第13話 帰り道

 誕生日会も終わり、今は武宮さんの家を出て家へと帰っている途中。最寄りの駅までは慎也と秋風も一緒に帰っていた。


「今更なんだけど、澪ちゃん達って和哉くんと同じ中学校だったんだよね?」


「うん。そうだよ」


「電車で通ってるってことは実家暮らしなの?」


「そりゃ、俺達はまだ高校生だしな。一人暮らしなんてしてる和哉の方がおかしいんだよ」


 慎也は俺とみゆが一緒に住んでいることを知っているが、今は秋風がいるので俺が一人暮らしをしているということで話を進めてくれる。慎也は普段はお馬鹿な発言が多々あるが、こういったところは意外としっかりしてくれているのだ。


「それって、家から学校まですごく遠いんじゃないの?」


「まぁ、確かに片道だけで一時間以上かかるよ」


「俺もかかるなぁ」


「大変そうだね……」


「まぁ、確かに入学したばかりの頃はかなり大変だったよ……」


「でもまぁ、すぐに慣れたけどな」


「慎也は入学したての頃は遅刻ばっかしてたけどな」


「うるせぇ! 今はしてないだろ!」


 けど、改めて考えると普通にすごいことだよな。特に秋風は俺と一緒に朝からバイトにしてるし.........。そう言えば、朝からのバイトの日は始発に乗ってギリギリとか言っていたような気もする。俺には絶対に無理だな.........。


「どうして二人とも地元の高校に通わなかったの?」


「ん? 俺は和哉がここの高校にするって言うからだぞ?」


「本当に仲良しなんだね.........」


「そんな理由だったのかお前.........」


 まさか、そんな理由で選んでいたとは俺も知らなかった。中学生の頃にお前と同じ高校を受験すると慎也に言われた時は「そうか」くらいにしか思ってなかったから、理由が理由過ぎて衝撃だ.........。


「澪ちゃんは?」


「私は.........なんとなく? みたいな? あははは」


 秋風はそう言って何かを誤魔化すように笑っていた。みゆは何か言いたげな顔をしていたが、すぐに何事も無かったかのように振舞っていた。

 俺はというと、この話をしていて何か大事なことを思い出しそうな気がしているんだが、それが何だか思い出すことができずに悶々としていた。


「あっ、澪ちゃんは大倉唯華さんって知ってる?」


「!? う、うん.........。知ってるよ?」

 

「そうなんだ! 大倉さんと私と和哉くんと伊織ちゃんが修学旅行の班が同じなんだ!」


「楽しそうだね.........。あっ、私こっちだから」


「ん? 駅はそっちじゃ」


「こっちの方が近道なんだよ! 加賀くんも行くよ! それじゃあ、二人ともまたね!」


 慎也が言い切るよりも先に秋風に慎也は背負っていたリュックサックを掴まれて引っ張られていく。


「え? ちょっ、おい、秋風? 何だかよく分からんが和哉と白夢さん! また明日!」


「う、うん。またね?」


 何故だか秋風がこの場から逃げるように慎也を連れて行ってしまった。どうしたんだ秋風のやつ? そういえば、大倉さんの名前が出た時から様子がおかしかったような.........ん? 秋風と大倉さん?


「あっ、そうだ!」


「!? .........急にどうしたの和哉くん?」


 そうだ。思い出した。前に慎也が言っていた通り、俺は大倉さんと中学三年の時に話したことがあったのだ。

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