第9話 VS 双剣のソロ

壇上に相手が上がってくる。


その男はまた中世の物語に出てきそう

格好をしている。


羽のついたハットを被り燕尾服に、

長いブーツ、何となく偉そうに見える髭を

生やしている。


そして腰には二本の剣をさしている


「双剣のソロだ!」


「あのSランクヒーローの双剣のソロか!」


双剣のソロというのかあいつは。


たが観客からは別の呼びなが聞こえてくる。


「ソロの双剣じゃねぇか。」


「あぁあのソロの双剣ね。」


何か可哀想な呼び名が聞こえてくるな。


「トーナメント1回戦最後、Kグループ代表ソロ選手対Lグループ代表勝利選手。」


ここで紹介が入る。


「まずKグループ代表、

圧倒的な強さを誇る優勝候補!

ソロでSランクまで登りつめた男!

高速の双剣捌きで相手を葬りさる

双剣のソロ選手!」


「さぁて私の双剣の餌食に

誰であ〜るかな。」


「続きまして、Lグループ代表、

ここでお終いか!

疑惑が囁かれたLグループ!

さぁSランクヒーロー相手にどうやって戦う

ノーランク、一般人!勝利選手!」


おいおい!俺の紹介おかしくないか!

アンチ臭出まくりだろ。


「あなたが相手ですか。ふぅ•••。

我輩も暇ではないのでな。

棄権したらどうであ〜るかな。」


「いや、棄権はしない。

俺はあんたを倒して勝ち進んで

優勝しないといけない。」


優勝してあのイディナに会わないと。

世界を救うにはそうしないといけないと

あのクソ女神が言っていたからな。


「ハッハ〜!大きくでたね!

我輩も手加減は、出来そうにないからね

悪く思わないでくれであ〜るよ!」


「全力で来てもらってもかまわない。」


ここで終わればそれまでだ。

それに負ける気がしない。


「それならそうさせてもらうであ〜る。

後悔しても知らないであ〜るよ。」


「それでは試合開始!」


「ではさらばであ〜る。」


周りは一瞬で、間合いを詰めてくるように

見えたようだ。


しかし•••。


俺にとってはそこそこのスピードで

しかない。


ソロが近づいてくるのがわかり。


双剣を抜き俺の腹を裂こうとしている。


俺はバックステップでかわす。


「何⁉︎今のをかわすのであ〜るか⁉︎

言ったとおり一撃で仕留めようと

思ったであ〜るが。」


「なめすぎじゃないか。

今の本気じゃなかっただろ?」


明らかに手を抜いてる感じがあった。


「そう言われて〜も、ノーランクに

本気を出そうなんて誰も思わないで

あ〜るからして。」


普通はそう考えるかもしれないが

ノーランク、ノーランクとうるさいな。


ソロがお辞儀し始めた。


「申し訳なかったであ〜る。

殆どの相手が今のでやられてしまう

から〜ね。」


お辞儀を上げた瞬間から一気に空気が変わった。


「なら今度は本当に本気で行きますよ。」


最初から双剣を抜いている。


間合いを詰めてきた、さっきより早い!


双剣がまるで生きてるのか如く

襲いかかってくる。


「シシシシシシシシシシシシシッ!!」


なんとか交わしていく。

少しそれて身体に当たりそうになるが

上手くそらす。


軽くかすったとしても

このワイバーンの鎧は傷ひとつ付かない。

素人の俺でもよくわかる、いい装備だ。


ソロが一旦離れて驚きの表情を見せる。


「君は何者なのかね⁉︎ノーランクの

動きではないであーるよ!」


どいつもこいつもランクランクと•••。


「ノーランク、ノーランクどいつもこいつも

うっさいな!あんたもランクでしか人を

判断出来ないのかよ!そんなことばかり

言っていると足元すくわれるぞ!」


ソロがうつむく。


「そうだ、そうであ〜るな。

申し訳ない。今までの相手の殆どが

私が本気を出す前に散って行った。

いつの間にか自分に枷を掛けていたのかも

しれないであ〜るな。」


ソロがうっすら笑う。


「久しぶりの格上相手の試合であ〜る。

楽しませて頂くとするのであ〜る。」


今度は空気がピリッと肌に刺さる感じがする。

こっからが本当に本番の様だな。


「こい!!!」


間合いを詰めてくる。


スピードはさっきと変わらないが

先程より刃の動きがわからない。


本当の生き物の様に曲がりくねり

襲いかかってくる。


反撃の隙がない。


顔に少しだけ切り傷が出来る。


こっちに来て始めての傷だ。


やはりSランク、いやこのソロと

言う男だからこそここまで手強いのかも

しれないな。


「シシシシシシシシシシシシシシッー!!!」


ソロの猛攻が続く。


一瞬双剣だけが残りソロが消えた。


ソロは足元にいた。


まずい双剣を囮にするとは!


普段なら全然耐えれるが

双剣によるフェイントと

綺麗に膝裏を突かれたので

少しバランスを崩してしまった。


「これならどうであ〜るか!!!!」


そのまま宙に浮いた双剣を掴み

振り下ろされる。


まずい!!


