第41話

 どのくらい眠っていたのだろうか。レオポルドとの戦いの後、シバは倒れるように眠りに落ちた。徐々に意識がはっきりしてくる中で後頭部にいつもと違った感覚がある。頭が沈んでいくような感覚の枕とは異なっているのだ。

 

(なんだ、この弾力があって俺の頭を包み込むような枕の感覚とは違ってプルンとはね返すこの感じ、それに、なんかいい匂いも、)

 

 だが突如息が苦しくなるのを感じた。

 

(い、息が、苦しい、何か顔に乗ってるのか!?)

 

 何かに押しつぶされるような感覚にシバは苦しめられた。その正体を確認しようと恐る恐る目を開けたが暗くて何も見えなかった。


(うわっ、くらっ、あー、なるほど、まだ夢の中なのか、よくある夢から覚めたと思ったらまだ夢だったみたいなやつだ。この苦しいのも夢の中かよ、死ぬかと思ったわ、)


(、、、ん?)


(、、、、あ、あれ?)


(い、息が、、)


(死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!やばっ!息がっ!これ絶対夢じゃないやつだ!)


 たまらずシバはおそらく自身の顔を覆っているであろう物体をどかしどうにか気道を確保しようと腕を伸ばしそれをつかんだ。


ムニュ、


「ぷはぁー!死ぬかと思ったぁ!」

 

 一応息はできるようになったがそれ以上にまた別の感覚にシバは侵された。

 

(ムニュ?、、、なんかこの柔らかい感じ、どこかで?)

 

 以前感じたことがあるような感触が手から伝わり何であったかを思い出すように何度も揉んでみた。


「ひゃ、っあ!、、、ぁあ、はっ、、やめっ、し、少年っ、だ、、め、、ァ、、」


(んんん!?何かまずい声を聞いたような、それにこの感触と少年って、、)

 

 シバは何かに気が付いたようで手を止めて腕を下ろした。ゆっくりと体を起こし恐る恐る後ろを向いた。


 そこには俯き頬を桃色に上気させ恍惚となっている様子のマーニがいた。若干息も上がっていた。シバは言葉が出ない。さらにマーニの服は胸元がやや乱れていた。


 ふぅーと一息つき乱れた服を整えたマーニは視線を上げシバを見つめた。


「、、激しすぎだよ、」


「ハハハ、、、」

 

 すみませんと一言だけ言葉を残し二人とも黙り込んでしまった。


「もう大丈夫だよ、」

 

 最初に口を開いたのはマーニだった。もちろんシバはマーニから話しかけられなかったら何も言うつもりはなかった、今の自分に言葉を発する資格、権利はないと思ってるのだ。さらにマーニは続けた。

 

「それになかなか起きないシバに悪戯しようとしてたらやりすぎちゃったみたいだし、」

 

「え、、じゃあ、あれってわざとだったんですか?」

 

「そうだよ、普通に膝枕しただけじゃ少年の顔はつぶされないよ~、牛じゃあるまいし、」

 

「牛って?あ、いやいや!確かにマーニさんはスタイルいいですけどそういうことではなくてですね、とにかく死ぬかと思ったんですよ!」


 少しムッとしたようにシバは言った。

 

「ごめんごめん、ついね、あと少年私のこといつもそういう目で見てるんだぁ」

 

「なっ!んなわけないでしょう!」

 

 またいつものマーニのシバをからかう時の笑みが見え隠れしている。

 

「まあまあ、それよりレオポルドは完全に殺したのね?」

 

「いや、それが、、」

 

 シバは中心核を破壊し亡骸から出てきた光と声についてマーニに伝えた。

 

「なるほどね、結局あいつが何なのか謎が深まったって感じだね、今は考えるだけ無駄かな、」

 

「そうですね、それより昨日から帰らずにいるからアイ怒ってるだろうなぁ、ついでにエイミーも、」

 

「アイちゃんは知らないけどエイミーちゃんはきっとそうだろうね~」

 

「じゃ、急いで帰りましょう、」

 

「うん、帰ろ~、」」

 

 マーニはニヤッと笑いながら言い二人はベルカの宿屋に向かった。

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