第36話
先に動いたのはレオポルドであった。
剣を出さずに両手に魔法陣を展開し眩い黄色い光の魔弾を放出した。間髪入れずに次々と魔弾を放つ。
シバが放たれた魔弾を避けることはなかった。避ける仕草も見せないシバにレオポルドは力任せにさらに魔弾を放つ。煙が立ち込め肩で息をしながらレオポルドは攻撃を止めた。
さすがにここまでやれば無傷では済まないだろうというくらい魔弾を打ち込み避けなかったことを後悔していると思ったレオポルドに焦りはあるものの少しばかりは余裕が見えた。
だがあくまでレオポルド自身が勝手に感じたに過ぎなかった。
煙の中からシバが飛び出し一気にレオポルドとの距離を縮めた。一瞬で懐に入り拳を下から抉るように腹部に突き上げる。
「がはっ!」
身体強化により突き上げられた拳は小さなモーションにも関わらず内臓まで衝撃が届くほど力強かった。
レオポルドは防壁を出すことすらできなかった。戦闘中ではあるがほぼ反射的に腹部を抑えた。真っ直ぐに姿勢が維持できない。視界も揺れ意識が少し朦朧とする。
そんなレオポルドに容赦なくシバは攻撃する。前かがみになっていたレオポルドの顎下を真上に勢いよく蹴り上げた。
勢いのままレオポルドの体は吹き飛ぶ。シバもやや斜め後ろに上昇しレオポルドを追い越した。
最高点に達すると両足を畳み右足を突き出しレオポルドめがけ急降下する。蹴り足からは火焔が迸り紅蓮の炎を纏ったシバの体は槍のごとくレオポルドに突き刺ささった。
「ぐふっ!」
そのまま下降し地面に踏みつける形になった。
ズドーンッ!!
勢いと衝撃で辺りは吹き飛び地面はくぼみクレーターが形成された。レオポルドに抵抗する余地はなかった。
シバは再び上昇し弓を構えるような姿勢で地面にうずくまるレオポルドに手を向け魔法陣を展開した。黒い粒子が集まり赤黒い魔弾が手元でうごめくように生成される。
魔法陣は一つではなかった。五つの魔法陣が同じ間隔でレオポルドに向かって連なっているのだ。
だが、レオポルドの目はまだ死んではいなかった。あれほどの攻撃を受けてもまだ立ち上がっていた。空中に魔法陣を展開し剣を抜きだした。そして自ら懐刀で親指を自傷した。
「!?、何だ?」
レオポルドの行動に疑問を抱くシバ。
レオポルドは滴る血液を擦り付けるようにし剣身をなぞった。同時に剣身を軸に螺旋状に剣先に向かって赤く細いオーラが絡みついた。
するとレオポルドの剣は赤く閃光し巨大なオーラの剣となった。
「かの者を打ち滅ぼせ!シフォス・ミ・フロガ!!」
そう叫びレオポルドは炎の大剣を頭上に掲げ力任せに振り下ろした。
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