18

 静かに夜が過ぎ去って、洞くつは静まり返っていましたが


 明け方の少し前、じゃらじゃらという音が、重苦しく響き渡りました


 少女はそっと目を開いて、小さく息を吐きました


 彼女にはもう、その正体が分かっていました


 吸血鬼である自分の犯した罪を、とがめるためにやって来た


 黒く、硬く、研ぎ澄まされたつわものたちであることを


 そしていつかこんな日が訪れることを、少女は知っていたはずでした


 少女は、すぐ近くで眠る、ミミックの頭に手を置きました


 彼はとても眠かったのですが、それでも大好きな少女のために、ゆっくり口を開きます


 そんなだらしなく開いた口元に


 なにを言うべきなのか、少女は少しだけ迷いましたが


 二つほど呼吸をおいた後、ゆっくり笑いながら、言いました


「私が戻ってくるまで、ここで待っているんだよ」


 ミミックにはやっぱり、彼女の言葉は分かりませんでしたが


 そっとフタを閉じられてしまうと、再び眠りに落ちていきました


「いい子だね」


 静かに呟いて、少女は立ち上がりました


 自らの足で、すっと立ち上がりました


「ありがとう。いってきます」


 最後に、それだけ呟いて


 じゃらじゃらと響く、重苦しい運命へ向かって


 自分の足で、ゆっくりと歩いていきました








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