間章 過去、現在

 二○二○年元旦。

 俺と聖は天皇杯決勝を見ながら横浜フリューゲルスを応援していた想い出話で盛り上がっていた。

「聖は覚えいるか? 俺の母さんが三ツ沢で三浦に野次飛ばした時」

「覚えているよ。あの時野次が聞こえたのか、三浦は僕達の方を見たんだよね」

 三ツ沢球技場は応援席でフィールドの間隔が狭かったので、野次もよく聞こえただろうし、選手もよく見えた。

 聖はその時のことを思い出したのはクックと笑った。

「三浦は君のお母さんを見てニヤって笑ったんだよね」

「その後全力で走るのかと思ったら相変わらずタラタラ走って母さんブチギレていたけどな」

 懐かしい話だ。三ツ沢球技場のスタンドで走り回った日々。スタンドで応援した日々。全てがいい想い出だ。

 しかし、そんな楽しい日々も急に終わりを告げる。

 それを知らされたのは10月29日のことだった。

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