第7話 地獄のダイエットの終わり



毎日の様にところ構わず腹痛が襲い

それを我慢するという

まさに地獄の下剤ダイエット。


すぐにトイレに行けない場面も計算し

サニタリーナプキンを充て

腹痛を我慢し

何とか1日をやり過ごす日々。


できるだけ次の日の授業中に

影響が出ないように

〇錠飲めば大体これくらいの時間に

効き始める というのも計算して

学校が終わった後の夜食の

食前に服用。


それでも

その時間に出しきれなかったソレが

後々になって効き始め、

下着に移ってしまうこともあり

ナプキンと下着の替えは欠かせなかった。



下剤を常に使うようになった私は

もうとっくに正常の用量では

下剤の効果を発揮できない腸になっていた。



……が、そんなある日の事。




いつものように腹痛が襲いかかり

トイレへ駆け込んで用を足した時


ふとトイレを流そうと

便座を覗くと

軽く出血している事に気づく。


もちろん

月経ではない。

明らかにそれは自分の

腸から出たもので間違いなかった。



怖いという気持ちは勿論あった。

それを辞めるという

選択肢はまずなかった。

今思えばこれは

自分を抑圧する両親への

僅かな対抗だったのかもしれない。




そしてほぼ毎日 使っていた

地獄のピンクのお薬は

ある事を

気に辞めざる負えない

状況へ追いやられる。


それは、既に何回もトイレに行く私を

父が薄々怪しんでいたのを私も勘づいていたからだ。


そんな中

家族とのドライブ中に

腹痛に襲われた私は

腹痛に耐えられず

車内で便を失禁してしまった。



ーーやばい。。



勿論失禁といっても

少しだけ。


直ぐにお腹を曲げてぐっと耐えた。



ナプキンも充てていたし、大丈夫。


あと10分ほどで家に到着だ。

トイレに駆け込んで

履き替えよう。




自宅に到着すると同時に

車のドアを開け、

自宅のトイレにすぐさま駆け込んだ。


けど、水のような便だった為か

ソレはスカートに少し

移ってしまっていたのを

父が見ていた。


早速

母、父、私 と

狭い一室で

家族会議が始まった。


「しょっちゅう、トイレに行くからおかしいなぁとは思ってたんや」



父親が 頭を抱えて

はぁ、、と 深いため息をつく。




「下剤なんて 何のために飲んでたん?」



母親もここぞとばかりに私に質問攻めを始めた。



そもそも、ダイエットをしたいといっても

聞く耳を持ってくれなかったのはあんたらやろ。

言ってやりたい事はもう喉元まで

上がってきていたが

それをぐっと飲み込んだ。


「カロリーが気になったし、前にも言ったけどダイエットしたかった。」


「そんなん!食事制限したいから言うたらいいやん!」


それを言っても

私の皿へ盛り続け

残すと言ったら

不機嫌になるのはあんたやろ。

母へ対しての苛立ちが込み上げた。



「だからって下剤使ったんか?」



お前の部屋に隠してる

下剤みな持ってこい。


そう言って 私から下剤を

取り上げた父が

自慢げにこう告げ始めた。


「いいか?よー聞けよ。食べたものは胃で吸収されるんや、だから下剤なんか使っても一緒なんや!その無い頭でよぅ考えろ!」


……いったいこの人は何を言ってるんだ?

胃で吸収してしまう?……消化器の先生が聞けば間違いなく間違いを指摘されるだろう。


この人は

知らないことをさも知ってるかのように適当な断言する癖がある。

それは昔から私も知っていた。


母のコロコロと変わる断言と

あんたらがそこまで追いやったんだろう

と言ってやりたい気持ち

今まで両親に言われた、された

理不尽なことどが全て

走馬灯のように頭をグルグル駆け巡る。


カッと頭に血が登り

今まではぐっと飲み込んでいたが

その時は堪らず 父に間違いの指摘をした。


「いや、胃は消化したあと小腸で吸収されるんよ。勿論本来大腸で作用する下剤だけど多少は効果あるんじゃないかって…下剤は気休めかもやけど それでも飲まないよりは……」


言いかけた所で

父が拳でテーブルを叩いた。


「うるさい黙れ!頭悪いなお前は!」


指摘された事に腹が立ったのだろう。

確かに 私のしている事は

間違いな事だってわかってる。

ただ、そこまでしなければならないように

追い詰めたのも あんた達やろ。


ダイエットをしたいといっても聞く耳を持たない両親。


食材をとりあえず

皿に盛ればいいと

勘違いして

それを残すと発狂する母親。


自分の都合だけで

年頃になった娘に

自炊もさせてくれない母親。



食べ物を残すと言う事を嫌う両親。



このダイエットの件だけじゃない。

子供の時から出ていた音声と運動性チック症の私を

「気持ち悪い声出すな!お前は頭おかしいンか」と 罵った父親。


怒り狂うと手をつけられない上に暴力を振るい「お前なんか要らんねん!生きてる価値ない!死ね!」と口癖のように暴言を吐く母親。



「お前みたいな学力なしの頭の悪いできそこないはスパルタの施設ぶっ込んでやる!殴られるんやぞ!そこでいたぶられたらええわ」と、小学生の私に脅し続けた父。


前に「〇〇してくれたらいいのに機転きかへんな!」っと怒鳴られたからやって置いたら今度は「勝手に〇〇触ったな!触らんといてよ!」っと怒鳴り散らかし前回言ってた事と必ず言うことが変わるダブルスタンダードな母親。


勉強科で成績がよかった妹と昔から成績が悪い私を比べる父親。


理不尽な八つ当たりを続けてきた母親。


学校での虐めを相談した所で聞く耳すら持ってくれなかった両親に この人達には何を相談しても無駄だと思っていた。


学校でも自宅でも居場所がなかった。

そんな環境を自分達で作っておいて

母方のおばさんの家に頻繁に泊り出すようになった私を お前は逃げてる といった父親。


ずっと堪えて自分の意見を言えず 親の顔色を伺ってビクビクしていた自分。



言い出せばキリがないほど

今までから過去の記憶が頭の中をぐるぐると回り続けた。


私の言い分なんて何一つ聞いてくれないやないか。


言葉のやり場がない私は更に苛立ちを覚えた。



……下剤がダメなら。。

吐けるようになればいいやんね?




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