第2話 かけがえのない親友
「ふふ、こうやってまた桜ちゃんと一緒に登校できて嬉しいなー」
「私も嬉しいよ、お姉ちゃん」
なんとか高鳴る心臓を無理やり押さえつけると、当たり障りのない言葉を掛け合いながら登校する。
横目にチラッと姉を見ると、艶があるロングの黒髪が、風にそよぎ朝日に煌めき、まるでブラックダイヤモンドのように輝く。
いつ見ても姉は美しかった。私とは住む世界が違うとまで思わせるほどに。
姉は私とは違い、容姿が整っており、そこに加え生来の優しさも相まって人を惹きつける。
だが、姉妹特有の姉への嫉妬などはなかった。ただ美しく、愛したいという思いが強くなるばかりであった。
まぁ、心に蓋をした私にとっては、思っても口に出すなどするはずもないが…。
――――
名残惜しくも姉と別れ、自分の教室に向かう。
「おはよー」
「おはー」
私の前の席にいる友人に挨拶をして席に座る。
気の抜けたように返事を返す彼女は芥川 京子。
淡い栗毛色のボブカットで、いつも気だるげな瞳をしている彼女。
こんな私と仲良くしてくれる変わった唯一の親友だ。
「今日もお姉さんとラブラブですな〜」
「そんなことないって、
姉さんは誰にでも優しいだけ」
そして唯一、私の醜い恋心を打ち明けた親友でも
ある。
京子は私の恋を知ってもなお、「恋愛は人それぞれ」「好きに同性も肉親もないよ〜」と人懐っこい笑顔を向けて傍にいてくれる人だ。
高校に入り、案の定、孤立する私を前の席の京子は、気さくに話しかけてくれた人でもある。
そんな京子だったというのもあり、自分の隠された醜い恋心を打ち明けようと思えたのだ。
それまで、姉と違い出来損ないであり、根暗でもある私と友達になろうと思う者はほぼ皆無であった。あるとすれば、姉に近づきたいために声をかけてくる連中ぐらいだ。
しかし、京子は違った。桜自体を、私自身を見て仲良くしてくれる。友人として見てくれる。そんな京子に惹かれた。
だから打ち明けた。怖くなかったと言えば嘘になる。打ち明けた後、京子はどうするのか?軽蔑する?嘲笑する?離れていく?
色々なネガティブな思考が浮かぶが、京子なら受けて入れてくれるかもしれない。という確かななにかを感じた。
想像したように京子は私の話しを受け入れてくれた。気だるげな瞳をしながら人懐っこく笑顔を浮かべながら肯定してくれる京子は、今まで誰にも打ち明けられず一人で苦しんでいた私の心を少しでも癒してくれた。
そんな京子ともっと親しくしたいと思うのは当然で、まだ入学してから日も浅いが、姉のことをネタにしていじりながらからかってくれる京子とはだいぶ仲良くなれた気がする。
京子と仲良くなった私は彼女の人懐っこい笑顔に惹かれてか、笑顔を増えたようだ。
自分ではそんなつもりもないが最近、姉が家でふと、「桜ちゃん、笑顔がよくでるようになったね」と言っていたのでおそらくそうだろう。それに加え、「桜ちゃんは笑顔の方が可愛いよ」とまで言われてしまった。
もちろん、言われた瞬間、ボッと火が吹くように顔を真っ赤にしてしまい、嬉しいと恥ずかしい気持ち、照れる気持ちでいっぱいになり、思わず顔を両手で覆ってしまった。
姉は心配そうに、「大丈夫?」と優しく問いかけながら抱き寄せてきたのを覚えている。
そんな些細なことでも私は、姉に触れられていると思うと、どうしても心の蓋が開きそうになってしまう…。
その後、当然のごとく部屋に駆け込んだのは言うまでもないが…。
まぁ、そんなこともあり夏目 京子は私にとって、感謝しきれないぐらいの恩人であり、かけがえのない親友であることはお分かりいただけただろう。
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