第5話 学院とはなんぞや。
1日休んで今日は学院。
「おはよう。マルタ」
「おはよう。アリシア昨日どうしたの?」
「あはは…いやー。ちょっとお家に穴が空いちゃって」
「はあ?」
「うーん?隕石っポイものが降ってきたというか」
「何それ!一大事じゃない!アリシアは無事…なのよね?」
「まあ、そうね。この通りピンピンしてるわ」
「御家族は?皆さん無事だったの?」
「ええ、ありがとう皆無事よ。それに穴が空いたのって私の部屋だし」
「そうなの!?それこそ良く無事だったわね」
「まあ、運良くバルコニーに居たからね。ベッドで寝てたら即死だったわね、あれは」
「ちょっと止めてよ!恐ろしい」
「ごめんごめん。でも本当に運が良かったよ」
〈済まなかったわね。気付いたら重力圏内に嵌っていたのよ〉
「でも本当に良かった」
「心配してくれてありがとうねマルタ。もう通常通りだから」
「うん」
ガラガラガラ
「皆さん席に戻りなさい。始めるわよ」
先生が出席を取ってまた何時もの日常が始まる。
そんな風に思っていた時期が私にもありました。
何コレ?
どうなってるの?
授業を聞いて学ぼうとした瞬間にあらゆる情報が洪水の様に襲ってきて、こんなの処理出来るはずないのにそんな考えが過ぎっているうちに馴染んでしまった。
世界中の情報や仕組み、制御方式や計算式が我が物顔で周りに存在し、まるで私はネットの海に放り込まれた様。
でもそんな乱雑な様で理路整然とした全てが理解出来る。
こんなの普通の人が体験したら絶対に狂人か廃人レベルだ。
今も先生が授業を進めているけど、話している事が基礎過ぎてつまらな過ぎる。
もしかして私は、この学院という学び舎から学ぶ事が無くなってしまったのではないだろうか。
どうしよう時間は有限なのに無駄なこの時間が苦痛でしかない。
私の頭の中で今すぐ行動しないと無駄になってしまう情報がチラチラと掠める。
「先生!すみません。少し気分が悪いので保健室に行ってもよろしいでしょうか」
「ん?ガーネットか。まだ体調が万全ではなかったか。昨日の話は御家族からも聞いている。辛いなら早退してもいいぞ」
「申し訳ありません。ありがとうございます。お言葉に甘えます」
「そうか。御家族に迎えに来て貰えそうか?」
「はい。連絡は自分で出来ますので迎えが来るまで保健室で大人しくしております」
「ああ、それが良いだろう。誰かガーネットを保健室まで連れていってやれ」
「先生!私が付き添います」
「じゃあキャンベル頼んだぞ」
「はい!アリシア立てる?」
「ありがとうマルタ」
ガラガラガラ
教室を出て保健室までの道中マルタが凄く心配してくれたけれど理由が理由だけにマルタに対する罪悪感が半端ない。
後でマルタの勉強を見てあげようと決心する。
自宅に連絡して迎えに来てもらうよう携帯でお願いした。
家は比較的裕福な家庭なのでお抱えの運転手がいるのだ。
と言ってもここの学院に通っている生徒は大概、裕福なご家庭ではあるのだけれど。
保健室の先生にマルタが私の状態を軽く説明しベッドで休ませて欲しいと頼むと直ぐに了承された。
大人しくベッドに横になると、それを確認した後「大人しく寝てなさいよ」と、そう言ってマルタは教室に戻っていった。
私は間仕切りのカーテンを引いて貰った後、ベッドの中で直ぐに携帯を取り出し、とあるアプリをダウンロードして私の口座からほぼ全額を投資した。
ホッと一息ついて携帯を鞄に仕舞う。
これで来月には資産が3倍になる事だろう。その資金で次はあれの買い占めをしないと。
ヤバいなこれ。結構綱渡りなパズルゲームの様で嵌りそう。
目標は卒業までの3年で総資産60兆ルーベンね。
それだけあれば、私の夢の実現に手が届く。
嗚呼、楽しみだわ。
そうだ、マルタも誘ってみようかな。
そんな思いを馳せながらアリシアはベッドで目を瞑った。
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