第63話

「他国の呪を操る、怪しげな者を知っておるぞ」


「はい?」


大鬼丸の言葉に、理解できない朱明が聞き返す。


「ゆえに他国の呪術だ……以前天子に寵愛された僧がおったであろう?……ほれほれ……」


大鬼丸はイライラする様にするが、とんと朱明には想像すらできない。


「……秘導でございますか?」


苛々悶々の大鬼丸と朱明を、見かねた孤銀が口を挟んだ。


「おー!さようさよう……秘導だ秘導……」


「秘導導師か?法界仏の?」


「さようで……。我が国同様に、八百万の神々様が座すという……稀有なる国でございます。かの大国より霊的呪術を導入致し広めた教えを、我が国の導師が渡り導入致し、それを礎と致し我が国に合った秘導とし広め、当時の天子にそれは多大なる御寵愛を得て、我が国の代表的な仏教となりました」


孤銀がしめやかに語る。


「……その呪術にございますか?」


朱明が、余り合点がいかぬ顔付きで聞いた。


「いやいや違う。その国の呪術だが、呪術とは限らぬ……」


大鬼丸が、と言う様に言う。

意外と真面目なタイプの様だ。


「……その国の呪術?……」


朱明は真剣に考えていたが、ハッとした様に大鬼丸と孤銀を見つめた。


「孤銀……その国とは、妖狐を退治致し伝説のある国か?」


「確かに……皇帝に寵愛を得た妖狐が、我が子を帝位につけ様と皇帝を害したを、陰陽師に見破られて逃れ、のちに討伐軍を送られ退治されたという、伝説が存在する国にございます」


「……しかし、妖狐と瑞獣様とは、同じ様に退治できるものなのか?」


「何を言う朱明よ。妖狐と瑞獣……同じであろう?なぁ孤銀……」


大鬼丸が、朱明にはべる孤銀を見て言ったので、朱明はハタと孤銀を見つめた。

考えた事がなかったが、孤銀も確かに妖狐だ。九尾ではないが……五尾の……。

すると孤銀はその涼やかで清らかな瞳を、朱明に向けた。

月明かりに照らされ、妖しく光る。

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