第38話

 その肉片は一定の割合で拍動するように膨張したり縮んだりしながら徐々に肥大していっていた。やがてその肉片は拍動しながら形を変え人型になった。そしてレオポルドは肉片から再生した。


「、、お前、」

 

「死んだと思って油断したな、お前のあの巨大な魔弾に飲み込まれる前に体の一部を切り離したんだよ、」

 

「いや、お前、」

 

 シバの言葉を遮るようにレオポルドは高らかに言う。

 

「私は体の中にある中心核さえ破壊されなかったら何度でも再生するのだ!だから私はお前にかなわなくても負けることはないのだ!!」

 

「それはわかったから、まず服ぐらい着ろよ、気持ち悪いな、」

 

 嬉々として高らかに叫ぶ裸の中年の男にシバは汚物でも見るような視線を向けながら言った。しかし、レオポルドは聞く耳を持った様子もなく続けた。

 

「その拘束器具は対象者の魔力を吸収して魔法を使えない状態にする物だ、魔力も吸収出来て拘束、捕縛できる、まさに一石二鳥の代物だ、」

 

 シバは確かに魔力を吸収されている感覚があった。さらに魔法を発動させようとしたがその効果はない。さらにやや強く魔力を込めても一瞬だけ魔法が発動されるだけですぐにその効果は消えてしまった。

 

「お前の存在は危険だが思わぬ収穫だ、お前の魔力ならいい素材になる、」

 

 レオポルドは遠隔で接続されているであろう手元の計測器を見た。目盛りが付いており吸収した魔力量が表示されるようだ。さらに以前アイに見せてもらった魔力を計測する道具に似た物も手にしている。


 だがそれまで意気揚々としていたレオポルドであったが手元の二つの計測器を見て期待が大きく外れたのか動揺が隠せていない。

 

「何だ、この数値、保有魔力量10以下だと!?」

 

 シバの魔力量は10以下の目盛りを指していたのだ。レオポルドは驚愕の事実であるようだがシバからしてみたら当然のことだった。なぜならシバは半魔族となっているからだ。魔族としての負の魔力は底が計り知れないが本来人間であったシバの正の魔力は10以下なのだ。加えてレオポルドの使用している計測器は人間用の正の魔力しか検知できないものだった。

 

「なぜだ、しかし、あの魔法は一体!?はっ!ま、まさか、お、お前、」

 

 レオポルドは何か気づいたかと思うと空中の魔法陣から別の計測器を取り出し拘束器に接続した。その計測器を見て先程とはまた違った様子で驚愕した。計測器の指標を指し示す針は振り切れグルグルと高速で回転していたのだ。

 

「お前は、魔族、なのか!?いや、だが魔族が保有しているはずがない正の魔力も検知されている、お前は一体、?」

 

 レオポルドは自身の推測が確信に変わったが同時に新たな疑問が沸き上がっていた。

 

「無能魔法士と罵られ続けてきた元人間だが?訳あって俺の体には魔族の血が流れているが、そんなことより魔力が必要なんだろ、」

 

 するとシバの体からはうっすらと黒い光が見られた。


「なら、好きなだけくれてやる、」


 直後シバはオーラに包まれ周囲に魔力を開放させた。


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