Case4 親友


「か〜つやっ!」

「……何だよ朔人」


 馴れ馴れしく克也と肩を組んできたこの男は、永川朔人。自称克也の親友だ。


 よく分からないタイミングで克也に絡んできて、適当に克也のことをおちょくって帰っていく。克也にとっては迷惑な存在だ。


(……まあ、朔人のおかげで暇な時間も減るから助かっているんだがな)


 そんなことを考えながらも、朔人に向けるのは迷惑そうな顔。実際克也は迷惑に感じているので作っている顔という訳では無いのだが。


「お前〜また今朝も石橋さんと喧嘩したんだってな」


 そう、今朝登校後、美羽とまた軽く言い争いになったのだ。

 理由は、美羽がまだ話し足りないというのを克也が逃げるように断ったから。

 この理由による言い合いも、もはや日常茶飯事と化しているが。


「……別に、喧嘩してる訳じゃない」


 これは、克也からしたら事実。

 恥ずかしいために美羽と距離を取っているだけであり、少なくとも本人は喧嘩しているつもりは無い。


「ま、なんでもいいんだけどさ。でも、折角彼女持ちなんだから、別れることの無いようにしろよ? それこそ、俺と秋乃くらい仲良くすればその心配しなくていいし」

「お前の惚気は聞き飽きた」

「いーや、まだ克也は理解できてないだろ。イチャつき方のつき方の手本見せてやるから、ちゃんと見ろよ―――おーい、秋乃〜! ちょっと来いよ!」


 朔人が大声で呼ぶと、一人の小柄な少女がトコトコとやって来た。


「……朔、どうした?」

「いや、克也と秋乃は可愛いよなって話してたんよ」

「話してない」


 サラッと嘘をつく朔人。

 それに巻き込まれた克也は、朔人の腹に軽くパンチを入れる。もちろん、痛がる様子もないが。


 だが秋乃は、一瞬にして顔を真っ赤に染まらせる。


「……そ、それなら、朔人だって、か、かっこいい」

「……秋乃」

「……朔人」


(……俺は何を見せられてるんだよ)


 顔を赤くしながら見つめ合う見たりを前に、呆れる克也。


 それと同時に、自分と美羽だって、などと対抗心を燃やしてしまい、想像の中で美羽とイチャついたことにより克也は勝手に一人で赤面した。


 克也は、自分がもっと素直に美羽に甘えられれば、目の前の二人よりもイチャつくことが出来ることを理解はしている。だが、それと実行可能かは別。

 恥ずかしいがために、あのような冷たい行動を取っているのだから。


「……克也君?」


 と、そこに、美羽がやって来た。


「……んだよ」

「私とおしゃべりするのは避けるのに、この人達とはしゃべるの?」

「……何でもいいだろ」

「何でも良くないよ! だって、私は克也君の彼女なんだよ? 友達と私、どっちが大事なの?」


 迫力のある顔で迫ってくる美羽。


(……んな顔で聞かれたら、答えなんて決まっちまうだろうが。つか、そもそも彼女と比べられる程こいつらと仲良くないし)


 そして、克也は口を開いた。


「……そんなん、美羽に決まってんだろ。わざわざ言わせんな」

「えっ、克也君……」


 徐々に、美羽の目に涙が浮かんでくる。

 何かミスでもしたか、と克也は心配になったが、もちろん杞憂。


「克也君っ!」

「ちょ、美羽、学校っ! 人前っ!」


 当然のように美羽は克也に飛びつき、克也は全力で抱きしめられた。


「……なんだ、仲良いいみたいだな」

「みたい」


 完全に取り残された二人がボソッと呟くのも、この状況では無理がなかっただろう。







☆あとがき

裏話的なものになりますが、新キャラの二人はそれぞれ、「デレデレ」、「クーデレ」をイメージして書きました。朔人がデレデレ、秋乃がクーデレです。


それと、皆様にちょっとしたお願いがあります。

恥ずかしながらこういう一話完結の日常ものを書いた経験がないために、早くもネタ切れを起こしそうになってきました。

なので、「二人のこういうシーンが読みたい!」などの希望があれば、是非コメントして頂けると助かります。

どうぞ、よろしくお願いします。

あとがき失礼しました。

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ヤンデレ彼女とツンデレ彼氏 香珠樹 @Kazuki453

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