第9話

 生餡だけで食べると、なるほど豆というお味。できた生餡と砂糖を入れ、鍋で温める。甘さ控えめにしたかったので砂糖量は少なめ。味見をしながら足していく。まずまず砂糖が入ると、生餡は多分乾いていたはずだから、砂糖による現象だと思うのだが、ネッチョリした。焦げないようせっせと混ぜるも、白い鍋の隅はうっすら茶色くなってくる。砂糖を入れればそりゃ焦げる。茶色くさせないことなどできるのだろうか。坊主鍋はないし。あっても私では焦がすかもしれない。あんは白いのでまあ良しとする。ネッチョリなあんがある程度の硬さになるにはかなりの時間と根気を必要とするかと思ったが、体感は短かった。ある瞬間から水っぽさが無くなり、このあと冷ます間も水分はとぶだろうと思うと、まあこんなもんかなと火を止め、鍋肌にあんこをつけて冷ます。あんこが冷めるのと同時に、鍋肌についた乾ききったあんこに水分が与えられ、鍋からより多くのあんこを剥がしやすくなる。せっかくつくったのだから無駄にはしたくない。ただ、そのこびりついた部分をしっかりマッサージしないと、そこは塊となり、食べたときの違和感となる。その違和感も私は美味しいが、プロの味ではないのだろう。それでも鍋から取りそこねたあんこは、水を少し入れてゆらゆら温めてお汁粉にするという妙技を教わり、ほぼ全てのあんを体内に取り込むことに成功した。

 やっぱりやってみると面白い。買うのより美味しいかというとわからないけれど。

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