戦は、今まで通り私がコアを同期し、薬を全員に私が使うために全員拠点スタートにする。

 そこまでは今までと一緒だけれど、それぞれの役割を少し変えた。


 メンバーを元々の集まりに編成し直し、ギルバートのパーティは臨機応変に動く遊撃部隊。

 一番人数の多い【蒼天】のメンバーは、広場で足止めを担う。


 ギルバートたちも拠点に相手が居なくなれば、【蒼天】のメンバーたちと共に広場で敵の殲滅を目指す。

 その間に、私たちは拠点へと侵入し、一早くコアを破壊することを目指すのだ。


 これまでとの変更点は、私が広場に長居しないようすること。

 もしコア同期がバレて私が狙われる場合、広場の広さが問題となるからだ。


 最悪の場合は50人全員からの攻撃を一気に受ける危険性がある広場は、私を守る上でかなり困難な場所と言える。

 かと言って、自分の拠点の中に居ては味方への支援も難しい。


 そこで考えたのが、最も信頼のおけるメンバーと一緒に、相手の拠点に攻め込むと言うものだった。

 拠点の中であれば、一斉に攻め込まれる危険性は大きく減る。


 更に、S級となれば、全員殲滅で勝つのはかなり難しい。

 コアを破壊して勝つという方が現実的だと言える。


 時間切れのポイント勝負になった際にも、相手の拠点に攻め込んでおけば、罠破壊やオブジェクト破壊でポイントを稼ぐことも足しになる。

 こうして、私たちはトールたちが足止めをしている内に、入り口を守ろうとする相手のみを蹴散らし、拠点へと進んでいった。

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