いるかいないか分からないが神様を呪ってやる

せいこう

第1話 禁忌の恋

  


  突然だが私、谷崎 桜 は肉親であり姉である 谷崎 雫 に恋をしている。世間一般の姉として、ではなく一人の人間としてlikeではなくloveの方だ。


  いつからかは分からない。気づいたら好きになっていた。


 ―好きは突然にやってくる―


どこかで聞いたことのある言葉が頭をよぎる。

そう、私は突然、姉を好きになってしまった。愛してしまった。

許されない恋だということも嫌というほど、自分の心に突き刺さるほどに…。


 ――――


  姉は誰に対しても優しく、それでいて裏表がない人だ。それに、勉強や運動も優秀とはいかないまでもそれなりにできる。傍から見るとまるで聖人君子な人だろう。それゆえ、周りにはいつも人が集まる。


  妹である私にもとても優しく接してくれ、妹思いの良いお姉さんだ。私が辛いとき、悲しいときはすぐに気づくと、私に寄り添い、優しい言葉をかけてなぐさめてくれた。

 楽しいとき、嬉しいときは我がことのように一緒に喜んでくれた。


  そんな姉を好きになってしまった私はとても苦しんだ。それはいけないことだから。到底許されるべきことではないと思った。

  さらに、先程述べたように姉は優しかった。それが余計私を苦しめる。

 

  許されない恋をしてしまった私に優しく接する姉を見る度に胸が締め付けられる。

  優しくされる度、姉に悪気がないのは百も承知だが、触れる姉の指、艶のある長くサラサラとした髪、姉の甘く爽やかな香り、唯一姉と似ていると言われる瞳、柔らかそうな瑞々しい唇を見ると私の身体は熱をもったように火照りだし、動悸を激しくしてしまう。

 

  その都度、私は適当な言い訳をして自分の部屋に駆け込み、ベッドに飛び込む。そして堪え切れない情欲と胸を刺す罪悪感を抱きながら自らを慰める。

  そして終わったあとで酷い倦怠感と嫌悪感に自分が嫌いになる。


 ーーーー


  だから私は、この気持ちに、恋に蓋をすることにした。

なによりも愛している姉に私の醜い恋心で困らせたくなかった。もし告白をしたとき、仲の良いこの関係が壊れてしまうのではないか。

  私は恐れた。意気地無しと笑いたいなら笑えばいい。

 だが、肉親に姉に、しかも同性に恋をしたことがないやつには分かるまい。私の気持ちなんか…。


 最初は何度も苦しんだ。なぜ同性で、肉親で、姉である人に恋をしてしまったのか。


  それは必然であった。姉の周りに群がる人々に嫉妬した。姉妹ではない人々に…。なぜ私は妹として生を受けたのか。なぜこんなにも愛しているのに。どろりとした醜い心が溢れ出してくるのが分かる。


 ーーーー


  しかし、中学を過ぎると慣れというものか、なんとか抑えることはできるようになった。それでも胸の苦しみは無くならないが。それでも、自分の適応能力の異様な高さにどう反応していいか困る。


  だが、そのおかげで私の醜い恋心は姉に知られることはなかった。


  明日から高校生。結局、姉と同じ高校を選んでしまった。これから姉と一緒に登校することになる。

  相変わらず、姉といる度に心臓がバクバクと苦しくなるが姉妹の特権ということで無理やりに気持ちを押さえつけることにしたーー。

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