第155話

「天狗様、一つお教えください……青龍とは、先を見通せるのでございますか?」


 すると天狗は再び朱明を見つめて、再びニヤリと笑みを浮かべた。


「なかなか……そなた良いではないか?青龍は確かに見通せるが、我ら同様先の先まで見通せるものではない。先も申したが、皇家ではを素早く、見通せる者も存在致した……ゆえに、青龍がなせるものであるか、今上帝が持った物であるかは、青龍と同体の今上帝であらば解らぬ事だ……さて、話しが長くなった。貝耀がいようはそんな理由わけで、それは偉大なるものを持っておるが、何せ使い方を知らな過ぎる。自分の仕出かした事を知り、多少は使い道を考える様になろうが、なかなかまだまだだ……。面倒の見ついでにを鍛えると致そう……そなたと共に来たるべきの為に……」


真実まことに、貝耀様にお手伝い頂いて、よいものでございましょうか?」


 神妙に聞く朱明を、天狗は直視する。


「そなたが全てを解放致し、に堪えられ、貝耀のがなくば、事は成し遂げられぬぞ?……どちらが欠けても成せぬ……よいか?これは天からの機会であるは明白だ。この機会を誰が与えたかは、さしものわたしも解らぬ。天意かもしれぬし、あの小賢しい瑞獣の妃が、万が一を思うて作っておいたのやもしれぬし、天の大神の思召しやもしれぬ……だが再びを眠らせる機会ではある事だけは確かだ。その為にそなたと貝耀は相見えたのだからな……そして貝耀は我の親切を無にして、こうして大鬼の元から逃げて来た……全てが天意だ……全力で挑めよ」


 天狗はそう言うと、サッと竹うちわを振って、それはカッコ良く姿を消した。

 はぁ……なんてカッコ良いのだろう。

 朱明はつくづく、天狗のカッコ良さに惚れ惚れとする。


 ……あれで大天狗ならばなぁ……


 などと、あれ程格好良い台詞満載の天狗に対して、それは不敬なる朱明である。


「朱明様……」


 孤銀は銀色の五尾の妖狐と化して、朱明を促した。

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