第3話(前編) 力を与えたいヤツがいないので、環境を変えてみる
僕は『力が欲しいか』をやるため、何年もかけて準備した。
肉体を強化する『付与魔法』を覚え、
変装のための服や仮面を作り、
発声練習で、声優の大塚明夫さん風の渋い声を出せるようにし、
『レイヴン』という仮の名前も考え、
伝説級の魔法【停止】で、一分間、時間を止めれるようにした。
そしてようやく、本格的な『力が欲しいか』ライフを始めたのに——
結果は、理想と程遠い。
(力を与えたヤツの、スケールがことごとく小さいんだよな)
毎回『つまらぬことに使えば報いを受ける』と釘をさしているのに、ことごとく約束を破られる。
これまで力を与えた奴ら8人の、その後の行動はこうだ(最初に与えたヤツ含む)。
強盗……3人
逆恨みの復讐……2人
この街一番の美人アンジェラ(姉上)をレイプしに行く……3人
(ロクな奴がいねえ!!)
つうか姉上、大人気だな。
僕は違反者は全員始末している。そのため姉上に『私をまた、暴漢から助けてくださったのですね』と惚れ直される。悪循環だ。
(しかも……)
最近姉上は『レイヴン』に多額の懸賞金をかけ、それ目当ての奴らが多数、このあたりをウロついている。
おかげで『力が欲しいか』が、滅茶苦茶やりづらい。
この間なんか、無力さに打ちひしがれている女騎士を見つけたので、ワクワクしながら話しかけたのに、
「力が……欲し……」
「いたぞ、レイヴンだ! 捕まえろ!」
懸賞金目当ての奴らが現れ、追いかけられた。
(ああーーー!! もう!)
これはダメだ。場所を変えよう。
(高い
そう思っていろいろ調べたところ、王都に
騎士養成学校
というものがあると知った。
国中から貴族の子弟などが集まり、立派な騎士になるよう育成しているという。
(いいじゃないか)
そこなら……僕が与えた力を『国を変える』とか、『王位を
王都に行く決意を、家族に伝えると……
まず姉上が僕の頭を撫でてきて、
「アルド、頑張りなさい」
(お、珍しく優しいな)
こんど里帰りした際、レイヴンの
そんな事を考えていると、姉上は爪を噛みながらブツブツと、
「そろそろレイヴン様への懸賞金額を上げようかしら。彼を連れてくる際、骨の一本や二本折ってもOKということにして……」
やはり、やめておこう。
そして母上は僕を抱きしめ、さめざめと泣いた。
「アルドちゃん……いつでも帰ってきていいんですよ。ママは待っていますからね」
母上は、僕に付与魔法や裁縫を教えてくれた大恩人だ。
二十代前半にしか見えないほど若く、美しい。
(僕が力を与えた奴らは、見る目がないな)
レイプするなら姉上でなく母上だろ。まあ実際やったら、この世の絶望を全て与えて殺すけど。
●
で、僕は王都へ行き、騎士学校の一年生になった。
だがここにも、ロクでもない奴がいた。
「おいアルド! お前の金でパン買ってこい。一分以内だ。一秒遅れるごとにブン殴る!」
大貴族の子弟にして、クラスメイトの脳筋『ゴリアテ』と、その取り巻きA、Bに絡まれだしたのだ。
僕は普段、力を隠しているし……
ひ弱な見た目をしてるので、こういう奴らにとっては
返り討ちにするのは簡単だが、
「ふぇぇ、わかったよぉ……」
情けない声を出し、あえて従った。そして、イジメに対するクラスメイトの姿勢を
スクールカーストの頂点に立つ、ゴリアテ……
それに立ち向かって僕を助ける奴がいれば、そいつは『気高い魂を持っている』事になる。
僕が力を与えるに、ふさわしい。
(ゴリアテたちは、それを見極める為の、リトマス試験紙だ)
それから僕は毎日、ゴリアテたちにパシられたり、ボコボコにぶん殴られたり、虫を食わされたりした。ある理由から、それらは全て記録にとっている。
(まあ、生前に受けたサキの拷問に比べれば、楽なもんだ)
あの時は
得に後者は、
(しかし……)
こんなにイジメられてるのに、僕のクラスメイトたち、全然助けようとしないね。見て見ぬフリだ。
(この学校にも、気高い奴はいないのかなあ)
あきらめて、用なしになったゴリアテ達を殺そうとした時——
大きな変化が訪れた。
(後編に続く ※既にアップ済みです)
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