第136話
「お父上様……私はもはや恐れてなどおりませぬ。長きに渡り護ってくれた孤銀、そして尊く美しき瑞獣様……不思議なもの達との関わりは、決して恐ろしい事ばかりではございませぬ。そして今まで私が感じた恐れは、我が力不足によるだけのもの……そう悟りましたゆえご安心くだされませ……しかしながら……」
朱明が言い淀むと、童子は凝視した。
「……何故あれ程迄の孤銀に全てを語らず、何もお遺しとなられなかったのでございますか?」
「あれ程の孤銀?そなたは孤銀を存じておるのか?あれは……あれは私と共に散ったはずであろう?」
「……はい……」
「ゆえにあれには伝えなんだ。あれは私と共に逝くから……あれだから私と逝く……そして私が連れて逝くと言うたから、だからあれはそれも全う致す、ゆえに何も言う必要はなかろう?何も遺す事はなかろう?尊き眷属神の一部である孤銀の事は、遺す必要は無い」
「何ゆえあれを、連れて参られました?」
「あれは私の一部だからだ。あれは私だ……だから連れて逝くと決めていた。そんなあれを遺しては、あれは悲しかろう?ずっとずっと悲しむであろう?」
「さようでございますな?……お父上様……私も連れて参ります……私の一部を……決して遺したり致しませぬ」
朱明は、大粒の涙を零して笑って言った。
すると童子の姿の父も笑った。
「そなたの主上は、私が全てを賭けて御護りした……ゆえにそなたも御護り致して欲しい……よいか?あの御方は尊い御方だ……神の域に座される……神の子孫ではない、神なのだ……見よ朱明……アヤツ等は厳しいが美しい……如何様な
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