第88話
「あれは純子の躰の事すら考えず、己の欲の為なら純子の命すら軽んずる者だ……私の思いを踏みにじる反逆者だ……だから私はヤツに毒を下賜した。他国では大罪を犯した臣下は、皇帝から毒を賜わると聞いた。ゆえに私はヤツに毒を与えた。あれに与える私の罰として、蔵人頭に命じて毒を屋敷に届けさせ、争うあれに服毒させたのだ……」
法皇は身を立ち上がらされると、今上帝の肩を握られた。
「……関白は……否当時はまだ右大臣であったか……あれは全てを察していた。そしてそれを享受したのだ……何故か?あれと私は一心同体であった。見る先が同じであった……ゆえにただの凡人の関白が邪魔だったのだ……あれが外祖父となり、何かと口出しをされては面倒だ……ゆえに右大臣は、関白が病死だと公表した……だがそれで済まなんだが純子よ。あれは兄の右大臣……否、直ぐに父の後を継がせ、関白と致した兄同様に聡かった。父の死が、私の憤りの結果だと察した……ゆえに懇願致したのだ、そなたを救ってくれろと……そなたを守ってくれろと……私のこの足にしがみついて請うたのだ……今上帝よ……」
法皇は今上帝の肩を、思いっきり力を込めて握られた、だから今上帝は苦痛の御表情を御浮かべになられた。
「純子は私の思いなど、そなたを宿してから、解ろうとはせなんだのだ」
苦痛の御表情の今上帝を、睨め付けながら続けられる。
「……関白が病死した屋敷は穢れを持ったが為、純子は着帯の儀迄内裏に留めた。恐ろしく脅威でしかない青龍だが、私はもはやそれに魅入られていた……ゆえに早く里に下がらせたかった反面、ずっと側に置いておきたかったのだ……そして着帯の儀の折に陰陽頭から、もはや察していた事を判然と告げられたのだ……そなたは皇子で、そして巨大な青龍を抱いておると……その時の私の思いが解るか?ただの青龍ではく、この国でかつて存在しない程のものだと告げられた、この私の思いが……?」
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