ひとよだけ
小余綾香
青の交わり
元
その細い一株一株は歳の違う子供の葉同士、抱き合って立つ様に
戸が開いた瞬間、冴は先頭切って土手を駆け下りた。廃材木で
広い
灰茶の泥を沈ませて水田は
その対面で続く
梢、葉末がささめいた。足下の空が揺らぐ。
靴底は石積みを押し、冴の体は水路を越えた。右足が
それを追い越す青い野球帽が冴の数歩先に飛び込む。
冴は身を
――危ない!
眼前で小さな運動靴が土羽際に乗った。瞬間、泥が崩れて足を巻き込む。咄嗟に冴は女の子を抱き締めた。デニムの膝がぐちゃと土に食い込み、湿りが
少女は目を丸くした後、母を呼びながら走り去った。
「ほーら、中学生。皆が真似するぞ」
冴の胸が強く弾んだ。テノールの振動は体内を
「平気?」
リヤカーを引いて寄り切れない彼が屈んだ。きっと
閉じそうな
「
「卵産む所だね」
「交尾?」
「交尾はハートっぽい形」
子供の歓声に、ついこの間までその中にいた冴は横目で田を
冴は足を放りながら敢えて草々伸びる切岸近くを行った。
斜面で
「冴ちゃん、手ぶらー」
拓が両手に
「来月、水路掃除で捕らされるのに」
「そんなこと言って怖いんだろ?」
一瞬で右腕が直線を描き、引き戻した手が掴むのは
「あげようか」
思わず悔しそうに拓は
「要らない!」
拓は身を
「まぁ、また大きなのを……リーダーさんを
烏瓜に寄って来た女性が
すかさずシャッター音が顔を返らせた。大きなレンズが下向き、
「
冴は頷いた。カメラがそっと接近するのを見ながら、彼女は少し首を傾げる。シャッター音を背に、冴は江を
何も知らず彼がリヤカーと辿り着き、駒野が歩み寄る。
「田圃が良い感じですね」
「分かれて僕達だけ上を点検しますか」
彼は応えながら、
「皆、探せてるー? 下だけじゃないよ。
子供が
しかし、冴は烏瓜の前で地面を踏み締める。大人の領域に行く、と彼女は決めていた。
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