第12話 銀髪美女とお家デート(中村家)
真弓と沙雪はすっかり
「はい沙雪ちゃん、ここに腰かけて楽に
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて」
沙雪は寛ぐと言ったが、背筋も伸びてて上品な座り方をしていた為、蒼の目には全く寛いでいる様には見えなかった。
蒼と沙雪は夜ご飯が出来るまで雑談を交わしていた。
「ねぇ蒼君、蒼君の小さい頃の写真は無いの?」
「あ、あぁ……そ、それはね……」
明らかに蒼の様子がおかしくなった。よほど見せたくないのかは分からないが、沙雪が何度頼んでも断り続ける。
「蒼君だけ私の小さい頃の写真見て、私が蒼君の小さい頃の写真見れないって不公平じゃない?」
あれは写真としてリビングに飾っていたから見たたんだよと思わず突っ込みを入れたくなった。
「でも、本当に見る価値無いから…な?……な?」
どうしても見せたくないと意思を曲げない蒼に、沙雪は究極奥義を使った。
「そっかぁ……そんなに見せてくれないのね。それじゃあ学校で『蒼君と混浴しました。』って皆に言っちゃおうかしらー」
それは確実にヤバイ。学校のアイドルと称されている白崎沙雪が二年三組の根暗な奴と一緒にお風呂に入ったことが知れ渡ったらクラスの男子、いや、全学年の男女の敵に回されて学校生活が完全に終わると悟った蒼は、諦めて小さい頃の写真を見せることにした。
蒼が自分の部屋から幼稚園生のアルバムを持ってくると、沙雪は目を輝かせて見るのを楽しみにしてた。
(そんなに楽しみなのか?)
テーブルにアルバムを広げ十一年も前の蒼を見る。今はスレンダーな体型だが、実は幼稚園の頃はお腹もふっくら出ていて顔もフグの様に丸い。これが蒼がどうしても写真を見せたくなかった理由だ。
――一体どうからかってくるんだ……。
「これが、蒼君…?ふふ……随分と可愛いかったのねぇ。このほっぺた、
案の定、安定の沙雪スマイルを浮かべながらからかってきた。
すると真弓も料理をしながら話に割り込んできた。
「可愛いわよね~その頃の蒼。こう、ふっくらしていて愛らしいのよね」
「分かります分かります、今の蒼君からは想像できないですもん」
本当に今日会ったばかりなのかと思わさせるくらい二人の仲がいい感じだったことに不思議に思う。
「白崎さんみたいに俺は今も昔も冴えていないんだよ」
沙雪がふっと笑って目の前まで顔を近づけて言った。
「だから、蒼君は普通に顔は悪くないって言ったでしょ?特にセンター分けの時の蒼君は……その……かっこいいし……」
最後の方が聞き取れなかった蒼は聞き返すと、沙雪は顔を赤らめて何でもないとだけ残して元居た場所に戻って行った。
夜ご飯ができた。この日は唐揚げにポテトサラダ、そして味噌汁だ。
「「「いただきます」」」
やはり母さんの唐揚げは美味いと、蒼は次々と頬張る。外はカリカリで中は肉汁が溢れ出てくるくらいジューシーであった。定番中の定番の感想だ。
沙雪も美味しそうに食べていたので、真弓も満足気な顔をしていた。
「真弓さん、この唐揚げ本当に美味しいです!外はカリカリで中は肉汁が溢れ出てきてジューシーで、たまらないです」
沙雪は蒼と全く同じ感想を述べた。
味噌汁はアサリだった。アサリが海の幸を感じさせる良い出汁をだしていて、全身に染み渡る様な優しい味だった。
夜ご飯を終えた後は、三人で紅茶を飲みながら会話を始めた。
蒼と沙雪は隣同士で座っていた為、真弓はほくそ笑んで二人を見ていた。
「蒼と沙雪ちゃんはどうして仲良くなったのかしら?」
「何でだろう……確か白崎さんが話しかけてきたのかな?」
「私から蒼君に話しかけたんです。すきよ……」
蒼が咳払いをして沙雪の言葉を遮る。
「どうしたの、蒼?風でも引いた?」
「あ、あぁちょっと喉が変な感じしてな……あ、でも風邪ではないから安心して」
沙雪は悔しそうな表情をして蒼を横目に見る。これで沙雪は悪魔だと蒼は確信した。
「ま、まぁとにかく、白崎さんから話しかけてきて仲良くなったんだ」
ほほーんといった表情を浮かべて真弓は蒼を見てにやける。