無理矢理、身体を反転する。


「うらぁ!!!!」


そのままソロに蹴りをかます。


「ぐぅ!!!」


舞台ギリギリまでソロが吹き飛ぶ。


「なんて強さであ〜るか•••。

片腕が上がらなくなってしまったよ。」


ソロが腕をプラプラさせている。


「だが私にもプライドがある。

最後に一撃入れて見せるであ〜るよ。」


ソロが片手に剣を構える。


そして何故かお辞儀をする。


「シ!!」


身体を起こしたと思ったら

剣を投げて来た。


動かない方の手に持った剣を

身体の勢いで投げたみたいだ。


一本の剣が先に向かってくる。


しかし、それは見えている。


剣を掴む。


その時⁉︎


「君こそ、足元すくわれると思わないので

あ〜るかね!!!」


今までで一番早い動きで前に詰められた⁉︎


まずい、剣を避けておけばよかった。


ソロは俺が掴んだ剣をもう一方の剣でついた。


「シッ!!」


「ぐぅ!!」


拳に力を入れる!止まれ!


刃が拳の中を傷つけながら進んでくる。


しかし、俺の喉元から一雫の血が垂れた

所て刃は止まった。


その瞬間、ソロは崩れるように片膝をつき

ながら言葉を発した。


「これでも届かないであ〜るか•••。

参った降参であ〜る。」


シーンと一瞬静まりかえるが

偉そうなおっさんが声をあげる。


「しょ、勝者、勝利選手!!!」


「ワーーーーー!!!!!!!」


周りの選手や騎士達からものすごい歓声と驚きの

声が上がる。


「あいつ双剣のソロに勝ちやがった!」


「ノーランクだぞ!あいつ何者だよ!」


単純にこんな、歓声を浴びれば嬉しい。


しかし•••。


Sランク確かに手強わかった。

だが、まだまだ余裕はある。


それにあのレッドと言う男からは

また別の強さが感じとられる。


慢心せずにいこう。


そこに、あの受付嬢がやってくる。


また、嫌味かと思っていたが。


「勝利様、申し訳ありませんでした。

貴方の実力は本物です。ノーランクと

言いますが皆、元々そこから始まっています

ものね。ノーランクから強い人が出てきても

おかしくありません。本当に、本当に

申し訳ありませんでした。」


先程とはうってかわった態度だが

ここまで素直に謝られると。


「もういいよ、そこまで謝らなくても

まぁノーランクなのは変わらないからな。

だが、あんたも言葉には気をつけた方が

いいぞ。いつどこですごい奴や偉い奴に

会うかわからないからな。せっかく可愛い顔

してるんだから。」


急に受付嬢の顔が赤くなる。


「べ、別にあんたにそ、そんなこと

嬉しくないんだから!あ、あんたも

よくみたらいい顔してるじゃない。

わ、私の名前はショコラよ。

べ、別に覚えとかなくていいからね!」


先程とは違い、ムスッとした顔を

少しほころばせ、長い黒髪を

なびかせながらショコラはさって行った。


まぁいい顔してると言われたら

嬉しい•••ってあれ?

なんか引っかかるがまぁいいか。


そこに別の受付嬢がやってくる。


「勝利様申し訳ありませんでした。」


どうしたんだ⁉︎急に⁉︎


「あの子、ショコラは昔、魔族にお兄さんを

殺されているんです。だから、魔族を倒して

くれるヒーローを尊敬していて•••。

なのでふざけてヒーローを名乗っている者に対してものすごく憤りを感じているんです。あの子も悪気はないんです。許してあげて下さい。」


受付嬢が丁寧に頭を下げる。


「あぁ、さっきの丁寧な謝り方みたら

悪気はなかったてのはわかるよ。

だから大丈夫だよ。」


受付嬢は何度も頭を下げながら

去って行った。


人それぞれ事情はあるもんだな。

今度少し話しかけてみるか。


そこにソロが話しかけにやって来た。


「勝利よ、いい試合だったであ〜るぞ。

ついつい本気になって、殺すつもりで

行ったであ〜る。」


おいおい!なんて物騒な。

だが•••。


「Sランクヒーローにそう言ってもらえて

嬉しいよ。そうしないと勝てないと

思ったってことだろ。」


「ハッハ〜。実際勝てなかったであ〜るしね。

そうだ勝利、試合に負けたら私と

パーティを組まないであ〜るか?」


「いや、負けるつもりはないのでな。

遠慮しておくよ。」


「ハッハ〜!大きくでたであ〜るね。

だけど勝利なら、わかってるであ〜るね。

あのレッドって奴は•••。」


ソロもわかっているみたいだな。

奴の得体の知れなさに。


「ああ、だがさっきも言った通り負ける

つもりはない。」


「そこまで、言うならわかったで

あ〜るよ。だが、気持ちが変わったら

いつでも言ってくれであ〜る。

それと•••。」


ソロが何か紙を2枚取り出す。


「我輩がパートナーになりたいと思った

相手に渡してるであ〜る。」


一枚はソロの自画像。

しかもなんか数倍美化されている。


「いつでも寂しくないように

我輩の自画像を持っておくのであ〜る。

いつまでもあなたと一緒であ〜る。」


もう1枚は取り扱い説明書と

書いてある。


1.我輩は双剣より重い物は持てませんし

持ちたくありません。


2.我輩は起床時、おやつの時間は美味しい紅茶が

ないと不機嫌になります。必ず用意して

おいて下さい。


3.我輩は夜しっかり寝ないといけないので

野営はしたくないし、しても夜の見張りは

出来ません。


等色々書いてある。


「必ず読んでいてほしいのであ〜る。

いつかパートナーになった時に重要な

ことであ〜るからな。」


「ふぅ、わかったよ。ソロの双剣。」


お前は一生ソロでやってろ。


ソロは笑顔でヨロヨロしながら

去って行った。


そこに偉そうなおっさんの声が入ってくる。


「続いての試合Bグループ代表、ゲルト•ユーズ選手対Dグループ代表レッド選手。」


丁度よかった。レッドが試合をする。

ここは分析がてら見ておきたい。


ゲルト対レッドの試合が始まった。

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