第4話 出会い2
「Excuse me?(ちょっと良いですか?)」
すると、狙い通り足を止めこちらへ振り向く-。
「あぁ、ニホンゴで大丈夫ですよ。」
…思いの外流暢な日本語が帰ってきた。
(肩透かしを食らった気分だけど、日本語が通じるならそれに越したことはないな。)
「助かります。」
「いえ。それで、何か御用かな?」
「あの、この付近で〇〇っていうラーメン屋があるって聞いたんですけど、どこか分かりませんか?」
そう言って、スマホの案内アプリの画面を見せる。
もちろん、とっさに検索を掛けただけの適当な店である。
「あぁ、それなら、アッチに向かって行って2個目のクロスを左に行けばすぐ分かるよ。」
「なるほど。分かりました。ありがとうございます。」
「ノープロブレム。ところで、この国のニンゲンじゃないワタシに聞いてくるとは珍しいね。初めてだよ、この国で道案内したのは。」
そう言ってわざと少し驚いた表情を見せてくれる。
そして当然の疑問をぶつけてくる。
「どうしてワタシなんだい?確かに、今は目の前にはワタシしかいなかった。でも、ワタシじゃなければならない理由も無かったよね。なんなら、他の人に聞く方法もあったはずだ…。」
あと5秒もすれば変わるとはいえ、自分から時間を稼ぎに来てくれるのは助かるので、質問に答えることにする。
「…近くに人が居なかったってのもありますね。あとは、迷いなく歩いていたので、この周辺なら知ってるかなと。」
そう言うと、不思議そうな顔をする。
「ソレだけで聞こうと思うには少し理由がー」
そこまで言ったところで、少し先で轟音が響く。目を向けると、そこにトラックが歩道に突っ込んでいた。
(なるほどね。あのままならトラックに轢かれてたわけか。さて、無事に死を回避させれたしもう用はないな。)
そう思い、その場をこっそり離れようと背を向け歩き出したところで、先程の外国人に声を掛けられた。
「ちょっと待ってくれ!」
目の前で死にそうな人が居たから助けはしたものの、相手に
とはいえ、流石に声を掛けられて無視出来るほど肝が座ってるわけでもないので、振り向いて答える。
「どうしましたかーうわっ!?」
言い切る間もなく、外国人特有のハグをされた。…これが同年代の女子ならと内心思ったのは秘密だ。
「アリガトウ!!キミが話しかけてこなければ、ボクはあのトラックに巻き込まれて、今頃あの世で先祖と挨拶してたとこだったよ!!」
「い、いえ!そんなことはー」
「あるよ!いや、例えキミが無いと言ってもボクの気持ちが治まらない!何かお礼を…」
「そこまでしてもらうほどの事じゃ!?」
「全く!ニホンジンの謙虚さは美徳だけど、こんな時まで発揮しなくて良いんだよ!あ、そう言えば、キミ、ラーメン屋を聞きたがってたってことは、これからディナーだね?」
(この人を引き止める為とはいえ、まさかあの嘘がこんなところで首を絞めてくるなんて…。)
頭上のマークを見ずとも分かる嫌な予感に、思わず顔を顰めたくなったが素直に認めることにする。
「…はい。そのつもりでしたが、それがどうしましたか?」
「ならちょうど良い!ウチにおいでよ!今日のお礼にディナーを振る舞おう!ワタシはボルドー。ボルドー・ジェイ・ハートだ!」
外国人特有の強引さに、押し切られ、結局着いていくことになった僕に出来たことは、お互いの頭上を見て何も起きそうにないことを確認することだけだった。
そこからタクシーに乗り、軽い自己紹介をお互いに済ませた後、到着した場所は学園から電車で1駅行ったところに建っている高層マンションだった。
「ここが…ボルドーさんの家ですか?」
「そうだよ!今は仕事でコッチに滞在してるから、セカンドハウスみたいなものだけどね!」
そう言って豪快に笑いながら、今更ながらに名前を教えてもらう。
「ぜひ、ゆっくりしていってくれ!」
「では、お邪魔することにします。」
そして、エレベーターに乗ったところでボルドーさんが口を開く。
「ソータ!今日は声掛けてくれてアリガトウ!おかげで轢かれずに済んだよ!」
「いえ、だから偶然…押し問答になりそうなので、素直に受け取っておきます。」
「そう!ソレで良いんだ!ワタシが助かった。それに感謝してる。ソレが全てさ!ところで、ニホンジンは童顔だから分かりづらいけど、その制服ってことは
「知ってるんですか?」
「あぁ!ヒラサワとは知り合いだからね!」
「学園長ともお知り合いなんですか。でも、それが何か…?」
「ん?いや、ワタシの仕事の関係で、
「なるほど。それなら星守は良い選択だと思います。」
「だろう?それに、今日キミに会えたことでより確信したよ!こんな良い生徒が居るんだ!通わせない選択肢は無いね!それに、ソータはファーストグレードだろ?だったらムスメと同い年だね!入学したら仲良くしてくれると助かるよ!」
「え、えぇ。僕は構いませんが、お互い知り合いでもないのに、そちらは平気なんでしょうか?」
「だったら、今日友達になれば良いのさ!まだ入学はしてないから、毎日ウチで過ごしてて、ムスメも退屈してるだろうしね!」
「なるほど…。」
(このフレンドリーさは流石外国人って感じだな…。さて、どんな娘なんだろう…。あんまり気の強い娘じゃないと良いけど…。)
そう考えながら、ドアまでやって来た。そして、ボルドーさんが鍵を開け、今帰ったと声を掛けると、中から可愛らしい声が聞こえてきた。
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