第3話 現実
・・・・・・・・・・ル!
・・ッ!・・・・・・・・・ケル!
「おいっ!猛堂タケル!!!起きんか!!」
「ふぇ?」
机に肘をついて、頭を支えていた手が外れ、僕はガクンと頭を上下に揺らした。
僕の名前が大きな声で教室中に響いているのが分かる。
「何を授業中に寝とるんだ君は!!集中せんか!!」
怒号をあげるひげ面でガタイのいい先生がこっちを指さしている。黒板には僕の記憶には残っていない大量の数式と解説が書き込まれていた。・・・どうやら数学の時間だったようだ。
「あ・・・すみません。」
「まったく、授業中に寝ている暇なんてないぞ。周りを見てごらんなさい。」
厳密には寝ていたわけではないのだけど、僕はコクリと頷いて、周りを見た。
・・・・・・・・・
どいつもこいつも机にのめりこむような姿勢で煩わしい筆記音を立てながら猛勉強に勤しんでいた。
「受験は団体戦だ、気を抜かないように。」
「・・・はい。」
またも僕は納得しきっていない表情のまま返事をした。
僕の通う学校は有数の進学校。多くの生徒がトップクラスの大学に行くために日々の勉強をこなしている状況だった。少なくとも僕は除くが。
僕は自分のノートに目を落とす。授業の最初に書いた本時の内容と、その下から始まる僕だけの世界を見返した。
黒紫の鎧をまとった悪魔のような戦士と、僕の理想。
二人は荒野で互いの部を競う。そして、悪魔が力を解放し、一撃で仕留めに来た瞬間、更なる力を発揮して僕の理想が勝利する。
完璧なシナリオだ。
僕は机に向かって一人満足な表情で恍惚としていた。
僕は学力が高いわけではない。この進学校でも中の下、いやもしかしたら下のレベルかもしれない。入学することは出来たが、モチベーションがない今現在、落ちこぼれに変わりつつあることは確かだった。
妄想は、僕のオアシスだった。
今度はバレないように、下を向いたまま、その世界に入り込んでしまわないように。
僕はまた世界を作り出した。
妄想狂の僕でも世界は変えられる!? そこらへんの社会人 @cider_mituo
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