第7話 和平大使選抜試験

あっちこっちからイダーと声が聞こえる。


やめてくれ。本当に泣きたくなってくる。


「とりあえず、ドルトワーフの爺さんの

所に行こう。」


逃げる様にドルトワーフの爺さんの所に

行くことにした。


「おお、勝利やっときたのう!出来上がって

おるぞ!」


どんなのが出来あがっているのか楽しみだ。

少し寂しいがTシャツとジーパンとは

おさらばだ。


「ありがとう。どんなのができたんだ?」


「昨日、変な格好をしたヒーローが

バッタバッタと魔物を倒しまくったと

聞いてのう。今日、その残骸が大量に入ってくると

思ったのじゃ。そしたら、やっぱりのぉ

良い素材が山のようにでていたんじゃよ!

どうした具合悪そうな顔して?」


あいつの話は聞きたくないな。

だが悪いことしてないとわかっただけでも

よしとするか。


「大丈夫だ。続けてくれ。」


「そしたら、そこにワイバーンが出ていてな

竜種にしては弱いほうだが、魔物の中では

強い方だ。ワイバーンの羽は軽い上に頑丈でな。」


ワイバーンかゲームとか漫画とかでは見ていたが

実際俺はまだ魔物すら見ていない。


でもなんか不思議ともう見たような気がする

あいつが倒したからかな。


「そこでワイバーンの皮を買い付けて

勝利の軽くて丈夫な、鎧を作ったぞ!

いっとくがあんなごつい鎧じゃないからな。」


ドルトワーフの爺さんが出してきたのは

青みがかった、胸当てと肘当て、肩当てだ。


「下は普通のズボンに見えて、これはワイバーンの

翼で作ったぞい。これも丈夫で動きやすい。」


ズボンは茶色だ。普通の服みたいでいい感じ。


「ありがとう。助かるよ。

いい防具を揃えてくれたんだな。

しかも動きやすく、目立たない感じで。」


ありがたい。あんな派手な鎧じゃなく

こうゆうのが欲しかった。


「本当はのう騎士団が巨大なドラゴンの死骸を

持ち込んだと言う噂を聞いたんでな

それを狙ったんだが出てこんかったからな。

デマじゃたんだろうかのぉ?」


巨大なドラゴンか•••。いったいどれ程の

強さなのか、騎士団で相手しないと

倒せない敵。そんな奴らを相手にしなければ

ならない。


「大切に使わせてもらうよ。」


「バカタレ!いっぱい誰かを救う為に

ボロボロになるまで使い倒せ!

それでまた修理するか

新しいの作ってやる。

かといって手入れは怠るなよ!」


確かにドルトワーフの爺さんの

言う通りだな。


「わかった。たくさんかの人を救う為に

使い倒させてもらう。

それでまたここにくるよ。」 


「あとはお代じゃが、銀貨3枚でいいぞ。」


「安くないか?見せ物みたいな商品が

銀貨4枚だぞ?」


セール品みたいにまとめ売りしてあるのより

安いぞ。


「いいんじゃよ、お前さんに先行投資じゃ。

お前さんはわしの勘だが見込みがある。

これから頑張ってこの店を有名にしてくれ。」


「何から何まで助かるよ。

必ず有名にしてやる。約束するよ。」


こんなに期待してくれてるんだ、頑張らないとな。


「そしたら、またくるよ。

ドルトワーフの爺さん。」


「おう、次くるのはそれがボロボロになった

時だな。」


「ああ。それじゃあな。」


ドルトワーフの爺さんの店を後にし

宿屋に戻った。


宿屋に戻るとストロベリーのおっさんが

待ち構えていた。


「おい、勝利!この話聞いたか⁉︎

魔大陸に本格的に侵攻する為に

他国に和平交渉を行うらしい。」


和平交渉かあまり隣国と上手くは行って

いないのかな?


「それがどうかしたのか?」


「それが魔族に勘付かれない為に

少数精鋭で行きたいらしく、

なんとそのメンバー選抜するらしい。」


「それで?」


「なんと、選ばれたメンバーは

あのイディナ様と一緒に行くみたいだぞ!」


「本当か⁉︎」


これはチャンスだ!


「いつあるんだ⁉︎」


「確か今日の昼からだ。」


「何⁉︎あと少しかないじゃないか⁉︎」


しかし、装備も貰ったし覚悟を決めるしか

ないな。イディナも行くってなら

会うには最後のチャンスかもしれないし•••。


「わかった。おっさんありがとう!

