第149話

 つまり位が低いとかいったって神を使うのだから、そう簡単……というか、者ができるものじゃない。

 式札しきふだとか言われる、和紙札の状態の物を術法によって使用して、鳥とか人型にしたり、望む能力のある物に変身させたりもする。

 強いて言うなら朱明は、どうにかこうにか式札を操れる適度と言っていいが、かの有名陰陽師の足元にも、たぶん父の足元にも及ばぬであると想像がいく……というか、かの有名陰陽師は超絶能力者だから、もはや鬼神に近い存在で、その能力によって強力な式神も使役できたのだろう。

 だがもはや瑞獣様の存在を知る朱明が、式神など使えるはずもない事だ。なんたって瑞獣様は、それは最強の女神の母を持ち、神の兄を持ちその兄は眷属神を従者としている、神尽くしのお方だ。そしてその上の上に大神様が御いでで、畏れ多くてと名の付くものを使えるわけが無い。

 考えてみればちょっと世間を狭くしてる感のある朱明ではある。


「式神など……俺の方が力が強い」


 貝耀がいようが言ったので、一同が目を見張って貝耀を正視した。


「式神の代わりは俺がやる……法皇様とて、俺の力でその怨念の呪を増され、あの美しい鳥を落とされたのだ……」


 貝耀は真顔を作って、朱明を見つめる。


「話しを聞けば確かに俺は大罪を犯した。だが法皇様が望まれれば、それを知った今とて躊躇いすら持たずに、俺は法皇様の意に従う……だが、師匠の仰る通り事の償いは、この命を持ってする……式神もその能力にあった物を、術法によって現わせるらしいが、絶対俺の方が力は強い……だからお前の道具となろうと、片棒を担ぐ事になろうと、決して苦情は言わぬから、どうか俺を使ってくれ」


 正視する貝耀の瞳は、キラキラ輝いている。


「お前の力の倍……いや三倍以上のものを与える事ができる……今上帝は法皇様の御子様だ。あれ程にこだわられた御子様だ……これ以上は苦しめたくはない……だから俺が式神の代わりを務める。法皇様の様に、焦げた塊となれれば本望だ」


 貝耀は清々しく笑った。

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