第188話

 それを今回は、青龍の偉大なるに物を言わせて大臣達を黙らせ、身分問わずの能力のある者を新たなる人材として、掬い上げる為の登用試験を実行する事となった。

 それはかつて故法皇が、故摂政と囲碁を打ちながら、時を忘れて語り合った政のひとつであった。


「法皇様があれ程迄に青龍の力に、固執致された理由わけが解した」


 今上帝は平常を取り戻され、かつての穏和なる御様子を、御見せになられて言われた。


「……なんとも労せずして、厄介なる老臣共を一掃致す事がかなった」


 しかしながら、未だ何処かを見つめられる様に言われるは、伊織の気がかりとなっている。


「主上の偉大なる御力を、知ったのでございます。欲深き者達の私欲を肥やす政は、もはや成せぬと痛感致したのでございましょう」


「……そなた、は見通しておらぬよな?」


 今上帝が神妙に、伊織を御覧になられて言われる。


「は?」


「……左大臣の事だ……」


 今上帝の顔容が強張られる。


「主上……それこそ天意でございます。貴方様は聖天子でございます」


 伊織が真顔で言うから、今上帝は一瞥する様に、視線を御逸らしになられる。


「馬鹿を申すな……それは御父君様の事だ……かのお方は全く御存じではない。あれ程迄に政に長けておられるに、青龍の事となると思い違いをなされる……」


 今上帝が再び何処かに視線を向ける。その視線の先が、どうしても伊織には解らない。だから気がかりで仕方がない。


「青龍を抱いておらぬ天子こそが、聖天子であるという事を……かのお妃様の時の天子しかり、御父君様然り……聖天子であろうと、致されるという事を……」


「……さようにございますな……そして、その聖天子であられたの法皇様、そして摂政様の志しを果たされるが、貴方様にございます……」


 伊織が言うと今上帝は、微かに笑みを浮かべた。


「かのお方が欲してやまなんだ、青龍の力を使ってな……」

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