13

 混乱と渾沌こんとんの果てに、ミミックは閃いた


 むしろ今まで、こんな簡単なことにどうして気が付かなかったんだろう


 喰っちまうのが駄目なら、逆に、吐き出せばいいじゃん


 彼はミミックなので、つまり宝箱だった


 今まで喰らってきた連中の持っていたアイテムを、本能的にしまい込んでいた


 ミミックは口から「ぺっ」となにかを吐き出した


 それが少女の頬に当たっちまったので、彼女、ぐっすり眠っていたのに目を覚ましちゃった


「なに、これは」


 少女は目をこすりながら、暗やみの中で器用に、ミミックの吐き出したものに触れてみた


 ざらざらとした、布でもない、麻でもない不思議な感触


 引っ張ると、わずかだが伸縮性がある


「これは……包帯?」


 ミミックはぴょんぴょんと跳ねた


 なんで急に包帯を差出してくるのか、よく分からなかった


 まぁミミックも、適当に吐き出したものを少女にあげただけなので


 意味なんてどこにも無かったんだけど


 どういうわけか、少女はにこりと笑ってくれた


 今さら包帯なんてもらっても、少女の傷なんて癒えやしないのだが


 ある種の理解ってのは、あらゆる理屈を吹っ飛ばして、急に湧き上がってくるものだから


 少女にも、そういうことが起こったのかもしれない


 ミミックには、そんなこと知る由もないのだけれど


 ただただ嬉しかったので、ぴょんぴょん跳ねた


 あんまり高く跳ねすぎて、洞くつの天井に頭をぶつけてしまった


 少女は呆れたように笑った


 それを見てミミックは、また飛び跳ねて、天井に頭をぶつけた


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る