第10話 百鬼夜行
「あの鬼、何をやっている..!」
「童子さん!」
情報の無い世界線では意気地無しに見えるだろう。だがそれでいい、もともと好かれる性分じゃない。
「後は任せやがれ、蟲女...」
「世話の焼ける奴だ。」
神通力は超能力ではない、本来そういった使い道のものではないのだが、まんまと助け縄に成り下がっている。
「吼舵さん街がっ!」
「一体我と童子を腰に戻せ、安否があるかは知らないが避難してくれ。」
一難去らずにまた一難、素直に二難と数えるべきだか幾らあろうと同じ事。
『最早街は暴動は止まらない、祠に行くぞ。纏めて一度封印する』
「生きている頃よりも困難です。」
はっきりと分かった、死んで楽になるという事は決して無いのだと。
➖➖➖➖➖
【百鬼夜行が始まったか..見境なく、
規格外の妖が放たれた。】
天狗や牛鬼、存在そのものが天災と呼ばれる文字通りの〝化物〟が放たれた
そこには最早、生も死も存在しない。
【本当の世界の再生だ】
人は隠れて妖の街、数えきれない月日を経て皆が踊り狂う。
ある場所では突風が吹き
【山の腰掛け天狗の縄張り!】
ある場所では雷雨霰
【落とす雷、獣の如し】
またある場所では高波を上げる
【海の坊主で海坊主だぞん】
雨風災害暴虐無双、あらゆる負、悪童の限りを尽くして報復する先住民達。
【連中に目的は無い。
ただ悪戯に、街を跡形も残さない】
烏は飛び立つ。
羽を拡げ高らかと、祭りを見下ろして
➖➖➖➖
稲荷の祠
「思ったより広いですね。」
「中は自由な空間だ、破壊さえしなければ無限に広がる」
一応は表面に血海を貼っている。神通力の結界だ、相当な圧力の筈だが古巣の暴君達はそれを紙の如く薄い力量とみなし剥がしにかかるだろう。
「避難場所がお前のウチかよ
随分と形見が狭ぇんじゃねぇのか?」
「文句を云えた立場かお前は。
今は敢えて問うていないが、こうなっているのは誰のせいなのだろうな」
「けっ、知るかよ。」
あぐらをかいて不貞腐れる童子の背中には、事後ではあるが生々しい傷痕が残る。
「童子さん、その背中..」
「菊の野郎に噛まれたんだよ。..まぁ〝噛まさせた〟って云うべきかもな」
「詳しく話せ、誤魔化すな」
「...はぁ。」
野暮だ無意味だと言っても聞かず、仕方なく事の顛末を話した。お菊の思想思惑、それを受け入れた理由、洗いざらいに打ち明けた。
「奴が閻魔を?
姿を消したと思ったが、洞穴に居たとはな。見つかる筈もなかろう」
「ならば今お菊さんは、一人で洞穴の向こう側に?」
「そういう事になるな..。」
魂の重みは皆同じ、生身の体という質量を失えば価値の違いはまるで無い。
しかしそれは妖の感覚、人となれば省ける無駄も存分に噛み締める。愚か故に見えないものまで見てしまう、死んでも治らないとはそういう事だ。
「一先ずは外には出られねぇ、だが此処に居続けたところでどいつかに見つかって喰われるのが関の山だ。」
「ならば我等に出来る事は」
「閻魔様を探して見つけ出す事...!」
前のように由魅子を一人で歩かせる訳には行かない、妖の国に娘一人など、「取って喰え」と言っているようなもの。
「俺の瓢箪に入れ、軸は俺が取る。」
「無理をするなよ」
「死なないでください、童子さん。」
「...馬鹿野郎、どっちも無理だ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます