第4話 夏祭りのひととき 前編
一学期が終わり、夏がくる。
もうすぐ、毎年恒例の夏祭りが始まる。
思い立ったら吉日、京子に電話をかける。
「京子ちゃん、夏祭り行かない?」
「いいよー。ほかに誰か来るのー?」
「くる。お姉ちゃんも一緒だけどいい?」
「ふむふむ。でも桜ちゃんは私と一緒でいいのー?」
「なんで?」
「だってせっかくのお姉ちゃんとのデートでしょー」
「からかわないで…全く…」
ほんとこの親友はいいやつだけどこういうところがある…。
「それに諦めてることも知ってるでしょ…」
「知ってるけどさー、ほんとに諦め切れてるのー?」
「うるさいっ。7月29日に神社前に集合ね」
「あっ、ちょっとまっーー」
京子の言葉を無視して電話を切る。
ほんと京子は一言多い…。
私の心を絶対見透かして言っている。
ぼふりとベッドに倒れ込みため息をつく。
「諦められる訳ないじゃん…」
いくらこの気持ちに蓋をしたとはいえ、諦められる訳がない。
小さい頃から恋心を抱き続けてきたのだ。
ものの2、3年で諦めろと言う方が無理な話だ。
枕に顔を埋めながらまた自己嫌悪に陥る。
「別に好きで恋した訳じゃないのに…」
相手を好きになろうと努力して好きになる人も世の中にはいるかもしれない。
だが私は気が付いたら好きになってしまったのだ。
こんなの理不尽がすぎる。
しかも恋をしてはいけない人に。
「ほんと、なんでお姉ちゃんを好きになっちゃったんだろ…」
私の呟きは部屋の中に静かに溶けていった。
ーーーー
夏休み当日
私と姉さんは浴衣に着替えて、待ち合わせ場所の神社前に向かう。
姉さんは紫色で紫陽花柄の浴衣を着ている。黒髪ロングの姉さんにはとてもよく似合っていてとても綺麗だ。
その証拠にすれ違う人がたびたびこちらに視線を向けている。
そんな姉さんの隣りにいる私は今にも心臓が破裂しそうなほど高鳴っている。
ほんとに魅力的で人を惹きつける…。
心に蓋をしたのにぐら付いてしまう。
だってこんなに綺麗なんだもの…。
姉さんの隣りを歩きながら自然と俯いてしまう。
姉さんの顔をまともに見れないのと、私が姉さんに釣り合っていなさ過ぎるの実感して…。
「どうしたの、桜ちゃん?」
俯く私に心配そうに私の顔を覗き込みながら姉さんが声をかける。
「な、なんでもないよ…」
覗き込んできた姉の顔は綺麗だった。思わず一瞬、姉の顔に見惚れてしまったが、なんとかしどろもどろになりながらも言葉を返すと同時に姉さんから視線を逸らす。
「ならいいけど…
でも無理はしないでね?」
「う、うん…大丈夫…」
こんなの命が幾つもあっても足りない。
すでに私の心臓は破裂寸前である。
よかった、京子を呼んで…。
この状態で姉と一緒に夏祭りを回っていたら私がもたない。
そんな風に心の中で一人ごちていると神社前に着いた。
「おーい、桜ちゃーん」
京子の姿を探していると向こうから声をかけてきた。
Tシャツで短パン姿の京子がパタパタと走り寄ってくる。
「こんばんはー。桜ちゃん浴衣似合ってるねー
もちろんお姉さんもー」
屈託ない笑顔を向けながら言葉をかけてくる。
それだけでだいぶ私の心は救われる。
「京子ちゃんはいつもと変わらずだね」
「ふふ。ありがとうね」
京子にそう言葉をかけながら私達3人は神社の境内に向かう。
いるかいないか分からないが神様を呪ってやる せいこう @masa229638
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