ちょっと行ってくる。

で、場所はどこなんだ?」


「エッフェ城だ!王様も見学にくる

らしいぞ!」


王様か、一度会っておきたいな。

その為にもこの選抜試験を受からなければ

ならないな。


「気をつけて行ってこいよ。猛者達が

いっぱい来ると思うからな。」


「おう!」


ストロベリーのおっさんに見送られながら

エッフェ城に向かうことにした。



選抜試験受付


ここが受付か、色々な奴が来ている。


見渡す限り、ヒーローっぽい奴らがいる。


ざっと100人はいるな。


「受付はこちらです。まだお済みでは

ない方はお急ぎ下さい。」


向こうの方から受付の女の子が

声掛けをしている。

受付を済ませよう。


「試験を受けたいんだが。」


「はい!ではお名前を。」


「勝利だ。」


「勝利さんですね。じゃあランクはなんですか。」


「ランクってなんだ?」


ランクなんて初めて聞いた。

なんのランクなんだ?


「いやいや⁉︎ランク知らないんですか⁉︎

ヒーローランクですよ⁉︎」


受付嬢が驚いてる。

知らないもんは知らないんだが。


「すまん。ヒーローランクってのは

知らないんだ。なしってことでいいか?」


そう言ったとたん、受付嬢の顔付きが

あからさまに変わった。


「何ですか?記念受験って奴ですか?

私そうゆう人本当に嫌いなんですよね。

イディナ様に一目会いたいとか

近づきたいとか不純な同期なんでしょ。」


急に口悪くなったなこいつ。


「ここにはね本気で世界を救いたいって

願っているヒーローが、沢山来ているの。

AランクだけでなくSランクも来ているのよ。」


「いや、俺も本気で世界を救いたいと

思っているのだが。」


「はん!笑わせるわね。ヒーローギルドにも

入っていないような奴に世界を救いたいですって。

冗談は顔だけにしといてよね。」


俺はそんな変な顔しているのか•••。


「いや、でも受けたいんだ。頼むから

受付してくれ。」


「金貨2枚になります。」


「金がかかるのか⁉︎」


受付嬢の嫌がらせが始まった。


「当たり前じゃない!あんたみたいに

記念受験とかバカにしてる奴にね

来てほしくない為にとってるのよ。

ここに書いてあるじゃない!」


「金貨1枚ってな。」


明らかにぼったくってるじゃないか。


「ふ、ふん。じゃあ別の列に並べば!

あら、もうすぐ受付時間終わるみたいだけどね。

どうするの払うの。あ、でもヒーローでも

ない貴方に払える額じゃないかしら。」


払えるけどな。


「金貨2枚だ。これでいいだろ。」


「持ってるの!!ふ、ふん!まぁいいわ。

どうせあんたなんかすぐやられるに

決まってるわ。あんたなんか

私の愛しきアレデル様にやられればいいわ!

このブサイク。」


こいつB線だったわ。

ならこいつにブサイク言われるのは

ちょっと嬉しい。


それからもブツブツ愚痴を言われながらも

なんとか、受付をすませた。


この受付嬢を見返す為にも頑張るか。


そこから、他のヒーロー達と一緒に

城の中庭らしき所に案内される。


そこには100人は軽く入りそうな。

石でできた闘技場の様な物が用意されていた。


少し偉そうなおっさんが

ピンク色の長い髪が特徴的な美しい女性と

共に現れ話を始める。


「皆の者よくぞ集まってくれた。

只今より和平大使選抜試験を取り行う。

大々的に動くと魔族に感づかれる

可能性がある為、和平大使は出来るだけ少数にしたいと思っている。なので合格者数一人だ。」


周りがざわつき始める。


一人か•••。厳しいものだな。


「合格者は、ここにいるパーリ王国騎士団長に

して輝星のヒーローである、ローゼオ•イディナと共に和平大使として世界各国に協力を求めに行ってもらう。そして、輝星のヒーローにも一緒に魔王討伐の要として活躍してもらうよう説得しに行ってもらいたい。」


彼女がイディナか。輝星のヒーローの一人。

あのクソ女神に選ばれた者か。


イディナが話始めた。


「魔族の脅威が続くのは

後少しの辛抱です。皆さんの力を貸していただき

世界各国に和平を求め魔族を討ち滅ぼしましょう。」


「オオォォォ!!!」


おっさんの時とは違い男達かやる気に

満ち溢れてくるのがわかった。


受付嬢よこれがお前が信じた、ヒーローの姿だ。

ほとんどが不純な動機だよ。


「それでは今から試験の内容を説明する。

まずは約10人1組でバトルロワイヤル方式で

戦ってもらい、その後勝ち残った者で

トーナメント方式で戦ってもらう。以上だ。

今からくじ引きを行う。くじ引きの後、試験開始だ!」


必ず優勝してイディナと会わなければ。


そして和平大使選抜試験の幕が明けた。

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