第14話 大罪の骸

 【お前達は糧となれ】

 放り投げた閻魔の身体が宙で廻転し

童子以外の十面鬼を吸収し取り込む。


「何をしてやがる、おい閻魔!」


【無駄だ、彼は器になったのだ】


鬼だけではない。周囲や街全体の妖を吸収し、開いた風穴に新たな核を生成していく。


【ずっと探していた、強い魂の素体を

 飢者髑髏の心臓となる者を...!】


「飢者髑髏..だと。」


妖の祖とい云われていた巨躯の化身。

魂の集合体とされているが本来はそれが一つの魂であり妖であった。

必要なのは強靭な核、それを入れ物として再び魂を結集すれば一つの祖、奈落の飢者髑髏が復活する。


【集え迷える愚者達よ。

 大いなる歴史の糧となれ!】


閻魔を無数の魂が覆う。

過去を未来へ、組み替える音が閻魔を包み変えていく。

「閻魔っ!」


【貴様は入れなかった、敢えてな】


「...好きにはさせねぇぞ?」


【どちらにせよ止めるのはお前だ】


八咫烏は腹を抱えて見たいのだ、かつて街に平和をもたらせた者が残した護人が、変わり果てた師になぶられる瞬間を。娯楽と眺めてみたいのだ。


『童子さん、あれ!』

「..なんだよそのカッコは、閻魔!」

変わり果てた姿は大きな骸の化身、皮を裂き肉を断った妖魂の集合体が怨念となり街へ降り立った。


『でかいな、これが妖の祖..童子よ。

 お前が求めた男の姿はこれか?』


「こんなもんな訳あるか、閻魔は珍しくはっきりと笑っていやがったよ」


【笑顔など、絶望の予防線に過ぎない

 役立たずにのみ赦された機能だ】

翼を拡げ冷たく言い捨てる。


『違いますよね?』「あ、おい。」

妖と人の在り方は違う。

以前から然程笑顔でいた訳では無いが多くの笑顔を見てきた立場、自己の価値観を話されるのにどうしても納得が行かなかった。


【烏間 由魅子か..何のつもりだ。】


「貴方は閻魔様を恐れています。

だからこそ飢者髑髏の依代にした。心臓を抉ってまで利用したのは怖かったからです、彼の笑顔が。」


「..成る程な、恐れているからこそ先手を打った訳か。自らの作り出した闇を照らされまいと、びくびくしながら予防線を貼っていたのは、お前の方だったようだな。」


【化狐に人間が立派な言葉だ、童子を

 取り込まなくて正解だったな。貴様

 達のような不純物は要らん】


羽を拡げているのは焦りの証拠、今すぐにでも飛び立ちたいと恐れが現れている。八咫烏の性質は今、人に近い。


【さらばだ、取り残された屑達よ】


葛藤を抱えた後、八咫烏は神の使いである方角を選んだ。


「どうするつもりだ童子」

「あんなに大きな妖、初めて見る。」


「..決まってんだろ、やるんだよ。

二段階目をここで見せてやるからよ」

決意の飲酒、後戻りは出来ない。


「いくぜ、閻魔..!」

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