第39話

「はあああああああ!」


 バチバチと全身を包んでいるオーラから稲妻状の火花が煌めく。魔力は吸収されオーラは一瞬消えるがすぐにまたオーラを纏う。


「なっ!?一気にこんなに!」


「はあああああああ!」


 さらにシバの纏うオーラは殺気立つように激しさを増す。大瀑布のごとく流れ出るオーラはもはや吸収されても消えることはなくなった。


「ま、待て!そんなにやったら、、」


 徐々に膨張していく拘束器は今にも破裂しそうだ。


「おおおおおおおお!」


 突然許容量を超えた拘束器はシバの魔力を抑えることができなくなり爆発した。


「ば、ばかな、、」

 

 レオポルドは呆気にとられていた。まさか、拘束器の許容量を超えるとはと。だが、レオポルドはあることに気が付いた。シバの姿が見当たらないのだ。先ほどの爆発に巻き込まれたのか?と一瞬思ったがすぐに否定する。


「こっちだ、」


 背後から聞こえる声をシバのものであると認識した時にはすでに遅かった。


バチバチバチー!


 レオポルドの全身を強力な電気が駆け巡った。


「があああああああ!」


 シバは両手の10本の指先に周囲に放電している光点を生成しレオポルドの背中に押し付けたのだ。シバの体は所々傷がある。さすがに自身の魔力をもろに食らったのだ、無傷とはいかなかった。


 感電し痙攣しているレオポルドに間髪入れずシバは手刀に剣を形作ったオーラを生成しレオポルドの右腕を切断した。鮮血が勢いよく噴出した。だが、当の本人は顔を歪めるがどこか余裕の表情を見せている。


「い、言っただろう、私は中心核さえ破壊されなければ何度でも再生が可能だ、、と?」


 切断面からブクブクと再生が始まるがなぜか先程とは異なりなかなか肥大せず再生されない。


「な、なぜだ!?再生が、」

 

「そりゃ、感電して細胞が壊死してるからな、壊死してる細胞がある程度あればその分再生は遅くなると思ったがどうやらその通りだったようだな。」


 通常人間は高電圧で感電するとその部位の体細胞は壊死してしまうという。壊死した細胞は最終的に免疫機能により除かれその細胞が構成していた組織の一部が再生し補うが一般的に壊死した部位は機能しない。


 切断された右腕の切断面は黒く変色し再生する様子はなかった。さらに両足の先も黒く変色してきている。徐々に壊死に伴う腐敗が進行しているのだ。

 

「そこ早く切らないとその内死ぬよな、お前にはまだ死なれたくないからな、助けてやるよ、」

 

 黒く変色している両足首を見ながらシバは腐敗の進んでいるレオポルドの両足を切断した。しかしすでに腐敗は切断面よりも高い位置まで進行しており続けて太腿まで切断した。腕も同様に前腕、上腕と順番に切断を繰り返した。

 

「肩や股まで壊死が進行してるんだその内中心核も壊死してお前も死ぬな、すまないな、助けてやれなくて、」

 

 レオポルドはただただシバを睨みつけることしかできなかっ。

 

「お前がそんな目で見るなよ、」

 

 シバはこれまで抑えていた枷が外れたように感情的になる。

 

「お前らが亜人たちにやってきたことだろ!お前は亜人たちに価値がないと言った、あいつらがゴミだと、ゴミ以下であると、ふざけるなっ!!必死に生きているあいつらに価値がないはずがないだろうがっ!!確かにあいつらの衣服や髪はきれいだとは言えない、けどあいつらは命ある限り必死に生きてんだよ!それだけで価値はあるしきれいなんだ!!」

 

 シバが感情をあらわにしたがレオポルドには何も響かなかったようだ。ただ俯き黙っている。だがふと顔を上げシバを見上げる。その表情は下卑た笑みを浮かべている。


「ははははは、なんとでも言え、どうせ私の体はもう腐敗が進行し機能停止するんだ、だが確かに亜人にも価値はあったのかもしれないな、、金になる商品としてのな!!」


 反射的に体が動いていた。


 オーラの手刀がレオポルドの中心核に突き刺さっていた。


 シバの目はただ黒く冷酷だった。


 レオポルドの体はドロッと溶けるように崩れた。

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