終わりと始まり
柚希藍里
× × × 。
今日は僕の誕生日だ。
誕生日と言えばお祝いや、
おめでたい日というイメージが強いだろう、
だが僕はそう思ったことは無い。
誕生日は僕の始まりの日だ、
人より劣っている
役立たずでクズな僕の出発点。
それを祝うなんて馬鹿らしいと思う。
コンコン___
誰かが扉をノックする音がした。
【誰だよこんな時間に。】
時計の針は恐らく12時30分を刺していた。
【先程日付が変わったばかりなのに、 迷惑
極まりない客だな。】
僕は渋々扉の前へ向かい尋ねてきた人をドアスコープから除くと、
そこには複数の人がいた。
【…今開けるよ】そう一言声掛けをし、
尋ね人を僕の部屋へ招き入れた。
【誕生日おめでとう。】と、
僕の友人たちが声を揃えて言った。
そうか、こんな僕でも祝われる価値があるのか。
僕は嬉しそうに笑い、友人からの
プレゼントを開けた。
中身は僕の欲しがっていたガラスペンと真蒼なインクだった。
時間も時間なので、友人たちを家に返し
また明日改めて祝ってもらうことにした。
久しぶりに嬉しかったな、明日が楽しみだ。
そんな戯言を、暗く美しい夜空に溶かし
ガラスペンを砕いたあと、
喉元へナイフを運ばせた。
それは……
息を飲むほど美しい赤だった。
終わりと始まり 柚希藍里 @yuzuki00
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