その後は沙雪と真弓が女子トークで話を盛り上がている中、蒼はテレビで毎週金曜日の夜九時から放送されているアニメを見ていた。
「蒼ー、沙雪ちゃんもいるんだから先にお風呂入ってきちゃいなさい」
へいへいと言って
今日の疲れをきれいさっぱり流していると風呂場のドアが開く。
(あれ……?この状況はどこかで……)
「蒼君、背中流してあげるわ」
(やっぱり昨日と同じだ……)
一体真弓に何と言って風呂に一緒に入ってきたのだろう。
「し、白崎さん?母さんにはなんて?」
「日頃お世話になっている蒼君のお背中をお流ししてきますと言ったら快く許可をくれたわ」
大体予想はついていた。真弓は優しい、優しすぎるからこそ、起こってしまう問題があるのだ。普通の母親であったら、彼氏でも何でもないただのクラスメイトの背中を流すと聞いたら止めに入るだろう。思春期の男女が狭い風呂で混浴なんて普通に考えたらアウトだ。
「痛い所はないかしら?」
沙雪は背中を流しながら問い掛ける。
「あ、あぁ…大丈夫、き、気持ちいいよ」
沙雪は蒼の背中を優しく流してた後、すぐに出て行った。
蒼は湯船に浸っているうちに、無意識で沙雪のことを考えていた。まあ当然と言えば当然だろう。ここのところ五日も一緒にいるのだから。学校の人達に見つかることだけは避けたいと蒼は強く思っている。
そんなことを考えていると真弓からそろそろ出なさいとの命令があったので、素直に返事をして風呂を上がった。
その後は何故か、真弓と沙雪は一緒に風呂に入った。一体どれだけ仲良くなっているのだろうと思いながら麦茶をカップ一杯飲み干す。
風呂場からは楽しそうに話す沙雪と真弓の声がちらほら聞こえていたが、女性の風呂の話はなんとなく聞いてはいけないと思い、テレビをつけてなんとか誤魔化していた。
約一時間で風呂を上った女性陣は、ドライヤーで入念に髪の毛を乾かしてケアしていた。女性が髪の毛を乾かしている所を見るだけで、大変さが伝わってくる。
沙雪は髪を乾かし終わった後、化粧水と乳液を使って肌のケアをし、顔のマッサージをに入念に取り組んでいた。これ以上顔が小さくなったらなくなりそうだ。
夜ももう遅かったため、三人は各部屋に移動した。
「あ、蒼ごめ~ん。私~布団クリーニング出しちゃってて無いのぉ。だから蒼のベッド二段ベッドなんだから二人で寝てね~おやすみ~」
真弓はあからさまな嘘をついてそのまま自分の寝室に向かった。
二日連続でこんな美女と同じ部屋で寝る状況があるとは、蒼生まれて一度も思ったことはなかった
「それじゃ、私達も蒼君の部屋に行きましょうか」
蒼は
蒼の部屋は沙雪の部屋とは正反対の黒で統一されていて、壁際の本棚には大好きなライトノベルが、まるで本屋の様に埋め尽くされていた。
「意外と綺麗にしているのね。エッチな本とかないかしら……?」
チラッと見られた蒼は、変な本は持ってもいないのに胸の鼓動が高まった。
「も、持ってるわけないだろ……」
沙雪は蒼の微妙な反応に鼻で笑った。
二人はそんなやり取りを終え、電気を消してベッドに潜り寝る体勢に入る。
「ねぇ、蒼君」
沙雪が布団に顔をうずくめて言う。
「ん?何?」
「そろそろさ、私のこと『白崎さん』じゃなくて『沙雪』って呼んでもいいくらいには仲良くなったんじゃないかしら…?」
いきなり名前予呼びは正直緊張する。ましては相手が相手で、あの白崎沙雪だ。いまだに学校で『沙雪』と呼び捨てで呼んでいる人はいない。
照れ臭そうに言う沙雪に、蒼は照れ臭そうに答える。初々しさが半端ない。
「な、名前か…恥ずかしいけど学校以外だったら…別に良いよ」
その答えを聞いた沙雪は乙女の様に布団で少しうずうずしながら蒼にバレないように喜んでいる。二段ベッドの下で寝る蒼には、少し木のギシギシ音が若干聞こえていた。
「じゃあ学校以外では名前で呼んでね」
名前で呼ぶことがこんなに恥ずかしいと思ったのは蒼にとって生まれて初めての経験であった。
そして沙雪は満足気におやすみと言って数分で眠りについた。
ちなみに蒼はさっきの会話が恥ずかしかったのか、なかなか寝付けなくてラノベを読んでいた。
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